Case: バーガーキング「BIG割」

話題になった、または今後話題になるであろう日本国内の広告・クリエイティブの事例の裏側を、案件を担当した方へのインタビューを通して明らかにしていく連載「BEHIND THE BUZZ」。

今回は、バーガーキング・ジャパンが実施したキャンペーン『BIG割』を取り上げます(現在は終了)。期間限定で販売されたハンバーガー、BIG KINGのキャンペーン施策として行われた、この『BIG割』は、“BIG”と名の付く商品やレシートを提示すると、BIG KING4.0を割引価格で食べられるというもの。いろいろな“BIG”で割引きに挑戦するユーザーの投稿が大きな話題になりました。

このユニークなキャンペーンはどのように発案されたのでしょうか。株式会社バーガーキング・ジャパン マーケティング部 ブランドマネージャー 家永佳奈さんにお話を伺いました。

Interview & Text : 香川 妙美

「新規のお客様にアプローチしたい」。BIG KINGが担ったバーガーキングの課題

—本キャンペーンが生まれたきっかけを教えてください。

BIG KINGは昨年4月にも期間限定販売している商品です。すでに本国アメリカをはじめ各国でレギュラーメニュー化される人気商品だけあり、登場感も手伝って昨年の期間限定商品のなかでは一番の売り上げとなりました。ただ、前回はバーガーキングを普段からご利用になるお客様の購入が主で、新規のお客様の開拓に結びついていませんでした。そこで11月に行った今回のキャンペーンでは、いかに新規のお客様に食べていただくかを本質に据えました。

加えてバーガーキングの一番の特徴は、ビーフパティを直火で焼いていることなのですが、そのことがお客様に伝わっていないという課題がありました。食べていただければおいしさが伝わる自信はあるものの、そこまでのハードルが高い印象を持っていたので、BIG KINGの販売に合わせて直火焼きのおいしさを発信することで、食べていただくきっかけにしていただこうと考えました。

―他社と比較する打ち出しは、とても衝撃的でした。『BIG割』が決定にいたるまでのプロセスをお聞かせください。

直火焼きのおいしさをダイレクトに伝えるには、他のハンバーガーの味を知っている方に食べていただくことが一番。この考えは満場一致でした。しかし、その手段として他社さんのハンバーガーと比較することには、正直なところ賛否両論あり、「他社さんと比べるのではなく、自社の商品の訴求に注力したほうがよいんじゃないか」という声も同じくらいあがりました。やはりキャンペーンは、お客様に好意的に受け容れていただくことが重要ですし、そこには売り上げもともないますから、かなりの議論に発展しました。

そこで、キャンペーンの効果をそれぞれシミュレーションし、ニュース性が強く話題にもなるという結論から、今回の『BIG割』に決まったのですが、最終的にはチャレンジしたいという空気が全体に生まれていました。外部調査機関によるテイスティングテストの結果もまた、後押しになりました。

―今回のキャンペーンは、『“BIG”と名の付くものを提示すればBIG KING4.0が割り引きになる』というものですが、ネットでの盛り上がりが機運をより高めたように感じています。“BIG”のボーダーラインに挑戦する猛者がどんどん登場し、その模様がSNSを中心に投稿され、拡散されていきましたね。

そうですね。スタート当初は、皆さん似たような“BIG”をお持ちになっていたようですが、だんだん誰も持っていっていない“BIG”を提示するというほうに加速していったように思います。お客様同士が競うように投稿していく様子は本当におもしろく、わたしたちも楽しませていただきました。おかげさまで、当社がターゲットとしている30~40代の男性ばかりではなく、女性やシニア層の方にもたくさんご来店いただけました。

―実際、何をお持ちになるお客様が多かったですか?

本当に多種多様でしたが、駄菓子やポイントカードをご提示になる方が多かったですね。もちろん他店のハンバーガーをお持ちになる方もいらっしゃいました。ほかにも、カードゲームのカードやCDアルバム、ユニークなところでは、“BIG”と書かれた付箋をお持ちになる方もいらっしゃいました(笑)。

―“BIG”のジャッジメントは、お店やスタッフの判断にゆだねたとのことですが、平準化しないことで対応に温度差が出るなどの懸念はありませんでしたか。

このキャンペーンの本質は、一人でも多くの方に直火焼きパティのおいしさを知っていただくことでしたので、むしろ画一的なオペレーションが足かせになって、その機会を逸するのは絶対に避けたいと思っていました。ですので、本社からは、「お客様の“BIG”は、すべて受け止めてください」というアナウンスだけに留めました。

結果として、お客様に提示をご案内したり、お持ちでないお客様に、たとえば「”BIG”な夢を聞かせてください」とお声かけしたりといった、ユーザーファーストの考えに基づいた独自のオペレーションが生まれ、どんどん展開されていきました。これには、わたしたちも驚かされました。

―キャッチコピーや、比較対象のハンバーガーにモザイクのかかったポスターもユニークでした。

これらのクリエイティブは、外部のクリエイターさんと、どう伝えていくかを考えながらつくりこんでいきました。ポスターはウェブサイトでも公開しているのですが、シェアも多かったですし、それに対するコメントも盛況でした。キャッチコピーもあえて直接的なものにはせず、ポスターのモザイクの粗さも何パターンか検証するなど、想像にお任せします的なニュアンスにはこだわりましたね。日本人独特の感性を大切にしました。

キャンペーンによって生まれたお客様とのコミュニケーションが思わぬ副産物に

―キャンペーンの意外な効果はありましたか。

お客様とスタッフの間のコミュニケーションがたくさん生まれ、企業ブランディングに寄与できたという点は非常に良かったですね。お客様がクーポンを提示して、スタッフが確認するという流れが普通だと思うのですが、今回は、お客様の“BIG”にスタッフが反応するといったやりとりが交わされたので、スタッフをとおして、バーガーキングとお客様の距離が近づいた、と感じています。思わぬ副産物の誕生が率直にうれしいです。

―実際の売り上げやお客様の反応はいかがでしたか?

売り上げは昨年同月比110%増を目標にしていたのですが、実績は116%増となり、満足のいく結果を残せました。お客様の反応としては、「初めて食べた」というコメントが多かったですね。「お肉が全然違う」という声も多く聞けましたので、直火焼きの味わいを訴求する点もしっかりクリアできました。

―今回の成功により、次回のキャンペーンのハードルが上がった気もしますが(笑)、BIG KINGが再登場する予定はありますか?

時期とタイミングを見ながらになるとは思いますが、またご提供していきたいと思っています。また、今回のキャンペーンは、日本で一番ポピュラーな直径約9センチのサイズでの展開でしたが、バーガーキングのハンバーガーは、看板商品のワッパーに象徴される直径約13cmのものが主流です。次回はこのワッパーサイズをお試しいただくことで、「本場のハンバーガーは大きいんだな」「アメリカから来たハンバーガーだけあるな」といった印象をお持ちいただけるようなキャンペーンを展開してもおもしろいかな、と考えています。

バーガーキングは再上陸からまだ9年目と、国内のファストフード市場ではまだまだ後発組なので、お客様に認知され選ばれていくためにも、自社の強みを積極的にお伝えできるインパクトあるキャンペーンに、どんどんチャレンジしていきたいと思っています。


株式会社バーガーキング・ジャパン
マーケティング部
ブランドマネージャー
家永佳奈さん