Case: Driven by Intuition

トヨタの高級車ブランド・Lexusがヨーロッパで展開した最新テレビCMをご紹介。

過去15年のあいだに著名な映画賞を獲得した映画のパターンを学習したAIが「人々の心を動かすシチュエーション」を導き出し、それにもとづいてシーンが構成されています。

オープニングクレジットには「監督:映画賞の歴代受賞者たち」の文字。

画面に登場したのは、愛おしそうに新車をメンテナンスする男性の姿。

無事メンテナンスを終え、車を送り出す男性。しかし両目に涙を浮かべたその表情はとても悲しそうです。まるこの後待ち構える「運命」をすでに知っているかのように…

場面が変わって、緑の中を軽やかに走る車の姿。しかしその行く手には不穏な闇が立ち込めています。

車がたどり着いたのは、とあるガレージのような場所。その“視線”の先には前面がめちゃくちゃに破壊された車の姿があります。そう、ここは「クラッシュテスト場」。ここに来るということは、自らがもう元の場所に帰れないことを意味しているのです。

その模様は、テレビで生中継されていました。パートナーとともに愛する車の最期の瞬間を見届けようとする主人公。悲壮感と緊張がピークに達します。


パンパーにロープを結ばれ、クラッシュテストに「連れて行かれる」車。

目の前のトラックに全速力で突っ込んでいきます。私たちは命を終えようとする車をただ見守るしかないのでしょうか──

すると次の瞬間、鮮やかに光を放つブレーキランプ。搭載されていた「衝突防止装置」が機能したのです。

白煙を上げてストップする誘導ワイヤー。車は「処刑場」から生還することができました。


テレビの前で抱きあい喜ぶ主人公たちの姿で、ムービーは幕を閉じます。

立ち込める不安、闇、涙…そしてその後に訪れる清々しいほどのカタルシス── 歴代の名作映画たちが作り上げた王道の展開が、1分間のムービーにギュッと詰め込まれています。

もはやAIはここまでの「名作!?」を作り出すことができるようになったのか── 感慨を覚えずにはいられませんが、あくまでそれはこのCMが描きたかった側面のひとつでしかありませんでした。

このCMの担当者は次のようなコメントを残しています。「理念は、いくらでも変えていけるのです」

主人公たちの思いが届いて車が「お約束を脱する」ことができたように、膨大なフィードバックから学習し続けることで、Lexusはつねに新しい価値観を示していくことができる── これこそが本当に伝えたかったメッセージだったのです。

映像のクオリティに驚き、さらにそれが作られた“意図”を知ることで消費者へ二重にインパクトを残す── 噛めば噛むほどに味の出る秀逸なCMでした。