Case: セグメントごとに適切なアプローチ手法を探るJAFのPR戦略

思わぬタイミングで見舞われる自動車トラブル。自動車が動かなくなったら「日本自動車連盟(JAF)に電話すれば助けてもらえる」とJAFの名前を思い浮かべる人も多いことでしょう。

そうした自動車ユーザーからの救援コールに応えるロードサービスを提供しているJAFですが、トラブルを未然に防ぐ交通安全関連の講習会や広報活動などにも力を入れて取り組んでいます。

ただ、子供を車内に残したままのドアロック、いまだに低調な後席のシートベルト着用率、高齢者ドライバーが起こしがちな高速道路での逆走など、自動車にかかわるトラブルは多種多様。トラブルの種類ごとに自動車ユーザーの年代もさまざまです。交通安全意識を高めてもらうには、ターゲットになるセグメントごとに、適切なアプローチでメッセージを届けていく必要があります。

そのためにJAFは、広報をする上でどのような工夫をしているのでしょうか。交通環境部 調査研究課の宮澤俊一氏と広報部 広報課の秋本安香氏に詳しく話を聞いてきました。

メッセージを広く届けるため、セグメントごとに適切な手法で情報配信

――JAFが広報活動をする上で、心掛けている点を教えてください。

[秋本安香氏]JAFは1963年に事業を開始してロードサービスや交通安全活動、環境対策活動なども積極的に推進してきました。ソーシャルグッドと言われるように社会貢献につながる取り組みを続けてきたわけです。

そうした活動をしていると、社会に向けて広く情報を発信していくことが重要になります。交通安全・環境対策のために知ってほしいメッセージをより多くの人に伝えるには、情報の受け手、消費者のことを考えないわけにはいきません。

私たちが情報を届けたいユーザーの考え方や価値観は、年代などのセグメントによって大きく異なってきています。そうしたセグメントの違いを考慮して、適切な情報発信のやり方を心掛けることで、どのセグメントにおいてもエンゲージメントを高めていこうと努めています。

話題の先進安全自動車に対してポジティブな若者、反発する高齢者

[宮澤俊一氏]例えば、ある話題に関する受け止め方も、セグメントによって大きく異なります。

一例として挙げられるのは、最近注目されている先進安全自動車(ASV)です。若者にはASVに好意的な人が多く、ASVの先進性を訴えていくことで「こんなに車は素晴らしいものになっているのか」とポジティブに受け止めてもらえる可能性があります。

ところが高齢者には昔ながらの、先進安全装着のない車が好きな方が多く、若者に伝えるのと同じようなやり方でASVのことを知らせようとすると「自分は機械任せにしたくない」と反発されることが多いようなのです。

そうしたセグメントごとの受け止め方の違いを把握して、お伝えするメッセージや伝え方を変えること。幅広い年代に交通安全などへの意識を高めてもらうには、そうした工夫が必要だと感じています。

動画、クイズ、実践的なハウツーなど、セグメントごとに変える情報の伝え方

――「セグメントごとの違いに注意して、訴え掛けるメッセージを変える」例として、具体的な取り組みを教えていただけないでしょうか。

[秋本氏]プレスリリース配信、講習会の開催、Web動画の公開、インフォグラフィックを使ったPRなど、さまざまな手段でメッセージを届けようとしています。

例えば、若者の車離れが進んでいると言われていますが、JAFでは若者にもっと車に興味を持ってもらおうと16~17歳向けのWebサイト「JAF U-17 Open Campus」を運営しています。交通安全動画や危険予知トレーニング動画を配信し、車や交通安全の知識などの情報を提供しています。

[宮澤氏]日頃から開催している講習会でも、セグメントに応じた情報の伝え方を意識しています。

若者に向けては、車でなく自転車や歩行者の話から入る、動画を活用して注意を引きつける、クイズ形式にして自分事として考えてもらう、といった工夫をして参加者の興味を喚起するように試みています。

一方、高齢者向けには、視力や聴力が衰えていく傾向があるので、その中で安全運転をするための方法、交差点の通過をテーマとする講習や急ブレーキ体験といった身近で考えやすい話題や普段から自動車に乗る人に役立つ実践的なハウツー情報などを提供することで、興味を持ってもらえるようにしています。

アンケートと生の声から、セグメントごとの好みを把握

――そうしたセグメントごとに好まれる情報の伝え方は、どうやって把握しているのでしょう。

[宮澤氏]JAFでは多くの方に講習会やイベント開催を通してアンケートを実施しています。そのアンケート結果を踏まえて、講習の内容を改善し、セグメントごとの傾向を把握しようとしています。

もう1つ、講習会は座学と実技に分かれていまして、講師が自動車ユーザーに実技を教える機会があり、1:1で直に接することができます。そのときに聞けるユーザーの生の声の中には、アンケートでは拾えない情報も含まれていますので、アンケートとユーザーの生の声、その2つを分析して役立てています。

「硬い」調査をインフォグラフィックで分かりやすく。SmartNewsなどにも掲載

――セグメントを意識したことで、上手く情報拡散できた事例があったら、教えてください。

[秋本氏]例えば2016年1月から、ドライバーがうっかりやってしまいがちなトラブルの未然防止策・解決策を紹介するWeb動画「あなたにも起こりうる…。車にまつわる9つの恐怖の物語」の配信を始めました。

ターゲットにしていた若者たちには、ただの啓発動画を制作して配信するだけでは、興味を持ってもらえません。「この動画、面白い」と思ってもらえないと響きませんから、ホラー調だけれどもコミカルな要素も採り入れたストーリーに仕上げました。

動画公開後には予想以上の反響がありました。自動車ユーザーはもちろん、普段は自動車に興味がない若者にも、交通安全に対する意識を高めてもらうきっかけになったのではないかと考えています。

[宮澤氏]他にも最近の取り組みとして、ASVへの関心度・認知度・理解度を調査した結果をまとめたインフォグラフィック「自動車の未来」を公開しました。

JAFではかなりの量の調査を実施してWebサイトで公開していますが、その多くは調査した結果を表とグラフでそのまま掲載するだけ。それだけでは見たときに「硬い内容だ」と思われてしまいます。内容が気になったとしても、いちいち次のページを開かないといけないつくりになっていました。

そこでインフォグラフィックを制作して掲載してみたのですが、ドライバーの2人に1人が「自動ブレーキ」を誤解していることなど、パッと見ただけで調査の全体像がはっきり分かるようになりました。

その調査結果やインフォグラフィック公開の情報をプレスリリースで配信したところ、特に取り上げてほしかった自動車情報系の13サイトのほか、SmartNewsやGunosyにも掲載され、計104サイトに記事として取り上げてもらうことに成功しました。

JAFのインフォグラフィック関連の取り組みを取り上げた事例の続きは、こちらからどうぞ!