Case: Cool Kyoto by Square

話題になった、または今後話題になるであろう日本国内の広告・クリエイティブの事例の裏側を、案件を担当した方へのインタビューを通して明らかにしていく連載「BEHIND THE BUZZ」。

今回は、シンプルな無料アプリとクレジットカードリーダーによるクレジットカード決済システムとPOSレジを提供するSquare株式会社が2014年8月11日(月)〜8月31日(日)に実施した「Cool Kyoto by Square」を取り上げます。

このイベントに賛同した京都市内のSquare加盟店にて、買いものにSquareクレジット決済を利用するとその場でオリジナル納涼うちわをプレゼント。そして期間中に京都市内で配られた納涼うちわの数に応じて、京都の街中に巨大氷が出現。サイト上でも「納涼メーター」としてうちわの配布数や、加盟店の情報をチェック出来るというものです。実施の裏側を、Square株式会社 Product Marketing Manager 掛谷悟史さんに伺いました。

Interview & Text : 市來 孝人

京都での実施を決めた理由とは

—このイベントを実施したきっかけを教えてください。

Squareが日本でサービスを開始して一年以上が経ちプロダクトや会社名については知って頂く中でさらに多くの人に、深くSquareのブランド・サービスを知って頂く為に、また我々がどういった会社か?と体験して頂いたり、我々が「単なるクレジットカード決済の会社ではなく、中小企業の方々のビジネスを多方面から応援する会社である」というメッセージに届けていく為に企画しました。消費者の方にとってはこういうお店で使えるという発見がありますし、我々にとっても、老舗の旅館からタクシー会社までこのイベントを通して改めて加盟店さんとお話させて頂く機会にもなり、非常に良かったです。

—京都エリアでの実施という点は、どのように決められたのでしょうか。

日本全国いろんな候補地がある中で最終的に決定した理由は、一つ目は加盟店さんの数が多いということです。二つ目が、クレジットカードに対する親和性の高いエリアであるという点です。海外旅行のお客さんが多いので、元々買い物をするときにカードを使うと言うふるまいが色濃くある土地ですし。三つ目は、京都と言う伝統的な街において新しいサービスを使うという点がとても美しいと思っていたので。

京都は新しいものを上手く取り入れて長く使うし、違うなと思ったものは上手く線を引くという考え方があるから歴史をもった都市として続いている、ということを京都で様々な方とお話する中で伺いました。実は新しいものを好きな方が多くて、京都の方や加盟店さんの考え方も我々の考えに非常に近いと感じました。

—参加された店舗はどのような業種が多いですか。

以前表参道で似たようなイベントをした時はアパレルであったりサロンであったりが多かったのですが、京都では飲食や物販の方が多かったです。特徴的なのは タクシー、フリーマーケット、老舗の料亭、漬物屋…色んな業態・業種で使って頂けていると言う事です。

「Squareとは何者か・どういう会社か」が伝わるイベントにするために

—うちわを配布したり、氷を置いたりするアイデアはどのように生まれたのでしょうか。

Squareとしては「×%オフ」の割引など、いわゆる物欲的・刹那的なものはしたくないという思いがありました。「Make Commerce Easy」という理念の元、消費者の方にとっては買いたいものを買いたいときに買いたい場所で買えるように、地場に根付いた良い商品をオフラインで買えるように、加盟店さんにとってはビジネスを最大化していきたいという、Squareとは何者か・どういう会社かという点が伝えられるマーケティングイベントにしたかったのです。

もう一つが、そこで買い物をしている地元の方にとって「わかりやすい体験」を感じられるものにしたいという点です。わかりやすさとは季節・タイミングなどそこにいる人が感じる部分ですが、その時の京都でいうと「暑さ」でした。その「暑さ」をうちわや氷で涼しくして、街歩きをしながらお店で素敵な商品に出会って、買いましょう、見つけましょうというメッセージが伝わればと思いました。
さらに「京都らしい」ものにしたいので、うちわはプラスチックのうちわではなく竹を使ったり、氷を置いたのも打ち水のような発想であったり。昔ながらの文化を取り入れるようにしました。

—そのあたりの感覚は、やはり現地に足を運んでブラッシュアップしていったのでしょうか。

Squareサービスをご利用頂いた回数に応じて何か起こる。そしてその起こることがローカルに還元される。このスキームは最初に決めていました。そこから現地の方や京都出身の方たちに話を伺って「今まで誰もやった事のなかった面白いイベント」「その場で使えるもの」が京都あるいは関西ではウケがいいようだ、と感覚をつかんでいきました。特に、8月15〜16日の大文字での送り火の前後には京都の昔ながらの文化として、うちわをもらうという風習があるという話が印象的でした。そのうちわを一年間使って、一年経ったら、それを返して新たなうちわをもらうという文化も昔からあったそうで、うちわは手に取ってもらえるのではないかと。

—実施までの大変だった部分は、どういった点でしたか。

ともすれば企業理論で「企業がやりたいからやっている」となりがちじゃないですか。そうはならぬように早い段階から加盟店さんや地元の方と話す機会を持って、どういう形で行うのが喜ばれるかという点は慎重に進めました。やはり一番いいのは一方通行ではなく、加盟店さんからも前のめってくれることだと思っていたので。また我々と加盟店さんだけでやろうとすると限界もありますので、ローソンさんやビックカメラさん、α-stationさんなど、パートナーさんにもご協力いただき盛り上げをどう1から10にするかという点は意識しました。

参加店舗の来客数はイベント前後で約30〜40%の増加。今後の展開は。

—成果はいかがでしたか。

とても良い反響を頂いていてありがたく思っています。消費者の方からは「こういうところでクレジットカードが使えることが知れて良かったです」から「うちわがかっこいい」まで様々な声を頂きましたし、加盟店さんの声も非常にポジティブで、特に嬉しかったのが「我々のような小さな家族経営の店舗でも、イベントに参加出来ることが嬉しいです。

店舗の形態やサイズで見落とされがちなのですが、こうしてお客様にプレゼントをあげたり、お店の情報を(イベントを通して)伝えられるチャンスを頂いたのは非常に嬉しいです」という声でした。加盟店さんに、我々のミッションや「Squareのコミュニティにいる」ということがどういうことなのかをお伝えしたかったので良かったです。実際にイベント前と期間中とで比較すると参加店舗の来客数は30〜40%ほどの増加になっています。

—最終的に街中に置く氷も4個になりました。その経緯は。

Squareサービスの利用回数の着地が納涼氷3個になりそうでしたので、3個を想定して、置き場所を探しているときに加盟店さんから「どこに置くの?」などと前向きな声を多く頂きました。そこで、その声にお応えしようと1個増やしました。

もちろん「この氷はなんだ?」と色んな人が寄ってきて触って頂くのも狙いのひとつですし、「Squareってなんですか?」という会話のきっかけにもなりました。地元の方はもちろんヨーロッパからの観光客の方からも、こういう決済になじみがないようで「こういうことが出来るんだ」という反応がありました。この氷を設置した日、氷を設置した4箇所や、三条大橋でも2時間で5000枚ほどうちわを配ったのですが、その夕方街を見ると結構うちわを持った方が歩いているんです。色も水色で目立つので街が涼しくなったようでした。

—京都エリアでの仕掛けは今後も何か考えていますか。

考えています。もっと新しいイベントや、もちろん新たな店舗にSquareのサービスを活用しませんかという我々のコミュニティを増やしていく活動自体もしていく予定です。また、日本全国まだまだ色んな土地や加盟店さんがある中で、京都だけではなく色んなエリアでサポートしていきたいなと思っています。

—具体的に考えている新規エリアはあるのでしょうか。

我々が「こういうエリアに行きたいから行く」だけでは誰もハッピーにはなりませんし、そのエリアで何かやりたいという方がいて、一方で我々も何かやりたいという形があってこそお互いハッピーになると思っています。クレジットカード決済に必要性を感じている土地・ビジネス・団体と上手く声を掛け合いながら一方通行にならぬように考えていこうと思っています。今後ともこの様な活動に興味のある地域・行政・団体の方の声もお待ちしております。

—ちなみに、本社のあるアメリカでもローカルに向けたキャンペーンの実例はありますか。

アメリカでは「Let’s Talk」というイベントを定期的に開催しております。これは地域に根付いたお店が一同に介して、決済だけではなくて、例えば「集客どうしてる」だとか「2店舗目をオープンするときにはどうしているのか」だとか、ビジネス上での悩みをざっくばらんに話して、ローカルビジネスのネットワークを醸成する機会です。そこにはローカルビジネスのオーナーだけではなく、政治家の方や自治体の方をお招きして彼らローカルの声を届けるようにしています。

【Interviewee】

Square株式会社
Product Marketing Manager
掛谷 悟史さん