Case:「メントス×アメイジング・スパイダーマン2™」キャンペーン

話題になった(=「バズった」)日本国内の広告・クリエイティブ事例の裏側を、案件を担当した方へのインタビューを通して明らかにしていく連載「BEHIND THE BUZZ」。

今回は、菓子ブランド「メントス」と映画「アメイジング・スパイダーマン2™」がコラボレーションしたキャンペーンを取り上げます。Twitter・Vineを活用し「『#スゲーぞ自分』な瞬間」の静止画・動画を募集する投稿コンテストを実施。そのプライズとなった、4月22日(火)「アメイジング・スパイダーマン2™」先行試写会ではコンテスト受賞者の発表や、「メントス」CMへの出演のみならず投稿コンテストのSNS上でのインフルエンサーとしても力を発揮した「けみお」さん、「山田沙梨奈」さんの登場もありました。

このキャンペーン実施の裏側と、キャンペーンを通して体感したティーン世代のコミュニケーション事情について、ビーコン コミュニケーションズ株式会社 クリエイティブ ディレクター 石原KAZZさん、ビーコン コミュニケーションズ株式会社 シニア クリエイティブ プランナー/シニア プロデューサー 加藤真義さんに伺います。

Interview & Text : 市來 孝人

コンテストは、投稿数自体よりメントスのことが意識に入っていけば「成功」

—まずは最初に、キャンペーン実施のきっかけを教えて頂けますか。

(加藤氏) ペルフェッティ・ヴァン・メレ(メントスなど様々な菓子ブランドを持っているメーカー)がグローバルレベルでソニーピクチャーズと映画「アメイジング・スパイダーマン2™」について契約をして、日本においては“「メントス」を使って何か企画をやってくれ”という話が昨年の11月頃にあったのが、一番最初です。

日本ではティーンが一番のターゲットとされましたが、一方で彼らは「メントスのことを知っているけれどあまり食べたことがない」という実情もあって、どうすれば彼らに買ってもらえるかという点が大きな課題でした。

—最初に議論されたポイントはどんなところですか。

(石原氏) どうやったらスパイダーマンがメントスにうまくハマり、ティーンに伝わるメッセージになるかというところですね。昨年のメントスのキャンペーンは、外側がシュガーコーティングされていて、食べると中がジューシーという商品のユニークネスと、ティーンの子達が自分の殻を破るという点をかけた「自分の殻を破る」というコンセプトでした。今年もその流れを活かしつつ、スパイダーマンが加わった時に「Hero in You」というコンセプトを打ち出しました。

スパイダーマンって「生まれつき強い」ヒーローではなく、「スパイダーマンの力を手に入れて強くなる」そんな人間っぽさが支持されているゆえんだと思います。ティーンの子達も、繊細な年頃で周りに影響されたり気にしたり、自分を主張するのが恥ずかしいと思ったり、色々あるけれども飛び越えて自分のやりたいことをやればいいんじゃない?自分の中のヒーローを解き放っちゃえばいいんじゃない?という形でメントスとスパイダーマンを繋げました。

ーそのコンセプトがあってこその「#スゲーぞ自分」キャンペーンだと思うのですが、投稿コンテスト形式にされた理由は何でしょうか。

(加藤氏) 今回 CMを制作する過程で、2カットほど登場している「けみお」くんが中高生に絶大な人気でで37万人のフォロワーがいることや、Vineで火がついたということを知り、彼のSNS上での影響力を活かしていこうという一つの「チャレンジ」として、コンテストを始めました。また、けみおくんのようにVineを活用している人はまだ多くはないということで、静止画でもOKという形にしました。

—そのチャレンジの成果はいかがでしたでしょうか。

(加藤氏) 二週間で動画・静止画合わせて150程度の投稿があって、Vine投稿もありましたが、静止画の方が多かったです。おそらく日本ではまだVineで動画を投稿するよりも、見て楽しんでいる人の方が圧倒的に多い段階ではあるかなと思います。仮に投稿しなくても、投稿者から友人のフォロワーにリーチして、サイトを訪れてくれたり、メントスのことが意識に入っていけばひとまず成功と思っています。

また、「#スゲーぞ自分」という「自撮り」には抵抗がやはりあって、「友達と一緒に」といったシチュエーションだとまた投稿されるものも違うのかなという感じがしました。一緒だと「みんなでやると怖くない」安心感も出てくるんだと思います。

(石原氏) ただ、高校生の中でVineというものが親和性の高いものになりつつあるという点は感じましたね。

(加藤氏) 使っている人は使っていますね。「これ面白いよ」と広がる速度が想像以上に早いのだと思います。

フォロワー37万人超の「けみお」さんの人気を肌で実感 インフルエンサーとしてキャンペーンの原動力に

—けみおさんがCMに出演する経緯はどのようなものだったのでしょうか。

(加藤氏) 弊社ストラテジックプランナーの村山が、けみおくんがモデルをしている「HR」という雑誌を発行する「グラフィティ」に知り合いがいて色々お話を伺いに行ったところ彼の存在を知り、AOI Pro.加藤久哉プロデューサーと古川原壮志監督とも相談してキャスティングしたのが今回の経緯です。

今回CMは実在する高校でロケをしたのですが、けみおくんが入った瞬間に生徒さんから黄色い声があがったんです。その時に「イケる」と思いましたね。そのあとも、けみおくんの出演カットは多くはなかったのですが彼がTwitterで「初めてのCM出演」とつぶやいたら、ものの数秒であっというまに500RT、600RTされて、最終的に2,600RTまで広がっていきました。

そのスピード感やティーンのリアルな反応を目の当たりにして、キャンペーンの各施策はスピード感をもってファインチューンしていきました。細かいところでは、バナーのクリエイティブをけみおくんバージョンでも露出したりとか。先読みと、スピードが重要でした。

(石原氏) インフラ(の進化)もありますが、僕らが高校生の時にいたインフルエンサーとはまた違うと思っていて、けみおくんのようにVineで面白いことをやっていたら全国の高校生に知れ渡っていったというのはそれこそ大人達の耳に入ってこない世界の話で、規模の大小はあれどそのようなインフルエンサーが他にもいるんだろうな、と。

(加藤氏) けみおくんも今やテレビの情報番組でコーナーを持ったり、奥田民生さんプロデュースで歌手デビューが決まったりトントン拍子で…元々メディアが作り上げたのではなく、結果論なのかもしれませんが、自分で自分をメディア化していくのが、まさに新しい世代だなと思います。

—今回のキャンペーンでも、けみおさんがRTすることで反響が出たりということもありましたか。

(加藤氏) ありましたね。(ツイート検索を見ると)メントスに対しての世の中の注目(特にティーンのつぶやき)が、彼がRTすると瞬間的に跳ね上がる位です。

(石原氏) これまでティーンの子達がコンビニに行ってもメントスは選択肢になかなか挙がらないといった状況だったのが、ツイートを見てると「メントス買った」「箱買いした」「けみおくん買ったよ」と様々な反応が出てきましたね。

(加藤氏) 商品を買った写真にけみお君のデコレーションをつけて写真を投稿したりとか「こういうツールの使い方やコミュニケーションの形もあるんだな」と実感しました。

—けみおさんも登場する試写会も実施。当日は来場者も撮影はOKにするなど、ソーシャル上での拡散も狙っていたのですか。

(加藤氏) 基本オープンソースです。招待した来場者はみんな投稿をしてくれている子達なので、公開前の映画以外は基本、撮影を禁止する事はしませんでした。

受付にもサンプリングボードを用意して、メントスを食べてもらいつつスパイダーマンも横に立ってもらって記念撮影のチャンスを作ったり、優秀者3人に対しては表彰式を用意して、そこでも写真を撮ってもらったり、出演者・来場者全員でVine動画を作る時間を設けて、帰ってからも見てもらってさらに楽しんでもらえる体験を来場者に提供出来たらいいなと、様々なシェアしたくなるネタを仕込みました。

キャンペーンを通して体感した、ティーン世代のコミュニケーション事情

—今回のキャンペーンでは、ティーンの消費動向についても調査されたのでしょうか。

(加藤氏) 「グラフィティ」さんや現役高校生でメインアクターの山田沙梨奈さんにはキャスティング以外にもトレンドについて色々話を伺いました。制服の着こなしのような些細な所でも、ティーンがCM(での着こなし)をパッと見て「ダサい」と思われるとすぐに離れちゃうので、石原も古川原監督やスタイリストの田中隆行さんと綿密に詰めていましたね。

(石原氏) 足を長く見せる為に膝よりソックスを5cmくらい短くするのが流行っているとか、そういうちょっとしたこだわりがティーンの中で当たり前のことになっている。それを知らないでクリエイティブを作ったら彼・彼女達にはダサくて、見向きもされない時代になっているのかなーと思います。

ーちなみに「ティーン」の中でも、具体的にターゲットした層について教えて下さい。

(加藤氏) 16-18歳の高校生、特に女子ですね。

(石原氏) 大学生はまた違うんですよね、制服でもなくなるし。

(加藤氏) 高校までは義務教育ということもあってルールが比較的に厳しいように感じるのですが、大学や専門学校などは高校に比べればもう少し自由というか。

—彼らの世代の特徴はどのようなものでしょうか。

(石原氏) 色んな意味で「軽い」ですね。これは悪い意味ではなく「早い」という意味で、デジタルツールもごく自然に使いこなしていますし。

また、「重い」コミットメントは期待してはいけないだろうなというところです。「高校生はこうだから、こうしてくれるだろう」と考えて策を打っても、ひょっとしたら「そんなところまで考えてない」というものかもしれません。特に企業からの物事を彼らは「関係ない」と捉えていて、よほど彼らの中で流行っているものじゃないと受け入れられないのかなと。

色んな物事を「真剣にも大げさにもコミットしない」、だからこそLINEのスタンプなんかはちょうどいいコミュニケーションとしてハマったんだと思います。(自分が送ったメッセージなどの)反応もすぐに見たいし、それもずっと見ているわけじゃない。

(加藤氏) 楽しくて気楽というところは大きい気がします。良い意味で「ライトなもの」が受け入れられやすいではないかと感じますね。

—そんな彼らにテレビCMのようなマス的な施策は活きますか。

(加藤氏) ちゃんと響いていると思います。大事なのは使い方で、押し付けがましい企業の広告だと自分とは関係ないと思ってしまうけれども、例えば今回でいうけみおくんのような「自分たちが身近で応援している人」が「”テレビ”に出ている」とギャップが受けて、広がったのかなと思います。いかに彼らにとってのネタにどうなるかという所も一つの要因だと思います。自分(達)自身にとっての大小あれどインセンティブ/メリットになるかどうか、会話の小ネタになるのかどうか。それも含めたストーリーの作り方、伝え方次第なのかもしれません。

(石原氏) 一瞬しか出てないのも良かったのかもしれません。「あれってけみおくんじゃない?」と。

(加藤氏) やはりテレビを見ながら感想をつぶやいたり、メッセージしたりしていると思います。学校から帰って家で携帯を手放さない頃なのか、21時から22時くらいの時間帯はツイートとかも増える傾向があるんだそうです。携帯は友達などと連絡をとり合うツールで、今や空気みたいなものなんだな、ということを今更ながら実感しました。

(石原氏) CMのロケ中に高校生に聞いたのですが、LINEで15人と同時並行でやっていたりするそうです。複数のグループを使って、家に帰った後はひたすら会話をしているんですよね。

(加藤氏) 友達が目の前にいるのとそう大きくは変わらない感覚で普通に会話をしているんだと思います。そこに自分がいるというか。

(石原氏) 止められないものなのだと思います。スマホは特別なものじゃなくて、彼らにとっては普通の「会話」なんですよね。僕らの世代から見たら「大変だね」と思いますが、ひょっとしたら彼らから見ると公衆電話やポケベルでやりとりしていた頃の方が大変じゃない?と思うかもしれません。

(加藤氏) 例えばLINEを使う時は、自分は「LINE」を使うと思って使いますが、彼らにとっては自分みたいなおじさんほど、それぞれのサービスを「使うぞ」と意識してないのかもしれませんね。

劇場で披露されたプロジェクションマッピングの模様

【Interviewee】

ビーコン コミュニケーションズ株式会社
クリエイティブ ディレクター
石原 KAZZさん(左)

ビーコン コミュニケーションズ株式会社
シニア クリエイティブ プランナー/シニア プロデューサー
加藤 真義さん(右)

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