Case: 「スライム10万匹討伐戦 in 新宿」

話題になった、または今後話題になるであろう日本国内の広告・クリエイティブの事例の裏側を、案件を担当した方へのインタビューを通して明らかにしていく連載「BEHIND THE BUZZ」。今回はソニー・コンピュータエンタテインメントジャパンアジアがPlayStation®4、PlayStation®3用ソフトウェア『ドラゴンクエストヒーローズ 闇竜と世界樹の城』発売を記念し仕掛けた「スライム10万匹討伐戦 in 新宿」を取り上げます。

2月23日から3月1日の1週間、東京メトロ新宿駅構内に約10万匹の「スライム」が貼り付けられたポスターが登場。誰でも「スライム」をつぶして討伐できる仕掛け。10万匹がすぐに討伐されポスターが張り替えられるなど大きな話題になりました。
この企画の舞台裏を、株式会社 博報堂 iディレクション局 須田チーム クリエイティブディレクター 岡本浩志さん(文中「O」)、統合プラニング室 アートディレクター 伊藤裕平さん(文中「I」)に伺いました。

Interview & Text : 市來 孝人 (Takato Ichiki)

ゲームの「爽快感のあるバトル」を、プチプチ®で表現

—まずはクライアントさんからは、どのようなお話があったのでしょうか。

O:今回はソニー・コンピュータエンタテインメントさん側のプロモーションでした。新たなソフトとして「ドラゴンクエストヒーローズ」が発売されることになり、やはり有名なソフトですから「ドラクエ」効果で、より広くPS4というハードを普及させたいというお話がありました。

—企画のメインターゲットは。

O:どちらかというと、若い世代に重きを置いていました。「ドラクエ」は僕ら世代だと「買ったよね!」と話題にするのが当然という程のソフトですが、若い世代だと案外知らない人とかも増えてきていて、これは取り込んでいかないといけないなと。そういった層をコアターゲットにしつつも、やはり国民的タイトルなので幅広い世代に届くようにとは考えていました。

—そういった点もあって、新宿駅という色んな人が通る駅での実施だったのでしょうか?

O:「新宿スーパープレミアム」というメディアが、我々がやろうとしていた企画に、音が出せるとか、色んなことをやらせてもらえるという点で、相性が良かったので。

I:会場の幅が広いので、ある程度人がたまっても大丈夫ですし。

—スライムを討伐していくというアイデアは、どのように生まれたのでしょうか。

O:元々は伊藤くんの発案だったりするんですが、ゲーム自体が100万のモンスターを打ち倒せというゲームなので、それをその場で体験出来る企画が出来ないかなと考えていた時に「プチプチ®好きですよね、日本人」って(笑)。

プチプチ®をつぶす感じが、細かいことが得意で、かつストレスフルな国民性にも合うんじゃないの?という話もしつつ、企画を詰めていきました。また、過去作と比べた今回タイトルの特徴として「爽快感のあるバトル」という点もあるので、その爽快感をプチプチ®で表現するという点も、ギャップがあって面白いと思いました。

一日で討伐されてしまい、予定より早く張り替え

—実際に制作するにあたり、大変だった点はありますか。

I:プチプチ®のサイズはかなり検証しました。また、方法についても最初は印刷で検証してみたりしたのですが、印刷だとプチプチ®に対してスライム一匹一匹がズレたりするんです。ならば一つ一つスライムのシールを貼っていこうと考えた時に、小さいサイズは貼る作業に割く時間が現実的じゃないなとか、つぶした時のカタルシスを味わえるにはどんなサイズがいいかなど、色んな面から検証していきました。

O:あとは今回、イベントなのかアウトドアメディアなのかという点が曖昧な企画ではあったのですが、イベント扱いにしてしまうと柵を引いたりしなければいけないので、通りかかりの人がパッと見てサッとやって、ああ気持ちいい!というシンプルな体験を阻害しないように、イベント扱いにはしませんでした。「ドラクエ」は日本人のいろんな人がとっつきやすいタイトルと言えるので、この企画も気軽に出来ることが、国民的タイトルならではのシズル感だったりするのかなと。

—最初の10万匹が討伐された後、ポスターが張り替えられて再度10万匹が登場しましたが、これは予定通りだったのですか?

O:一応、予定通りです。張り替えの必要性が出て来る確信があったわけではないので半分予備みたいなものでしたが。当初は張り替えになるなら3-4日くらいはかかるかなと思っていて、その頃なら発売日近辺でもう一度ヤマも作れていいかもね…なんて言っていたら一日で討伐されちゃって、「ヤバい、すぐ張り替えなきゃ!」と(笑)。

—どういう層の方から反響がありましたか。

O:あらゆる層の方が反応していました。メインとなる若い人達がすでに全部討伐されているのに「シェア用に」と写真を撮ったり、女性の方が「かわいいー」といいながらつぶしたりということもありながら、意外だったのが、おばあさんが「これ何なのかしら」と気になりながらつぶしたりとか。そういう意味で、反応があった層としては「通りがかりの人」ですね。何の気なしに通りかかった人にも楽しんでもらえました。

—売り上げ面にも良い影響はありましたか。

O:この企画により「ドラクエ」が話題にもなって、浮動層が「ドラクエやっとく?」という感じで引き込まれたという、多少なりともドラクエ熱を作れたのかなと思います。クライアントさんからも「凄く売れています」というお話を頂いています。

—テレビやWEBなど、メディアからの反響も大きかった印象があります。

O:「全部討伐されました」「復活するらしい」「復活しました」「復活しても全滅しました」と、短い一週間の中でストーリーを四回くらい回転させたことが良かったのではと思います。WEBニュースとしても毎回記事にして頂いたり、テレビ番組もその日その日のTwitterでの話題になっているテーマとして、毎日来て頂いたりもしました。

—話題になった理由はどのようにお考えでしょうか?

O:「アナログであること」ではないでしょうか。テクノロジーのテの字もないのですが、プチプチ®をつぶすという体験のシンプルさが、とっつきやすさに繋がったのではないかなと思います。スマホも出さなくていいし、GPSで探さなくていいし、Facebookで連携しなくてもいいし…という参加ハードルの低さですね。これらのテクノロジーを活用する事例ももちろんあるのですが、今回は国民的タイトルという面もあり、こういったハードルの低さが相性としても良かったのではないかと思いますね。

※プチプチ®は、川上産業の登録商標です


株式会社 博報堂
iディレクション局
須田チーム
クリエイティブディレクター
岡本 浩志さん

株式会社 博報堂
統合プラニング室
アートディレクター
伊藤 裕平さん