Case: 「モンスターストライク」×「銀魂」コラボレーション

話題になった、または今後話題になるであろう日本国内の広告・クリエイティブの事例の裏側を、案件を担当した方へのインタビューを通して明らかにしていく連載「BEHIND THE BUZZ」。

今回は株式会社ミクシィ XFLAG スタジオによるスマホアプリ「モンスターストライク」とアニメ「銀魂」コラボのプロモーションについて取り上げます。

このコラボレーションの一環として実施された、「銀魂」キャラクターによる「反省キャンペーン」。このキャンペーンは、その前に行われた(キャラクターたちがCMに初めて登場した)「宣誓キャンペーン」にて、「銀魂」の人気キャラクターたちが“行き過ぎた行為”をしてしまったため“謝罪”を行うという設定。『週刊少年ジャンプ』への“謝罪広告”の掲載、リコールCM風の“謝罪CM”、キャラクターが24時間謝罪対応する“お問い合わせ電話窓口”の開設等が行われました。

CMに起用するはずだったキャラクターの“謝罪広告”をあえて制作するというコンセプトが斬新なこの施策について、株式会社ミクシィ モンスト事業本部 マーケティング部 宣伝企画グループ マネージャー 米田陶哉さん、株式会社ミクシィ ライフエクスペリエンス事業本部 スポーツマーケティング室 (当施策に関わった当時はモンスト事業本部マーケティング部 第2宣伝企画グループ)柴篤志さん、TBWA\HAKUHODO クリエイティブディレクター 荒井信洋さんに話を伺いました。

Interview & Text : 市來 孝人

キャラクターが実際に「言いそうか?」を意識

―「反省キャンペーン」の前に実施した4月の「宣誓キャンペーン」含め、銀魂のキャラクター性が前面に出ていますね。

荒井:
ブリーフィングの時から、銀魂のキャラクター性を生かしてファンをつかんでいきたいという話がありました。モンストさんは、実は結構前からCMで羽目を外しているんですよね。それにひけをとらないぐらいの(銀魂の)キャラクターがいて、もし彼らがモンストのCMの主役として抜擢されたらどれだけ暴れるかと想像しました。きっと彼らはやる気を出して力を入れるんじゃないかと。そこで「暴れる」という「宣誓」を4月に行いました(=「宣誓キャンペーン」)。

―「宣誓」したと思いきや、その後5月に「謝罪」がスタートしました。

荒井:
最初に、銀魂ファンが集まっている『週刊少年ジャンプ』で「謝罪広告」を発信、その次はお茶の間の皆様への「謝罪」としてテレビCMを展開しました。

柴:
「もっと謝罪っぽく」などとご相談したりして、最初にご提案いただいたものから「謝罪感」をより大きく出していただきました。

荒井:
前提として、本当に銀魂のキャラクターが生きていて、この広告に参加しているということを意識しました。(新聞広告やテレビCMでの言葉は)彼らが「本当に言ってそうかな?」ということは何度も議論しました。

―ちなみにテレビCMは、本当にリコールCMとしてあり得そうな出来でしたが、やはり過去のCMを研究されたのでしょうか?

荒井:
これは本当にバランスが重要でした。リコールのCMは、ともすれば気分を害す方もいらっしゃるかもしれませんが、「銀魂らしい伝え方」とのバランスをとりました。
フォントはキャラクターなりに本気で謝罪している風を伝えるために明朝体にしています。

―この広告に銀魂のキャラクターを起用するにあたって、気をつけた点などはありますか?

柴:
キャラクターボイスを最大限に生かした形でクリエイティブを考えていただきたいというオーダーをしました。また、紙面広告はもちろん声は聞こえないのですが、銀魂キャラクターが「言いそう」だと想像しやすい言葉を意識しました。

米田:
事前調査をしたところ、銀魂の作品自体はもちろんですが、声優さんもの人気が非常に高いことも特長でした。CMは静止画で制作したのですが、声を活かす時には動画ではなく、静止画の方が耳で集中して聞けますし、さらに耳で楽しむプロモーションとして「電話窓口」を開設する設計にするなど、とことん声にこだわりました。

荒井:
実は、提案時点ではリコール風のCMと電話窓口は別の企画だったんです。ただ、「謝罪」をして「(キャラクターが活躍する)CMを流せなくなりました、ごめんなさい」だけだと、キャラクターのCMを期待していたファンはやっぱりがっかりしてしまいます。その期待にしっかり応えてあげるコンテンツをどうにか作りたいというお話を聞いていたので、電話で、耳で伝えるのが相性の良いストーリーかなと思いました。
過去に電話を使ったキャンペーンはありましたが、今回は特に成果がでました。その理由は、ストーリーの中に電話を組み込んでいることです。単に「かければ繋がる」ではなく、「テレビCMで謝罪をしたけれど、深く反省の気持ちを伝えるために電話に出る」という、時系列で楽しめることが数字にも出たのではないかと思います。

米田:
仰るとおり、プロモーションのストーリーをユーザーやファンの皆さんにうまく体験してもらえたかなと思います。電話窓口の他にも、キャラクターたちが、「行き過ぎた行為をしてしまったために流せなくなったCM」をWEB限定で公開したり、キャラクターの誕生日を祝う動画を突然公開したりと、ストーリー上の出口やサプライズとなるコンテンツも複数用意しました。過去のキャンペーン事例より、比較的ロングテールでファンのテンションが持続した印象です。
広告というスタンスではなくて、ツッコミどころのあるコンテンツに加え、答えも用意する、また(電話をするという)直接参加する体験を提供できたことも大きかったのかなと思います。

ファンが楽しむ「体験」を作れたコラボレーション

―ファンの方の反応はいかがでしたか?

米田:
とても良い反応でした。銀魂とファン層の方々が、TwitterをはじめとしたSNSと相性が良いということもあるのですが、SNS上を中心に非常に多くの反響、拡散が生まれました。公開した動画9本もトータルで900万回以上再生されています。銀魂ファンでない方からも「この間のCM…」などと言われることもあり、結果として銀魂を知らない方にとっても気になる展開ができたのではないかと思います。

柴:
電話は開設5日間で13万6496件の着信があり、動画は視聴して評価をした方のみの集計ですが、97%の方から「高評価」をいただきました。

荒井
一時期「バズ」ブームがあって、数値的な広がりに関する話がたくさんありましたが、「深さ」の部分も大事です。広さは当然広げつつも、ファンに楽しんでもらう、夢中になってもらう体験を作るのが大事です。そういった体験を作れた良いコラボレーションになったなと思います。

―今回はアニメ・漫画の登場人物ですが、そのような人物やVTuberも含め、架空のキャラクターを広告に起用する事例はこれからも増えていくと思います。意識すべき点はどのような点だとお考えですか?

柴:
「キャラクターや作品の“らしさ”」を表現することだと思います。版元さんもとてもご理解があって、我々がお持ちする企画に対して「銀魂らしくてよいですね」などと面白がっていただき、コミュニケーションはスムーズにいきました。びっくりするぐらい柔軟な対応で、むしろ準備期間には「面白くないと認めない」といったプレッシャーをかけられたくらいです(笑)

—過去にもモンスターストライクとして、様々なCMを展開されています。それらからの流れという意味では、今回のCMはどういう位置付けでしたでしょうか?

米田:
モンストは運営型のサービスなので、ユーザーの皆さんを常に飽きさせないような刺激を生むことが大事だと考えています。過去のCMも今回のCMも、毎回意外性のある表現や仕掛けを盛り込んでいるといった点では共通しています。
基本的なスタンスとして「これを数ヶ月先にやろう」などと、先のプロモーション展開を決めすぎないようにしているんです。世の中も、ユーザーの動向も、日々変わるものですし、特に若い人たちは興味関心が素早く変わっていく。それを「理解し、裏切り、超えていく」ことを常に考えています。これからも変わらず驚きを生み出せるよう、努力し続けていきたいです。

画像:©空知英秋/集英社・テレビ東京・電通・BNP・アニプレックス ©XFLAG

(左から)TBWA\HAKUHODO 荒井信洋さん、株式会社ミクシィ 米田陶哉さん、株式会社ミクシィ 柴篤志さん