Case: Twitter Japan #平成を語ろうキャンペーン

話題になった、または今後話題になるであろう日本国内の広告・クリエイティブの事例の裏側を、案件を担当した方へのインタビューを通して明らかにしていく連載「BEHIND THE BUZZ」。

今回は、Twitter Japanの「#平成を語ろうキャンペーン」を取り上げます。平成から令和への改元に合わせ実施された今回のキャンペーンでは、Twitter上での会話をさらに盛り上げるべく、平成の思い出を語り合う糸口となる期間限定サイト、新元号をみんなで予想して楽しむ「新元号考えてみた ジェネレーター」、全国5都市の鉄道路線で中吊り広告などを使ったトレインジャック、4月30日には日経新聞にセンター見開きの30段広告を展開。

3月28日に開設した期間限定サイトには、平成を象徴する出来事などの140のキーワードが記された「キーワード年表」を掲載。利用者はキーワードをタップすることで、そのキーワードにまつわるツイートをすることができ、ハッシュタグで検索もできる仕組みになっています。

今回の企画が生まれた経緯やキャンペーンに込められた思いについて、株式会社電通 クリエーティブ・ディレクター 阿部光史さん、デジタル・プランナー/コミュニケーション・プランナー 伊藤拓郎さん、CMプランナー/コピーライター 中川賢太さん、アートディレクター根岸明寛さん、シニア・アカウントリード 木村恵美子さん、株式会社電通クリエイティブフォース プロデューサー 明石幸恵さんにお話をうかがいました。

Twitterの「今まで」と「これから」をコピーで定義付け

―「#平成を語ろうキャンペーン」を立ち上げた経緯を教えてください。

阿部:私たちは一昨年からTwitter Japanのブランディングを担当してきました。Twitterは単なるSNSではなく、今起きていることを1番早く見られるプラットフォームです。2年前のキャンペーンでは、トランプ大統領を起用したり、働き方改革をテーマにしたTVCMを制作するなど、これまでにも世の中で話題になっているニュースを取り上げてきました。
2019年の場合、前半で1番話題になるのはやはり「改元」ではないかとクライアント側からお話があり、企画の考案がスタートしました。

中川:最初の段階で、なぜTwitterがこれをやるのか、将来的にTwitterがどうなりたいかを定義するため、以下のコピーを考案し、クライアントに提出しました。Twitterは、これからさらに世の中の人たちの言葉が集まる場所になり、みんなが今を語る場所になる。みんなが「いま」をツイートしてきたからこそ、Twitter上の平成ができあがっている。次の令和の時代もみんなで「いま」を語って新しい時代を作っていきましょう、という意図です。

阿部:クライアントからは、Twitterとしてこのタイミングで伝えたい内容がまとまったコピーだといっていただけました。この言葉に立ち返りながら、企画をかたちにしていきました。

中川:諸外国では、議論の場としてTwitterが使われることが多いのですが、日本人は議論プラスみんなで「遊ぶ」場になっています。
Twitter Japan側としても、どんな施策をしたらみんな(利用者)がより楽しんでくれるかを考える姿勢があるので、企画を考える僕たちも楽しんで考えることができました。

大切なのは「遊ぶ余白」を作ってあげること

―「新元号考えてみた ジェネレーター」を作ったのは、日本独特の遊びの要素からなんですね。

伊藤:まさにその通りです。Twitterの企画を考えるときに大切にしているのは、世の中の人たちが遊ぶ余白を作ってあげることです。そうすることで、利用者ジェネレーテッドなものが生まれ、会話量の増加につながります。大喜利のお題にみんなが乗っかってくれる文化があるのは、日本ならではだと思います。今回のジェネレーターはそういった日本のTwitter文化に即したものになるよう作っています。

―Twitter上でより盛り上げるためのフレームを提供するにあたり、どういった議論がされたのでしょうか?

伊藤:4月1日に新元号の発表があることが事前に分かっており、Twitter上でも新元号に関わる会話が多数生まれると予想しました。新元号についてTwitter上で普通に会話するだけでもおもしろいのですが、遊びの要素を取り入れることでさらに会話がしやすくなり、盛り上がるのではと考えました。硬貨や新聞の一面、スペースキャット、小学生の絵など、複数のジェネレーターの画像から選んでもらうことで、遊ぶ要素のベクトルをいくつも用意し、自由度を持たせることを意識して制作しました。

根岸:トレインジャックでは、平成で話題になった15の時事ネタをピックアップし、若い人から年配の人まで、どの年代の人でも懐かしいと思ってもらえるようビジュアルの種類を増やしました。扇子、たまごっち、エアマックスを実物大で切り抜いた特殊な中吊りを作り、よりキャッチーになるように仕上げています。たまごっちは本物に近いチェーンを使って吊り下げているので、車内で揺れたりもしてリアリティを楽しんでもらえたと思います。さらにそれをTwitterでシェアすることによって、他の人にもTwitterを介して広がっていく展開になったと思います。

「ネット民が冷めない」キャンペーンの空気作りとは?

―Twitter独特の文脈など、Twitterにまつわる文化を理解していることが必要になりそうですね。

伊藤:僕自身、2007年にTwitterに登録し、Twitterとの付き合いはかなり長いです。ある企業の公式アカウントの中の人を担当したこともあり、どっぷりTwitterにつかってきました。
大切なのは、みんなが遊べる場所を作ることです。しかし、公式がそれを大々的にやると、ネット民たちは冷めてしまうところがあります。僕もネット民側の人間なので、公式が大々的にやると冷めちゃうのはすごくよく分かるんです。ネット民には、自分たちで遊びを考えて遊ぶ文化がありますから。
Twitterのキャンペーンではそうならないよう、見せ方をすごく考えました。期間限定サイトのトップページは、ロゴなどをあえて作らず、整然とした冷めたトーンに仕上げています。「みんなで遊ぼうぜ!」という風には絶対に言わずに、突然そのサイトがあったようにしておくのが大事なんです。

―他に企画をかたちにしていく中で、気を配ったことはありますか。

阿部:改元は日本人の根幹にかかわる重いテーマでもあります。そこを刺激しないようにするため、「新元号ジェネレーター」ではなく、「新元号考えてみた ジェネレーター」にするなど気を配りました。新元号で「遊ぼう」ではなく、「これをきっかけに考えてみませんか」といった堅めのスタンスを取ることを意識しました。この塩梅を一歩間違えれば炎上する可能性があったので、慎重に進めました。

―期間限定サイトの140個のネタのピックアップはどのように行ったのですか。

明石:平成元年から平成31年まで、トピックをそれぞれの年について5~6個、クリエーティブチームに出してもらいました。許可取りについては飛び込みで電話をしたり、弊社に担当がいれば、そこから確認をしてもらったりしました。
平成を振り返るという社会的なテーマ性もあり、快く許可してくださった会社が多かったです。毎年「トレンド大賞」を選出している小学館の『DIME』、写真は共同通信社に協力していただいています。

元旦の「おめでとう」ツイート数を上回った「新元号」ツイート数

―キャンペーンローンチ後の反応について教えてください。

木村:「新元号考えてみたジェネレーター」については、生成数が約10万8千件。4月1日の新元号発表に関する総ツイート数は1,100万ツイート、4月30日〜5月1日の改元タイミングにおける関連ツイート数は1,200万ツイートを超えたとのことです。Twitter Japanからはグローバル的に見ても成功したキャンペーンだと評価をいただきました。メディアでも多く取り上げてもらい、NHKや日本テレビ「ZIP!」、日経新聞などでも取り上げていただきました。
トレインジャックを見た人の中には「こんなにあたたかい広告は今までなかった」と感想をいただくなど、広告らしからぬ「エモい」広告として受け入れてもらった気がします。

―他に印象に残っていることはありますか?

伊藤:トレインジャックをしている電車にたまたま乗ったとき、目の前に座っていた女性2人がたまごっちの中吊りを見て、懐かしいと反応し、コピーの音読までしてくれたのが印象に残っています。周りを見渡すと、他の多くの乗客の方も上を見渡してくれていました。トレインジャックの仕事で、こんなに乗客の方が注目してくれているのを見たのは初めてでした。

中川:近年は新聞30段の仕事をできる機会があまりないので、印象に残っています。平成最後の日の新聞広告では、日経新聞のTwitterのほかに、朝日新聞のNetflixの60段広告が掲載されていました。平成最後の日に、平成に生まれた新しい2つの企業が新聞に大きく広告を出す不思議さもあり、歴史の区切りとなる広告に携われて本当によかったと思っています。

明石:今後も引き続き、オープンプラットフォームとして、世の中の話題をとらえて増幅させる施策を続けていきます。


(写真左から)株式会社電通 シニア・アカウントリード 木村恵美子さん、株式会社電通クリエイティブフォース プロデューサー 明石幸恵さん、株式会社電通 アートディレクター 根岸明寛さん、デジタル・プランナー/コミュニケーション・プランナー 伊藤拓郎さん、クリエーティブ・ディレクター 阿部光史さん、CMプランナー/コピーライター 中川賢太さん