Case: 細かいこだわりの積み重ねが、最終的なユーザー数の差に。SmartNewsのマーケティング方針

約500万人もの月間アクティブユーザー数を誇り、日本では9番目に使われているiPhoneアプリだというニュース閲覧アプリ「SmartNews」(AppAnnie調べ:2015年第1四半期プリインを除く月間アクティブユーザー)。「SmartNewsに載ると反響が全然違う」と実感し、自社関連のニュース記事が掲載されないかと意識するようになったマーケティング/PR担当者も多いのではないでしょうか。

現在ほどの規模にまでSmartNewsが成長していく過程で、ブランディングやマーケティングコミュニケーション戦略などの面で貢献してきたのがマーケティングディレクターを務める松岡洋平氏。スマートニュースに入社する以前には、創業期のライフネット生命保険に参画してマーケティング部長を務め、米アパレルブランド「ディッキーズ」日本法人の副社長として立ち上げに携わった人物です。

そんな経歴を持つ松岡氏は、SmartNewsがここまで成長できた要因について、どのように分析しているのでしょうか。詳しく話を聞いてきました。

「プロダクト重視」という方針は、まったくぶれない

――SmartNewsのマーケティング体制について教えてください。

スマートニュース株式会社 マーケティングディレクター 松岡洋平氏

マーケティング担当は私を含めて2人で、国内と海外をカバーしています。

1人がオンラインのマーケティングを担当し、私がテレビCMの出稿や広報など、それ以外の業務を担当しています。

――松岡様の入社後、マーケティングの方針などで大きく変更になった点は?

私が入社したのは、当社が資金調達した2014年夏ごろのこと。SmartNewsというプロダクト自体の魅力で、自然とユーザー数が増えていました。

そこから1年ほどで、広告展開なども加えながらユーザー数を増やしてきたわけですが、実は「プロダクト重視」という基本的な考え方は当時からまったく変わっていません。

たとえ、テレビCMなどのマーケティング施策によってユーザー数を一時的に増やせたとしても、定着しないと意味がありません。当たり前のことですが、新たなマーケティング施策を打ったときにも、新機能を追加する際にも、常に「新しく使い始めたユーザーが定着しているか」「既存ユーザは離れていないか」とチェックすることを徹底しています。

細かいこだわりの積み重ねが、最終的なユーザー数の差につながる

――ユーザー数を増やす上で、アプリにとってはマーケティングの比重が大きいと思っていたので、意外なお話でした。

ユーザー数を増やすためには、確かに広告出稿なども有効です。けれど順調に成長を続けるためには、マーケティングより、プロダクトの力が重要だと考えています。

同ジャンルのアプリが複数あって、どれも同じような機能を備えていたとしても、「読み込みが速い」「直感的に利用できる」など、細かいところの積み重ねでユーザー体験(UX)に差が付くものです。

SmartNewsの場合、「読みやすい文字フォント」「1度により多くの情報を収集できる独自レイアウト」といった細部へのこだわりがあります。そうしたこだわりがあることをユーザー自身がはっきり気付いていなくても、実は自覚できないレベルでは心地よく感じてくれている。それが理由でSmartNewsを使い続けてくれて、これほどのユーザー数にまで成長できたのではないでしょうか。

テレビCMの出稿も一本単位で管理。効果を解析して、改善点を翌週には反映

――「プロダクト重視」という前提があった上で、マーケティング担当者として、成長を加速させるために心掛けてきたことを伺えないでしょうか。

一例を挙げると、私が担当している業務の中に、テレビCMの出稿管理があります。スマホアプリを提供する会社の中には、広告代理店に丸投げするところもあるようですが、当社ではどのテレビ局のどの時間帯のどの番組のどのタイミングにCMを流すか、すべて自社で判断してきました。全国で流す場合、同時に数十地域で数局に出すので単純に一度で100枚近くの線引き(スポットCMにおけるCM放送スケジュール予約作業)を行うことになります。

オンライン広告にも通じることですが、事前にある程度の予測は立つものの、テレビCMも出してみないと実際にどれほどの効果があるかは分かりません。テレビCMを出すときには、どの地方、どのテレビ局、どの番組、CM時間は15秒か30秒か、どのクリエイティブ――といった変数を決めていくことになるわけですが、出稿後には「どのCMによって、ダウンロード数がどれくらい伸びた」とCM効果を一本単位ですぐに解析して、効果的な変数の組み合わせを推測し、即座に翌週の出稿内容を変えてきました。

ただ、それを繰り返すことで「効果的な変数の組み合わせ」が分かってきたとしても、同じ組み合わせが翌月も通用するわけではありません。例えば、新たな広告主が大量のテレビCMを流すことが決まったら、そもそもCMが出せなくなることもありますし、出せたとしても単価が変動し効率が悪化してしまうこともあります。また前クールのドラマがヒットして高いレーティングになっている枠でも今クールはそうとは限らないのでアクチュアル(CM予約枠買付分に対する番組平均あるいはCM放送時点レーティングの比率。100%以上になることを目指す)を高められるよう予測することも大切です。

基本的なことにはなりますが、その時々の状況に応じて、柔軟な姿勢で最適な広告展開を考えること。その点については、常に気を配ってきました。

ユーザー数だけでなく、広告主の増加もミッションに

――SmartNewsは2014年12月から、収益化に向けてさまざまな広告メニューをリリースしてきました。そうした新しい広告メニューのPRも担当しているのでしょうか?

SmartNewsには、動画広告、インプレッション料金固定で必ず表示されるディスプレイ広告、そして入札価格を設定できるオークションタイプのインフィード広告があります。「特定キャリアのユーザーにだけ表示」「朝の時間帯だけ掲載」「男性」「スポーツ面のみ」といった細かな配信条件を設定することもできますし、自社が保有するユーザー属性と似たユーザーを探して広告配信する機能(拡張オーディエンス)もあります。さらに2015年9月から、該当するキーワードを含む記事の読者を広告配信のターゲットにできるキーワードターゲティングの機能も提供開始しました。

広告主の数は累計で500社超と着実に増えてきていますし、出稿いただいた金額に見合うパフォーマンスも出せています。しかし、現時点ではSmartNewsに広告出稿したことがない企業がほとんどですし、そもそもどのような広告メニューがあるかどうかを知らない企業もまだまだあります。広告媒体としてのSmartNewsの認知度を上げること、広告出稿に興味を持つ企業を増やし、実際に出稿してもらうことも、私が今、注力しているポイントです。

「効果あります」だけでは通用しない。遠回りでも、まずはメディア理解を深める

――「ニュース閲覧アプリ」という新しいメディアに広告出稿してもらうため、どんな工夫をしているのでしょうか。

自分が広告出稿する立場になって考えてみると、いくら「新しいメディアですが、こんな広告メニューがあって、パフォーマンスはいいですよ」とアピールされても、私には響きません。なぜ効果があるのかが腑に落ちないと「いいことばかり言っているが、本当だろうか。」と感じてしまいます。よく分からないなら、出稿先は現状のままでいいと判断することになるでしょう。

それなら広告主に、「新しいメディアだからこそ出稿したい」と思ってもらうには、どうすればいいのでしょうか。

私なら、1) ニュース閲覧アプリという新しいメディアが台頭してきた背景には、スマホが普及し、スマホからのネット利用がPCを上回りつつあるという時代の流れがある、2) スマホの場合はブラウザよりもアプリでネットを使う時間が圧倒的に多い、3) 多数のアプリがリリースされているが、ユーザーが継続的に利用するアプリの数はごく少数に限られている、4) ニュースは幅広いユーザが利用する領域、5) SmartNewsは高頻度で利用され、一人あたりの利用時間が非常に長く時間シェアで見れば専用ニュースアプリで過半を占める、6) 単なる面ではなく、緻密なターゲティングを行い効率を向上させられる余地が大きい

――といったSmartNewsを取り巻く状況や特徴を知っていれば、「今後、より影響力が大きくなるメディアであり、運用の巧拙で効率も変わってくるなら、早い段階から試しておこう」と出稿先として興味を持つようになります。

ですから、広告媒体としてSmartNewsを売り込む際にも、まずはそうした背景情報を伝えてから、さらに「たくさんの記事の中から、本当に魅力的な記事だけを選んで掲載するアルゴリズム」などのSmartNewsというプロダクトの特徴、「PVを稼げそうな記事ばかりを選んでしまうと多様性が薄れてしまうため、あえて幅広い記事を選ぶようにしている」「業種、広告表記や広告表現についても厳しいルールを課し、全件チェックする」といったメディアとしてのポリシーを説明することで、SmartNewsの広告に対する理解を深めてもらうことを優先しています。

「時間帯をジャックできる動画メニューがあります」といった広告メニューの詳細や、「映画やイベント集客などは特に相性がよく、年間契約も続々増えています」といった実績などについて説明するのは、その後です。一見、遠回りするように見えても、そこまで理解していただけた広告主からは、「SmartNewsなら」と納得して出稿いただけるようになります。

長期的にブランド認知を高める「スポンサードチャンネル」などの取り組みも

――最後に、そうした広告主との最新の取り組み、今後の展望などを聞かせていただけないでしょうか。

2015年7月から「スポンサードチャンネル」という広告をスタートしました。「キャリア」「トラベル」「ビューティー」という3つのチャンネルで、それぞれエン・ジャパンさん、JALさん、資生堂さんにスポンサーになっていただいています。

各チャンネルには提供元のスポンサー名と固定の広告枠が表示され、各チャンネルに興味を持つユーザーを一緒になって集めていって、長期的にスポンサーのブランド認知を上げてエンゲージメントを高めていくという狙いがあるメニューです。

他にも、先にご紹介したキーワードターゲティングの機能を活用すれば、SmartNewsでBtoB商材の顧客を見つけることも可能になると考えています。

そうしたSmartNewsを活用した取り組みで成果を出している企業も増えてきています。現在募集中の広告営業担当者と力を合わせて、広告媒体としてのSmartNewsの認知・価値を向上させていきたいです。

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