Case: AUTOWAY「雪道コワイ」&「いきなりBAN」

話題になった(=「バズった」)日本国内の広告・クリエイティブの事例の裏側を、案件を担当した方へのインタビューを通して明らかにしていく連載「BEHIND THE BUZZ」。

今回は、YouTubeで800万回以上の再生を記録している「雪道コワイ」、公開わずか数時間で15万回以上再生されながらもYouTubeから動画を一時削除されてしまった「いきなりBAN」と、立て続けに話題の動画を送り出している福岡に本社を置くタイヤ販売店「AUTOWAY」の事例を取り上げます。

これらの動画を手がけたBBDO J WEST コンテンツプランナー/インタラクティブプランナー 眞鍋海里さんに、Part2では「いきなりBAN」制作にあたりこだわった点や、YouTubeによる削除の真相、動画コンテンツの可能性について伺います。

Interview & Text : 市來 孝人

≪初期プレゼンから「雪道コワイ」のヒット、「いきなりBAN」構想について:Part1はこちら

「ユーザーが自発的に投稿したような動画」っぽくするために徹底研究

—女の子が「ニコ生風」に配信している模様を描いた「【放送事故】生配信中に…いきなりBAN」。水着に着替えている間にいきなり車が…というシナリオは、どのように考えられたのでしょうか。

(車が突っ込んで来るという)最後だけでも完結する内容ですが、その最後のシーンを見た上で前段は「そういうことね!」というような“発見”があるようにしたいなと。それがウマければウマいほど、シェアする理由にも繋がります。

“着替える”は「タイヤを履き替える」という点をかけていますし、「放送事故」というタイトルも動画を見終わったあとに腑に落ちるように考えています。そして「ニコ生でやりそうなこと」という点を強く意識しました。

—ということは、かなりニコ生を見て研究されたんですね。

めちゃくちゃ見ましたね(笑)独特の文化なので、掴むのには苦労しました。

—その文化は掴めましたか。

そうですね、例えば「ならでは」の言葉、例えばコメント欄に流れてくる用語は完璧におさえましたし、モニターを見る角度など「ニコ生主の感じ」も意識して取り込みました。

—「ニコ生っぽいもの」に目をつけたのはなぜでしょう。

前回同様に「ネットユーザーが自発的に投稿したような動画」風に見せたいと思っていました。CMっぽく、プロが作ったように見えるものより「実はこれ、広告でした」位のものにしたかったですね。ネットユーザーは広告っぽいものに敏感ですし、制作費も多くはないので。前回も「ドライブ中に偶然撮れた心霊動画」というイメージでした。

YouTubeによる削除の真相

—YouTubeからこの動画は一旦削除されましたが、これは本当に利用規約に違反したのか、そこまでをプロモーションとして事前に根回ししたのか、ぶっちゃけたところどちらですか?

急激なアクセスが集中してしまったことによる削除と復活が繰り返されていたんですが、結果利用規約違反ではなかった(アクセス集中が原因だった)みたいで、今ではきちんと見れるようになっています。仕込みではなく、こちらもビックリしたのが正直なところです(笑)

—実際に削除、つまり「BAN」されてしまった時のAUTOWAYさんの反応はいかがでしたか。

「いきなりBAN」がリアルにBANされたことで、「それも話題の一つになる!」とポジティブな考え方をしてくださり、削除されてからすぐに「この動画のように、タイヤもいきなりBANされちゃいますよ」という内容に動画を差し替えました。放置するより、自虐的にネタにした方がユーザーにも「細かいね」と笑ってもらえるので。

—差し替え動画は、すぐに作ったのですか。

自分のパソコンのiMovieで急遽、短時間で作って差し替えました。

—ポジティブな考え方をしてくださっているとのことですが、AUTOWAYさんの社内での変化も強く感じますか。

やはりこれだけ話題になると、いろいろな所から「アレ見ましたよ!」「あのAUTOWAYさん?」という話になるようで、社内的なモチベーションにも多少は寄与しているみたいです。もともとすごく真面目にコミュニケーションを考えてこられた企業なので、「こんなこと出来ませんかね」という話が出るなど、さらに前向きに捉えて頂いています。

広告出稿にあたりこれまでは効率を重視していたのが、今は直接ユーザーさんに喜んでもらっているものができているという実感があるようです。前回の「雪道コワイ」もPRの広告換算で日本だけで2億円以上となるなど、企業に注目が集まることで沢山のメディアからの取材が増え、企業としての認知もかなり上がっている点も大きいようです。

—キャンペーンの今後の展開予定を教えて下さい。

伴(ばん)ちゃんという萌えキャラが、ユーザーに凄く人気です。なので、ポスターやノベルティグッズを作ったりするとユーザーさんも喜んでくれるんじゃないかという話をしています。

ネットだけではなくフィールドプロモーションを展開したり、色んなタッチポイントに展開できればなと思っています。

—キャラクターを作ったのもネットとの親和性があって、ということですか。

これはサイトや動画も含めてですが「日本のオタク文化」らしく海外から見えるよう意識しています。ツインテールであったりとか、コスプレ要素があったりだとか、YouTubeでどういうものが見られているかというところから「海外受けするもの」を研究して盛り込みました。また、動画公開初日にあのアーティスト村上隆さんも反応してくださってて、スゴく驚きました。

—前回・今回ともに、どの国からの反応が多いですか。

アメリカがやはり多いと思います。ニュースサイトでもすぐに上がりましたし、ユーザーのパイも広いですし。

面白いものを作れば間違いなく広がるのが、ネットの世界

—「動画コンテンツ」についての今後の可能性についてお聞かせ下さい。

ネット上には、広告以上に面白い動画や写真など様々なコンテンツがあります。そんな中では面白いものを作りさえすれば広がってくれるし、周りの面白いものより「更に面白いもの」を作っていけば可能性が広がるジャンルかなと思いますね。広告的なメッセージをいかにしてコンテンツにしていくか、もっと挑戦していきたいです。

—「動画コンテンツ」をとりまく時代の変化などは感じますか。

Webの世界でプランニングをして6年目になりますが、「面白いものが勝つ」という基本的なところは変わらないと思います。どう広がるか、あるいはどういうものが面白いかどうかはその時々によって変わって来るとは思いますが、人に伝えたくなるものであれば自然と広がるものだと考えています。

ネットユーザーが面白いと思うものをどれだけ考えられるか、また今はいわゆる「一般の人」との境界線も薄くなってきていますし、社会でどういうものが求められているかと考えることが大切だと思っています。

AUTOWAYさん自身も企業側の一方的な視点ではなく、ユーザー視点で考えていけば、結果的に良い結果になるという信念を持ってらっしゃいます。これこそまさに企画書の1ページに書いた「広告(という概念でコミュニケーションするの)はやめませんか?」ということだと思います。

【Interviewee】

BBDO J WEST
コンテンツプランナー/インタラクティブプランナー
眞鍋海里さん