Case: EYE to EYE

動物愛護団体PETA(動物の倫理的扱いを求める人々の会)がドイツで展開した、市民への啓発を目的としたVR体験企画「EYE to EYE」をご紹介。

アクターの顔や口の動きにシンクロさせたウサギのキャラクターをVR空間に登場させ、あたかも本物のウサギと一対一で話しているような感覚を味わうことができるという取組みです。

VRゴーグルを装着すると…

目の前に現れたのは、人間の言葉を話すウサギの姿。
「ハロー。君は僕の言葉がわかるのかい?」

ウサギを“操作”しているのは別室のアクター。顔や身体の筋肉の動きをトラッキングし、リアルタイムでVR空間のウサギに反映させています。

「君にとって“自由”とは、なんだろう?」と問いかけるウサギ。
「どこまでも駆け抜けて行けて、空気が美味しくて…」とアクターは語ります。
するとウサギは「じゃあ、僕についてきて。」と話します。

自分とウサギ、ふたりきりの「自由の旅」が始まります。
まさかこのあと衝撃の展開が待ち構えているとも知らずに…

たどり着いたのは針葉樹が立ち並ぶ森のような場所。
「あたりを見回してごらん。どんな気分かな?」とウサギが呼びかけます。

「すごいな… 素敵な場所だ」

“あの場所”も、ちょうどこれくらいの広さなんだ」ウサギがつぶやくと、突然周囲に鉄の檻が。

同時に稲妻のような光が走り、あたりは一面真っ暗に。

「ああ… 捕まっちゃった。最悪だ。いまどんな気分かな?」
「苦しい、窮屈。辛い気分…」

視界が戻ると、さっきまでの森は姿を消し、手術室のような場所に。白衣を着た人の手らしきものが迫ってきます。

「なんだこれは!? やめてくれ!!」参加者は一転、パニック状態に陥ります。

再び景色が切り替わると、動物の内臓のような物体が転がった不気味な部屋へと移動しました。

「血…?! 怖い!! ここはいったいどこ?!」
「ここは屠殺場だよ。信じられないと思うけど、僕らはここで殺されているんだ。毎日ね。」

「悲鳴が聞こえるかい? こうして“加工”された僕たちが君たちの元に届くんだ。毎日ね。

「君たちは動物を食べる?」
「ときどき…」

「丁寧に扱われていると思っていた動物たちが、こんな形で肉に変わっていると知っても… あなたは動物を食べる?」
「食べてしまうと思う…。お肉を食べるのが楽しくないと言ったら、それはウソになるし…」

「私達はこれからどうしたらいいんだろう。」
「どうしたら…? この現実を忘れないでいてほしい。

ウサギが去ると、そこには一通の便箋が残され、VR体験が終了します。

VRゴーグルを取ると、画面のなかにあった黒い便箋が手元に。中身はウサギからの手紙でした。
「一緒に時間を過ごしてくれてありがとう。みんなは普段僕たちに話しかけてくれるけれど、僕の話を聞いてもらうことができなかった。僕たちは君たちと違うようで同じ生きものなんだ。」

「どうか忘れないでほしい。うれしい、悲しい、すべての感情を僕たちも持っていることを。自由に、ありのままに過ごしたい、と思っていることを。」

「そして、君たちと同じく、僕たちも決して長くない一生を大切に生きているということを」

家で飼っているペットなど、動物たちに「話りかける」人は多いことでしょう。でも、彼らが実際にどんなことを訴えようとしているか、私たちは知りません。
動物への愛玩感情を逆手にとり、強烈なメッセージを残す衝撃的なキャンペーンでした。