Case: The War Siren Test

世界的な人権団体、アムネスティ・インターナショナルが、2019年にスイスで行った啓発キャンペーンをご紹介。
2015年から内戦が続くイエメンの悲惨な実情に耳を傾けてもらうため、街頭スピーカーとラジオ放送で非常事態サイレンと爆撃音を流し、人々に「街が戦火に包まれた様子」を疑似体験させたのです。

いまもイエメンでは、内戦によって多くの人が大きな傷を受け続けています。

軍事施設だけではなく、普通の人々が暮らす街や学校の教室も、その標的となっているのです。

しかし、遠く離れた国では、こうした惨状に対してリアルな想像力が働きにくいのも現実。
そこでアムネスティは、戦争時の音を街中に流すことで、実際に暮らす街が戦火に包まれた光景を人々に想像してもらうことにしたのです。

今回用いられたのは、街頭に設置された防災用スピーカー、そして、全国放送のラジオ。

昼間、人々が活発に動いている時間帯に、その放送は行われました。

「いまからお送りするのは、実際の戦時下にある街の音です。みなさんを不安がらせたいわけではありません。ただ、まさにこの状況に置かれている人々がいることを想像し、連帯してほしいのです。」

その音は、ラジオを通じて街中のあらゆる場所へと響きました。

スピーカーから流れてきたのは、胸をかきむしられるような防空警報サイレン。そして、地面を揺さぶるような爆撃音。営業中の美容師も、思わずあたりを見回します。

時を同じくして、街頭ではアムネスティのスタッフがラジオを持ち、街中に「戦争の音」を流します。

聞いたことのないな音に、街を行き交う人々はみんな足を止め、動かなくなりました。

仕事中の人も。

授業中の教室も。

ランチタイムのレストランも。

みんな、音を通じて街ごと「戦火」に包まれたのです。


「聞いたことのない音でした。胸がざわざわとして…… こんな気持ち、初めてです。」

「放送のあと、教室は戦争について議論する場になりました。」

このキャンペーンを企画したアムネスティの責任者はこう語っています。
「人々が足を止め、その中にいるということ。まさにこうした体験をしている人がいると気づくこと。これこそが最大の目的でした。」

前代未聞のこのキャンペーンは多くのメディアで取り上げられ、多くの人々が戦争について考える機会を得ることとなりました。

世界情勢は変化を続けており、絶対的に平和だと言える場所はもはや存在しなくなってしまいました。永世中立国のスイスとて、例外ではないのです。
生活する以上、必ず私たちの耳に入ってくる音というメディアを使い、普段自分たちが暮らす街中を「戦争の風景」に染め上げることで否応なしに想像してもらう──。いろんな意味で衝撃的なキャンペーンでした。

(via Activation Ideas)