Case:大分県別府市 『「湯~園地」計画』

話題になった、または今後話題になるであろう日本国内の広告・クリエイティブの事例の裏側を、案件を担当した方へのインタビューを通して明らかにしていく連載「BEHIND THE BUZZ」。

今回は、大分県別府市による“温泉”と“遊園地”を一体化させたアミューズメントパーク「湯〜園地(ゆ〜えんち)」計画について取り上げます。温泉都市・別府の魅力を国内外にむけて発信すべく、新たな市のビジョンとして「遊べる温泉都市構想」を策定した別府市。その第1弾として2016年11月に公開したPR動画のYouTube再生回数が100万回を達成した場合、実際に別府市内に「湯〜園地」をオープンすることを公約しました。動画は公開後わずか72時間で100万回再生を見事達成。

クラウドファウンディングを活用した資金調達にも成功し、2017年7月29日から31日までの3日間限定で実際に「湯〜園地」がオープンすることが決まりました。この前代未聞の企画の経緯から、PR動画を制作する上でのこだわりや裏話、予想を超える国内外からの反響、クラウドファウンディングの成果、そして「湯〜園地」計画の現状まで、別府市観光課の江藤慎一郎さんにお話を伺いました。

Interview & Text : 坂巻 渚

“温泉”と“遊園地”を一体化させたアミューズメントパーク「湯〜園地」とは?

―まず、本取り組みを実施することになったきっかけからお教えいただけますか。

「人が入れる温泉として世界一の湧出量(*1)を誇る温泉都市」としてその魅力を国内外にむけて幅広く発信すべく、市の新たなビジョンとして「遊べる温泉都市構想」を策定したのが始まりです。今回その第1弾プロジェクトとして、「遊園地」ならぬ「湯~園地」をビジュアル化したPRムービーをWeb上で公開しました。“温泉ジェットコースター”や“温泉メリーゴーランド”など、まさに「遊べる温泉都市構想」のコンセプトをそのまま形にした、温泉につかりながら楽しめるアミューズメント施設「湯~園地を描きました。
*1:総湧出量1位のイエローストーン国立公園は人の入浴不可のため、人が入れる温泉としては世界一

―「湯~園地」計画とは斬新なアイデアですね。

誰もが好きな「温泉」と「遊園地」を掛け合わせる事で、それこそ誰もが楽しめる「湯~園地」が実現できるのではないか、という発想から生まれた企画です。
またそれだけでなく、別府に住んでいる方、特に若者に「別府は皆に誇れるすごい町である」という事を改めて認識してもらいたい、そして遠く離れた場所に住んでいる別府出身の方には、このムービーを見てふるさとを誇りに感じ、「いつか別府のために何かをしたい、別府に貢献したい」と思ってもらいたい、そのような想いのもと「湯~園地」計画というアイデアに辿り着きました。

<湯〜園地完成予想図>

<湯〜列車>

―更にムービーの最後に登場する、YouTubeで再生回数100万回を達成した場合、実際に別府市内で「湯~園地」計画を実現する別府市長野恭紘市長の公約には驚きました。

このような取り組みは世界中どこを見ても例がなく、本ムービーが世界初の“再生数連動型公約ムービー”ともなりました。

撮影のために本物の“温泉”を大量運搬。市民一丸となって作り上げたPRムービー

―このムービーの撮影ではどのような点に特にこだわられたのでしょうか?

やはり温泉都市としてPRするムービーということもあり、 “お湯”にはかなりこだわりました。実際、撮影には本物の別府温泉の温泉を使用しているんです。毎分8万リットル以上(一般家庭の浴槽換算で約450杯分相当)の温泉が湧き出る別府温泉の豊富な湯量を活かすべく、専用の温泉運搬車を用いて、源泉地から撮影場所である老舗遊園地「別府ラクテンチ」内に合計12トンを超える温泉を運搬しました。かなり大変な作業ではありましたが、地元の消防署に協力してもらい、消防用ホースを用いて遊園地内での温泉の運搬や散布を行いました。

―ムービーを制作する上で、苦労したことや特に印象に残っていることがあればお教えいただけますか。

今回、市長をはじめ、総勢150人以上の市民の方々にエキストラとしてご出演いただいたのですが、撮影前は必要な人数が集まるかどうか正直不安でした。学生や関係団体、市の職員にも声をかけ、無事に集めることができた時はホッとしました。また、市内のホテルや旅館から撮影に使用するバスタオルを快く貸していただいたことにも大変感謝しています。色々な不安もありましたが、市民の皆さんのご協力もあり、その不安を感じさせない、面白さ・楽しさの伝わる動画が出来上がったと思います。まさに市民一丸となって制作したムービーだと感じています。

<PRムービーに登場する湯〜園地>

ムービー公開直後の予想を超える反響とクラウドファウンディング活用に込められた想い

―PRムービー公開後の反響は率直にいかがでしたか?

公約の条件となっていた「100万回再生」という数字は、容易ではないものの何とか達成出来るのではないか、と考えていました。しかし、わずか3日間(72時間)であっさり達成するとは誰も想像していなかったと思います。達成した事というよりも、達成した速さに嬉しさと驚きを感じました。

―SNSではどのような声が多かったのでしょうか?

老若男女問わず、幅広い年代層から賛否両論の意見がありましたが、「実現したら絶対に行く!」「面白い企画だし、行政が企画しているのが素敵!」というポジティブな意見の方が多数見受けられました。また海外からの関心も高く、海外情報誌や新聞社からの取材も多数受けました。

―「湯~園地」実現に向けた資金集めのためにクラウドファウンディングを活用されていますが、もともと活用することは想定されていたのでしょうか?

当初より、「遊べる温泉都市構想」に関する事業には“税金を使用しない”考えでした。更に別府市だけでなく、全国の皆さんと共に「湯~園地」計画を実現していきたいという想いのもと、資金調達の方法としてクラウドファンディングを活用することに決定しました。
別府市としては、市が持っている夢と皆さんが持っている夢を一緒に叶えたい、そして行政だけよりも皆さんと一緒に作り上げた方がより面白いものができて盛り上がり、世界への発信力もより強いものになると考えています。

―実際にクラウドファウンディングを実施された結果と手応えをお教えいただけますか。

2月10日から2ヶ月間、クラウドファンディングを実施した結果、全国の皆様をはじめ、企業様、各団体様から多大なるご支援をいただき、総額約3,400万円の資金調達に成功いたしました。また経済的な支援以外にも、企業様から物品のご提供をいただくなど、様々な後押しにより、「湯~園地」計画を実現できる事を心より嬉しく、そして有難く思っています。

―最後に読者の方々へメッセージをお願いいたします。

クラウドファンディング終了後も、「湯~園地」計画のHPにて支援申込を募っておりますが、現在も支援の申込が次々と来ており、累計の支援総額も7,000万を到達しております。
この結果は、単に面白半分な期待ではなく、本当に実現してほしいとの皆さんの願いが形となって表れているのだと感じております。この期待に応えるべく、来園者の方々に「来て良かった、支援して良かった」と思っていただける様な「湯~園地」を目指して参ります。

別府市観光課 江藤慎一郎さん