Case: 参天製薬『サンテ40 ガラスの仮面なりきりアイマスクキャンペーン』

話題になった、または今後話題になるであろう日本国内の広告・クリエイティブの事例の裏側を、案件を担当した方へのインタビューを通して明らかにしていく連載「BEHIND THE BUZZ」。

今回は、参天製薬『サンテ40 ガラスの仮面なりきりアイマスクキャンペーン』を取り上げます。1985年の発売以来、長く愛されている点眼薬「サンテ」シリーズのプレゼントキャンペーン。これは、演劇の世界を舞台に主人公・北島マヤの成長を描く、人気マンガ『ガラスの仮面』とタイアップしたもので、『ガラスの仮面なりきり診断』『月影千草主演 サンテ40ゴールド劇場』など、マンガの世界をパロディにしたウェブコンテンツも同時に楽しめるというもの。本施策をプランニングした、GMO NIKKO株式会社 コミュニケーションプランニング部門 部門長 神谷みめいさんに話を伺いました。

Interview & Text : 香川 妙美

コミュニケーションの敷居を低くして、セールスに最大限寄与する

―今回のキャンペーンの開始のきっかけをお聞かせください。

僕は家庭薬のクリエイティブを手がけることが多いのですが、そのつながりで一昨年の夏に大阪家庭薬協会のセミナーで講演する機会をいただきまして。参天製薬さんとは、そこで面識をいただきました。ちょうど2015年のクリエイティブを決定するコンペがあるからとお声をかけていただき、今回のキャンペーンの提案をさせていただいたのがはじまりです。

参天製薬さんというと、若い年代に人気のある『サンテFX』や、フレグランスを意識した『サンテ ボーティエ』など主力のものがいくつかあり、プロモーションもかなり大々的なのですが、今回の『サンテ40』というのは、これらと比べるとなかなか伸びないブランドなんですね。でも息の長い商品なので、とても大切にされていて、コンペにあたってはターゲットである40代の女性にリーチでき、かつセールスにつながることを期待されていました。

―提案された企画はどのようにして生まれたのでしょうか?

僕は、キャラクターを使った企画をあまり行わないのですが、参天製薬さん自体はキャラクタータイアップが盛んで好みでもあるという印象を持っていたので、これを踏まえて、まず先方がジャッジしやすいものを採用しつつ家庭薬で培った僕のエッセンスが生きるものを提案したいと考えていました。

目が印象的なキャラクターとして、『ガラスの仮面』の起用にいたるわけなのですが、これはTVのバラエティ番組がヒントになりました。『ガラスの仮面』好きなタレントが作品愛を語るというものなのですが、その時点で『ガラスの仮面』を読んだことの無い僕でも、ときおり白目になる画風やマンガの持つ世界観がすぐに浮かんできたので、一般的にイメージしやすいと思いました。

そして、コミュニケーションの部分ですが、デジタルのキャンペーンは往々にして技術が先行しがちというか、新しい手法を取り入れることに意識が向いてしまうんですが、たとえ話題になったとしても、それを地方の主婦が知りさらに興味を持つのかは未知数です。やはり広告主のセールスにつなげることが一番大切ですから、テクニックに走るのではなく、分かりやすいコミュニケーションと話題化を図れるものということで、パロディで展開していくことにしました。

[企画当初の草案]

―『ガラスの仮面』を提案したときの、先方の反応はいかがでしたか?

そんなに良くもなかったですね。これまでも、エヴァンゲリオンやももいろクローバーZなどとタイアップされてきていますから、僕の提案は相当渋かったようで、びっくりされました。「ガラスの仮面ですか……」みたいな(笑)。なので、事前に行っていた認知調査を合わせて提出しました。これは、さまざまなマンガを横並びにして年代別の認知度を測定したものなのですが、『ガラスの仮面』は、定量的に支持されており、ターゲットにも刺さることを説明しました。

―実施にあたって、苦労した点があれば教えてください。

今回は勝手にキャラクターを喋らせたり、景品もちょっとおもしろいほうに寄せたりしたので、まずは原作者である美内すずえ先生の了承を得られるのかという不安がありました。作風をすごく大切にされる方と伺っていましたし、直近でも大きなキャンペーン企画をお断りされたと耳にしていたので、ここはイチかバチかで持っていくしかないな、と。

美内先生のマネジャーにも、「これはおもしろいですね。でも、先生の琴線がどこに振れるのかよく分からないので」なんて言われつつ、ドキドキしながらお会いしたのですが、「キャラクターがどんどんセリフを喋っていく展開はおもしろいわね」と言っていただいて、ようやくホッとできました。

このときの資料も、チームメンバー全員で必死にマンガを読んで、どのコマを使うのか検討して、セリフも考えてと、とても地道な作業でした。さらには、参天製薬さんは、マーケティングの分野には非常に高い知見をお持ちなのですが、デジタルキャンペーンの実績はこれまでなく、さらにはこういった分野の知識をお持ちではない美内先生にもご理解いただく必要がありましたので、プレゼンは紙芝居方式で行いました。コンペの参加が認められ、当日を迎えるまで1か月ほどでしたが、短い期間でここまで落とし込むのは本当に大変でした。

―今回は、昨年の6月に実施された第1弾に続くキャンペーンとのことですが、前回と異なる部分はありますか?

(プレゼントキャンペーンと合わせて)診断コンテンツを今回新たに盛り込みました。当初、第1弾からリリースする予定だったのですが、コンテンツを投下しないでどのくらいの応募があるかを知りたいという参天製薬さんの意向がありました。応募数も、参天製薬さんは過去のご経験から多少低めに予想していたようですが、僕が掲げていた4万件という見込みは、開始から3週間ほどで達成できました。

また、景品も前回はモノクロでしたが、今回はカラーで。これって全然大したことじゃないのですが、SNSでも「たったそれだけ」みたいな反応がユーザーから挙がることを当初から織り込んでいました。

今回に限らず、ユーザーの反応を先回りしてアウトプットに織り込むことは、クリエイティブをつくるうえで常に意識しています。想定されるざわつきに、あえてのっかることはいつも考えていますね。

広告のネタ化、バナーの量産、クリエイティブを支える数々の施策

―こだわった部分はありますか?

一つは広告のネタ化です。情報が話題化されていくときに、それが広告として広がらないと、クライアントのセールスに結びつきません。そういった点では、おもしろいと思った人が、自身の解釈で情報をシェアするときに僕らの意図しない文脈で流れるのは避けたかったので、どのように話題になるのかを考えてつくりこみました。

次に、ウェブ設計の部分になりますが、ブログが流行った時代は、あとで記事化されるので文章にしやすいことを念頭にしていましたが、現在主流のソーシャルメディアはその場で出ていくので、OGP(オープングラフプロトコル)を細かく設計することで、一律的に決まったページが表示されるのではなく、ユーザー自身がおもしろいと思った部分をシェアできるようにしています。

あとは、バナーをたくさんつくりましたね。そうするとまとめサイトに投稿してくれる人がいるんですよ。数があるとまとめたくなるみたいで。診断コンテンツの結果が16種類あるのもこの一環なんですが、ネタバレになって全然良いと思っています。キャンペーンサイトに来てもらえなくても、そこで認識して商品を買ってくれればよいので。

診断コンテンツは、冒頭にある性別を尋ねる設問にグーグルとヤフーのタグを埋め込んでおり、男女のリターゲティングが可能になるように設計しています。また、通常なら応募が完了した人には広告を表示しないようにすると思うのですが、本件では、目の症状を訴求する広告で女性にリターゲティングし、店頭での購買動機形成を図っています。これは、かなりの頻度で出現するのですが、クリックされない、つまり課金されないので費用対効果が悪くなるということもありません。

このように、表向きは分かりやすいコミュニケーションを打ち出していますが、裏側はセールスにつなげるための策を緻密な計算のうえ数多く実施しています。

―応募者や当選者の反応はいかがでしたか?

他のキャンペーンとくらべて事務局への問い合わせが目立ちました。その内容のほとんどが、「わたし、当たりましたか?」とか「娘がファンなので、当選させてください」といったもので、皆さんのキャンペーンにかける熱い想いを知れました。40代の女性の応募が、全体の7割を占めたことも狙いどおりでしたし、第2弾のKPIも無事に達成できました。

また、当選者だけに向けたアフターキャンペーンを展開することで、当選者のコメントも集めています。参天製薬さんへのフィードバックも目的の一つですが、僕たちが次の一手に生かす情報としても役立てています。

―今後の展開を聞かせください。第3弾はありますか?

このキャンペーンは、もともと昨年と今年の2年にわたる実施を計画しています。というのも、今年、『ガラスの仮面』の連載が40周年なんですよ。そこで、『サンテ40』とかけて、何かパワーアップしたキャンペーンを展開できればよいな、と。また今年は、『ガラスの仮面』の新刊が出るんじゃないかと、まことしやかにささやかれていますので、何か盛り上がりをつくれればと思っています。


GMO NIKKO株式会社
コミュニケーションプランニング部門
部門長
神谷みめいさん