Case: 週刊プレイボーイ『週プレ酒場』

話題になった、または今後話題になるであろう日本国内の広告・クリエイティブの事例の裏側を、案件を担当した方へのインタビューを通して明らかにしていく連載「BEHIND THE BUZZ」。

今回は、週刊プレイボーイ 創刊50周年企画として新宿・歌舞伎町にオープンした「週プレ酒場」を取り上げます。居酒屋として飲食を楽しむことはもちろん、「週プレ酒BAR」と銘打った全5席・完全予約制のバーエリアではアイドルがカウンターに登場。「週プレ劇場」と称して、各界の著名人を招いたトークイベントも開催しています。オープンから1年間、様々なタレント・著名人・企業関係者が集う場となりそうです。株式会社 集英社 コンテンツ事業部 コンテンツ事業課 課長 東秀人さん、株式会社 集英社 週刊プレイボーイ編集部 近田拓郎さんに、オープンに至った経緯やお店に込めたこだわりを聞きました。

Interview & Text : 市來 孝人

ファン同士、意気投合する光景も

—東さんの部署と、近田さんの部署、それぞれの役割分担についてまずは聞かせていただけますか?

東:私の部署がハード面・事業面を担い、グラビアアイドルの稼働やお店のコンセプトは編集部が担っています。コンテンツ事業部は2013年に発足しました。2012年の『ワンピース』連載15周年にあたり、六本木ヒルズで朝日新聞さんと展覧会を開催させていただきました。お客様には非常に喜んでいただいて3ヶ月で51万人という、当時の六本木ヒルズの記録になりました。2012年当時は宣伝部にいたのですが、この『ワンピース』の展覧会や『ジョジョの奇妙な冒険』25周年の展覧会がいずれも評判が良く、グッズも売れ収益が良かったので、出版社の新たな事業としてこれからも何かできるのではとコンテンツ事業部が発足しました。

『キャプテン翼』や『マーガレット』『NARUTO』『こちら葛飾区亀有公園前派出所』などで展覧会を行ってきた中で、漫画以外の試みもやってみようと、創刊50周年の『週刊プレイボーイ』で何かやろうということになりました。最初は写真展など、これまでの展覧会施策の延長線上の案もありましたが、回顧展にならず、今の雑誌にフィードバックするように…という話をしている流れで「飲み屋をやったらおもしろいんじゃないか」という案が出ました。グラビアはもちろん、カルチャーからスポーツまで幅広いコンテンツがある雑誌なのでいろんな人脈もあり、いろんなイベントもできますから。そこから、編集部の意見を聞きたいなと、スタッフを編集部で選んでもらって一年ほど前からミーティングしていました。

—編集部として、特にこだわった部分はありますか?

近田:実際にアイドルの方がお店に出るバーエリアですね。週プレはやはりグラビアのイメージが強いので、この試みがあってはじめて「週プレ酒場」になるのかなと思っていました。ただ最初は前例がないので交渉は難しかったのですが、誌面に載るということは彼女たちにとって最重要事項と捉えていただいているので…誌面との連動も企画していくことで徐々に集まって行きました。

ただ、実際始まってみると楽しそうに接客してくれていますね。またメディア関係者もよく飲みにきているので、そこで挨拶した人脈でまた別の仕事に繋がるということもありそうです。

—バーエリアに来店される方はどういう方が多いですか?

近田:体感として7~8割はファンの方でしょうか。ファンの方はすごく温かくて、(カウンターの定員)5名がほぼ初対面でも、意気投合して終わった後も居酒屋エリアで飲んでくれているという光景もあります。昨年、50周年記念本を編集していて感じたのですが、これまでグラビアアイドルといえば雲の上の存在だったはずです。でも今、こうして実際に会えて飲める場があるというのはグラビアの意味合いが変わってきたというか、2017年らしいのかなとも思います。

東:もう一回店頭に出たいと言ってくれているアイドルの方もいますね。また、バーエリアではない居酒屋エリアにも「乾杯タイム」ができました。バーエリアに出る合間の時間、居酒屋エリアに出てきて、そのエリアにいるお客さんに向かって乾杯をしてくれるという試みです。私はもともと漫画畑だったので、アイドルの方がお客さんの前で乾杯をしてくれるとは思っていなかったのですが、編集部から「やってみましょうか」とかけあってくれるので助かりますね。

近田:バーに出る時の衣装はこちらで準備していますが、着物を着てカウンターに立つなど自分発信で個性をアピールするコも多いです。お店に立つこと自体をプロモーションと考えて、お客さんを巻き込んでアピールする場に実際、なっていますから。今後誌面での連動特集も企画していますが、誌面から人気が出るというこれまでの形ではなく、この場所から人気が生まれるという循環ができたら逆に面白いなと思っています。

—お客さんとの交流から、新たな企画が生まれたりする可能性もありますよね。

近田:確かにそんな展開が生まれるのが酒場の醍醐味なのかもしれません。この場所を使って面白いことできないかなという方からの提案もウェルカムです。

東:現在も週プレ発のイベントをやっていますが、8月以降は漫画家さんのイベントなど自社の他の雑誌のイベントも仕込んでいきますし、他社さんの雑誌とのコラボレーションも可能性があります。

近田:雑誌同士だと他社さんとのコラボは気を遣うことや手続きも多いのですが、「居酒屋だったらいいんじゃない?」というノリが生まれたら良いなと思っています。またバーカウンターからの配信などもやっていけたら面白いですね。先日もイベントを SHOWROOMで配信しました。ただの酒場ではないんだぞ、という場所にしていけたら良いなと思います。

こういった場所があるからこそ、雑誌ももっと面白く

—メニューについても伺います。「グラビアアイドルは唐揚げをよく食べる」というコンセプトで唐揚げがメニュー化されていましたが…これは本当ですか?

近田:これは、本当にそうなんですよ。科学的実証はないのですが本当に「唐揚げが好き」という人が多くて。もうひとつあって、キャベツもよく食べるとバストがたわわに育つというのは、グラビア業界の“あるある”ですね。ちなみに週プレ酒場のお通しは、キャベツです(笑)。

—ドリンクはサントリーさんの協賛がついていますね。

東:お店が話題になるだろうということや、リアルなタッチポイントになるということを見込んで、6-7月、バーエリアに協賛いただきました。

近田:誌面でも表紙にサントリーの商品が出ています。表紙は広告枠ではないので、商品パッケージが載っているのは週プレ50年の歴史の中でも珍しいですね。これは居酒屋という場所があったからこそできたと思います。こういう場所があるなら、雑誌ももっと面白くしようと。これまでは雑誌のコンテンツをどう外に飛ばそうということが多いのですが、それが逆転といいますか、(居酒屋は)雑誌以上に雑誌らしいのではと思います。

「もしかしたらあの子がいるんじゃないか」というワクワク感を作りたい

—今後の展開についても伺えますか?

近田:誌面との連動といいますか、その週の表紙をやったタレントさんがその週に飲みに来ているような機会も、何度か作れたらいいなと思います。ロケの打ち上げをここでやったり(笑)。また、告知はせずゲリラで担当編集がタレントを連れてきて「あれ、いるじゃん」とざわつくような機会を定期的にやっていこうと。「もしかしたらあの子がいるんじゃないか」というワクワク感を作りたいですね。

東:今は読者やタレントさんのファンなど、なんらかの形で週プレに触れている方の来客が多いと思うので、そうじゃない人も来て欲しいですね。雑誌も店内に置いているので手にとってもらって、「今こんな連載やっているんだ」「人生相談まだやっているんだ」などと話してもらえたらいいですね。この場所があることでいきなり部数が増えることはないですけれども、なぜこんな店をやっているかと取材も増えていますし、集英社面白いんじゃないか、週プレ面白いんじゃないかという評判も作っていきたいです。

近田:雑誌の人間としては、週プレを買ってお酒を飲みながら読んでいる姿を見ることができるのはすごく楽しいですね。普段、読者の方の顔を見る機会ってほとんどないので、モチベーションにもなっています。

株式会社 集英社 コンテンツ事業部 コンテンツ事業課 課長 東秀人さん(左)、株式会社 集英社 週刊プレイボーイ編集部 近田拓郎さん(右)