Case: LION『フジモン2WEEKフロスチャレンジ』

話題になった、または今後話題になるであろう日本国内の広告・クリエイティブの事例の裏側を、案件を担当した方へのインタビューを通して明らかにしていく連載「BEHIND THE BUZZ」。

今回は、デンタルフロスの普及を目的に行ったライオンの「フジモン2WEEKフロスチャレンジ」を取り上げます。お笑い芸人FUJIWARAの藤本敏史がライオンの広告タレントとして、7月25日よりフロスを使った14日間のデンタルケアに挑戦。14日間のチャレンジ前とチャレンジ後にはTwitterの生配信を行い、チャレンジ中には2日に1本のペースでTwitterとInstagramにフロスをしている動画をアップ。生配信や動画、広告などを合わせた総合リーチ数は3,500万を超え、日本のTwitterキャンペーンとしては異例の数字を記録しました。

企画を実施した目的や工夫した点、キャンペーンの反響についてライオン株式会社オーラルケア事業部の馬場啓太さんにお話を伺いました。

Interview & Text : まきだ まどか

キャンペーンの目的はフロスをより身近なものにすること

―どういった経緯で今回の「フジモン2WEEKフロスチャレンジ」を実施したのですか?

馬場:日本はデンタルフロスの普及がまだまだ進んでおらず、2~3割の普及率にとどまっています。それに対して、オーラルケア先進国といわれているスウェーデンの普及率は5割を越えています。日本でもさらなるフロスの普及・拡大を目指し、今回のチャレンジに至りました。
これまでももちろん、デンタルフロスの啓発は行ってきました。例えば「歯ブラシ+フロスで歯間の歯垢が1.5倍落ちる」といった内容でフロスを使う重要性を訴求したり、年間数十万本のサンプリングをしたりするなどの活動を行ってきましたが、普及拡大は微増にとどまっているという課題がありました。

―そういった課題意識がある中、「2WEEKフロスチャレンジ」を行ったねらいを教えてください。

馬場:フロスをより身近なものにしたいというのがねらいです。現状、フロスについては、「なんとなく大切なものだと認識はしているものの使うきっかけがない」という人が大半だと思います。正直、使わなくても生活が成り立つため切迫感がなく、始めるきっかけがないんです。そういった状況を変えたいと思い、今回の企画を実施するに至りました。
フロスをなかなか始めるきっかけがない人と同じ目線で語ることができる生活者の代表として藤本さんを起用、その藤本さんの2週間のフロス体験を発信することによって、「私にもできそう」「自分もやってみたい」というような共感を集めたいと考えました。

―「生活者の代表」という他に藤本さんキャスティングの理由はありますか?

馬場:藤本さんは、お口のケアに関する悩みで話題になっていました。バラエティ番組などでネタにされることも多かったため、見ている人にも身近に感じてもらえるのではと考え、藤本さんにお願いしました。

「リアル」にこだわった14日間のフロスチャレンジ

―企画を実施するにあたり、工夫したことはありますか。

馬場:こだわったのは、「リアル感」です。チャレンジ中にアップする動画は自撮りにするなど、今日もどこかで藤本さんが実際にフロスにチャレンジしている、という臨場感を大切にすることで、生活者の共感を集めたいと考えました。

―確かに動画を見ると、藤本さんのリアルな反応が伝わってきました。

馬場:今回の企画のキャッチコピーである「ごっそり!スッキリ!クセになる」にあるように、ごっそり汚れが取れる驚き、スッキリして気持ちいい瞬間、その気持ちよさがクセになる様子をフロスチャレンジを通して描くことにこだわりました。フロスで取れた汚れの量やその臭いに驚く様子、歯磨きでは得られない、フロスをした後のスッキリ感がクセになっていく様子も動画でお伝えしました。
チャレンジを終えた藤本さんから、お口のケアが行き届いたことで、「娘さんがチューしてくれた」というコメントがあったように、最終的には、デンタルケアによって周囲の反応が変わり、少し前向きになれた姿まで描き切ることができました。

 

―Twitterの生配信の内容も、手作り感があり、親しみやすい感じがしました。

馬場:フロスチャレンジ前の「チャレンジ発表会」、チャレンジ後の「結果発表会」として行ったTwitterの生配信では、視聴者からのコメントに藤本さんが応える場面もありました。藤本さんとみなさんとの掛け合いによる臨場感を高めつつ、フロスへの興味喚起の輪を拡げることにつながったと思います。

―SNS上ではどんな反応がありましたか?

馬場:「おもしろそうなことやってる」「がんばれ」「私もやってみようかな」という好意的なコメントがほとんどでした。SNS上ではネガティブなコメント等が来ることも懸念して対応策も考えてはいたのですが、全くといっていいほどなかったのが意外でした。身近な存在である藤本さんが、みんなの代表として一生懸命フロスチャレンジをする姿に共感し、結果として前向きなコメントばかりになったのだと思います。

また、SNS上でプレゼンキャンペーンも実施しました。専用ハッシュタグを付けて、Instagramにフロスにまつわる写真をアップすると、抽選でフロス100本をプレゼントするという内容です。
どちらかというとマニアックな部類に入るフロスだったと思いますが、この写真投稿キャンペーンでは、600を超える応募が集まったことが正直驚きでした。特に、どの写真も前向きな内容で、「フジモンと一緒にこれから私もがんばらなきゃ!」とか「小さいうちからフロスって大事、家族みんなでがんばります」といったコメントをいただきました。この企画を通じて、フロスをより身近なものにする!という狙いが確実に世の中に広まりつつあると私自身が実感できた瞬間でした。

―TwitterやInstagramのキャンペーンということで、やはり若い世代にアプローチできたのでしょうか。

馬場:Instagramの広告の結果を見てみると、特に20代の男女が多かったです。フロスの普及率は、年齢が上がっていくにつれて3割程度まで上昇します。トラブルが出てくるため、義務として使う人が増えるんです。今回の企画では、より若い人たちにフロスを根付かせたいという意図があったので、実際にそういった人たちにお届けできたと思います。

想定を上回るリーチ数3,500万超え

―再生回数などはどれくらいだったのですか?

馬場:動画など全てを合わせて、リーチ数は3,500万超、動画再生は730万回(広告を含む)でした。これだけの人たちにお届けできたのは大きな成果だったと思います。Twitterで行った生配信では、今までの日本のTwitterによるキャンペーン事例で前例がないほど多くの再生回数となったようです。藤本さんがSNSで好意的にいじってもらえるキャラクターだったというのが一番大きな要因だったと思います。
Twitterの生配信で藤本さんが歯医者さんに口の中を診てもらうシーンで、藤本さんが口を開けると視聴数が伸びるというおもしろい傾向もありました。タイムラインで流れてきたときに、口を開けている場面だと思わず見てしまう人が多かったのだと思います。

―今回の企画は、実売にも影響を与えましたか?

馬場:ドラッグストアやスーパーなどの流通に関わる方々の支持を集めたことによって、実売にもつなげることができました。これまでは、ハブラシやハミガキなどに比べると、デンタルフロスは大々的に売り出すような商品ではありませんでした。今回のキャンペーンでは、デンタルフロス自体のマーケットの拡大を目的としたことで、売り場で大々的に展開しようという店舗様が増えました。そのため、売上げベースで見ても、大きな成果を残すことができました。自社製品であるクリニカの枠を超え、フロス市場全体の活性化を目指したからこそ、流通関係の方々が共感してくれたのだと思います。

―さらにフロスを根付かせていくため、今後必要だと考えていること、今後の展開について教えてください。

馬場:今後の課題は、より若いうちからフロスを習慣化してもらうことだと思っています。まだアイデアレベルですが、家族みんなでフロスを習慣化しようという切り口での提案を考えています。今後も、第2弾、第3弾と施策を打ち出していく予定です。


ライオン株式会社 オーラルケア事業部 馬場啓太さん