Case: Portraits of the Poppy

イギリスには、第一次大戦以降に英国軍が関わった全ての戦争、紛争における犠牲者やその家族、また退役軍人を支援する『ポピー・アピール』というイベントがあります。

ポピー・アピールが行われる時期になると、街のあちらこちらに募金箱が設置され、戦争によって障害を負った兵士や、戦死者の遺族を経済的にサポートするための募金活動が大々的に行われるそうです。

本日ご紹介するのは、この運動を主催している非営利団体・The Royal British Legionが2015年に実施したキャンペーン。祖国のため、そして世界の秩序のために戦地へと赴く兵士たちの存在を改めて人々に訴えかけるため、同団体は以下のような写真を公開しました。

同じ背景、同じポーズで映された2枚の画像。左側は1915年に撮られたもので、第一次世界大戦に出征する直前の若者を撮影した有名な写真です。そして右側がちょうどその100年後となる2015年に、陸軍に所属していた男性を撮影したもの。

右の写真に写っているMark Stonelakeさんは2008年、アフガニスタンに駐留中に道端に仕掛けられた爆弾により大怪我を負いました。大手術を乗り越え、かろうじて一命を取り留めたものの、片足を失うという多大な代償を強いられたのです。

この男性のように、任務中に後遺症の残るようなけがをしたり、体の一部を失う兵士は決して少なくありません。命懸けで責務を全うする彼らの勇気と犠牲に報いるため、The Royal British Legionは100年前に英雄と称えられた兵士と全く同じ場所、同じセッティングで写真を撮り、多くの人に向け公開したというわけです。

撮影にあたっては、背景、アングルなどに気を配っただけでなく、当時使われたカメラや機材を使用したり、暗室で現像するといった手法を含め、全てを忠実に再現したとのこと。

この取り組みはテレビをはじめ主要メディアに取り上げられたほか、英国王室も出席する追悼式典でも紹介されました。その結果史上最高額となる4,000万ポンドの寄付を集めることに成功し、2015年ポピー・アピールの中核となるキャンペーンとして大きな注目を集めたのです。

The Royal British LegionのHP上では、Markさんをはじめ数名の退役軍人について、軍に入隊したきっかけ、赴任地で何が起こったのか、そして彼らを支える家族との絆などを紹介しています。

私たち日本人にとってはあまりピンと来ませんが、アメリカやイギリスでは、軍に従事する人は『国を守る立派な志を持った人である』として、非常に尊敬を集めているそうです。祖国のために尽くした人たちを国民全体で支えていこうと呼びかけ、非常に大きな成果をもたらしたキャンペーンでした。


The Royal British Legion – Poppy Appeal from RKCR/Y&R on Vimeo.