Case:エイプリルフールにブランドイメージ~楽しさ~の新しい表現に挑戦したセイコーウオッチのPR

4月1日は、ウソをついても許されるエイプリルフール。最近では、ユニークな“ウソ”を企画してPRする日として、企業の広報担当者の間ではメディア露出を狙うために外せないイベントとして浸透してきています。

そんなエイプリルフールのネタとして、2017年に最も多くのWebメディアをにぎわせたのはセイコーウオッチのプレスリリース「マリーンマスター プロフェッショナルより、究極のダイバーズウオッチ『ツナ缶』を発売」でした。(4月1日時点で70件のWebパブリシティ掲載。PRリサーチ調べ)

セイコーウオッチ・エイプリルフール企画特設サイト:
https://www.seiko-design.com/afd/2017/

大成功を収めたセイコーウオッチでしたが、実はエイプリルフール向けのプレスリリースを配信したのは今回が初めてのこと。しかもエイプリルフールに向けた企画・制作は、広報宣伝部ではなく、普段はプロダクトデザインをメインに担っているデザイン統括部が主導したものだったそうです。

創業136年の歴史を誇るセイコーウオッチがエイプリルフールでの発信を決めた背景、広報宣伝部ではなくデザイン統括部が主導した理由などについて、話を聞いてきました。

もともと革新的な時計メーカー、いつしか「シニア好みの真面目なブランド」に

――セイコーウオッチの広報活動に関して、課題となっているのはどのようなことでしょうか。

広報宣伝部 鈴木真佐江課長]高級時計の世界市場において、セイコーウオッチというブランドは、まだスイスなどの高級時計ブランドを追い掛ける立場にあります。

「セイコーウオッチがトップブランドになるため、広報に求められることは何か」と考えますと、セイコーウオッチの歴史やストーリーを語ることで、お客様の感性に訴え掛けて信頼を得ていくことではないかと思うのです。

一昔前、時計には工業製品として正確であることが一番に求められました。それが今では、スマートフォンを見れば正確な時間は分かります。もはや機能性だけでは不十分で、「父親として子供に贈りたい」「恋人とペアで付けたい」といった購入者の感性に訴え掛ける要素を持つ時計でなければ、市場で受け入れられなくなってきました。

そうした観点からセイコーというブランドを見つめ直してみると、日本でも伝統のある時計メーカーであって、語るべきストーリーはたくさんあります。けれど、「シニアが好む真面目なブランド」といったイメージが定着し過ぎていて、「若者向けのブランド」というイメージを持つ人は多くないように感じます。

創業136年の歴史がある会社ではありますが、もともとは常に先頭に立って革新的な取り組みを続けてきた会社です。再び、セイコー独自の斬新な試み、面白い取り組みを伝えていくことで、若者から「面白いことをやっている会社だ」と興味を持ってもらうことが大きな課題となってきています。

自由な発想で新風を吹き込め――デザイン統括部内に「チーム風穴」を発足

――デザイン統括部としてもそうした課題に向き合うため、部の中に「チーム風穴」を立ち上げたと伺いました。

[デザイン統括部 丸山哲朗氏]一昔前のデザイナーは、「時計の形状や配色をどうするか」といったプロダクトデザインに専念していればそれで十分でした。ですが、先ほど鈴木が申しましたように、今は時計としての機能性や審美性を超えて、ブランドの歴史やストーリー、ヴィジョンを伝えることが重視される時代になりました。

われわれデザイナーにも、通常の業務範囲の中では直接解決しにくいそれらの課題に対しても、組織の役割にとらわれず自主的に取り組むことが求められるようになってきています。

そこで2016年に、「既成概念にとらわれず、自由な発想でセイコーブランドに新風を吹き込む」という目的のもと、デザイン統括部の中の開発担当を「チーム風穴」と名付け、活動を始めました。

このチームは、アドバタイジング(ブランド訴求)、アドバンス(次世代に向けた先行開発)、アカデミック(学術的な基礎研究)、アシスト(外装要素の開発支援)という全て“A”から始まる4つのチームから構成されています。実は、風穴(KAZAANA)のアルファベットには、これらのチームを表した“A”が4つ含まれているんです。

エイプリルフール向けのネタを企画。8案から「ツナ缶」に絞り込む

――ダイバーズウオッチの本体にツナを詰め込んだという「ツナ缶」のネタをエイプリルフール向けに企画したのは、チーム風穴の中の1チームなんですね。

[デザイン統括部 檜林勇吾氏]はい、私たちアドバタイジングチームが企画・提案・制作しました。

チームとしての目標は、セイコーウオッチの「真面目」というイメージを変えること。「面白いことをやる企業」「ワクワクすることを提供する企業」というブランドイメージを持ってもらうためにはどうすればいいかとチーム発足後、まずは自由に話し合ってみました。

「デザイン展などのイベントで斬新な展示をしてみよう」「ユニークなノベルティ(販促品)を作ってみてはどうだろうか」といったアイデアが出てきた中で、「エイプリルフールに向けて発信しよう」という意見にまとまりました。エイプリルフールなら、若者も注目するイベントですし、時計に興味がない人とも接点を持てます。チーム目標をかなえるために、これ以上ない機会になると考えました。

それからどんなネタを用意するかとチーム内で案を出し合って議論した結果、「有名人のパロディ」「食べられる時計」「ブランドを戦隊モノに見立てる」など、「ツナ缶」を含めた有力候補8案に絞り込みました。

これまでチームで話し合ってきた選りすぐりの企画だったので、どれも思い入れがあります。そこで、できるだけ多くの人に「面白い」と思ってもらえる企画を採用したかったこともあり、他部門のメンバーを集めて「どの企画に興味があるか」というアンケートも実施しました。

その結果、「直感的に分かりやすい」「プロダクトブランドを生かせている」「セイコーらしい真面目さがありながら面白い」といった理由から、性別・年代を問わず幅広い層の支持を集めた「ツナ缶」の企画を最有力候補とすることに決めたのです。

エイプリルフールの成功が「ここまでやってもいいのか」と社員の意識を変えるか

――そして4月1日にプレスリリースしたわけですが、2017年のエイプリルフール企画として、「ツナ缶」は最も多くのWebメディアで記事として取り上げられることになりました。
チーム目標は「『真面目』というイメージを変える」ということでしたが、社内外で何か変化は生まれていると思いますか?

[檜林氏]弊社がエイプリルフールニュースを発信すること自体、多くの社員にとっては驚きだったようです。

エイプリルフール企画のことを知って、「がんばって」「ぜひやってください」と社内から応援してもらえたことが何より励みになりました。「時代に合わせてセイコーのイメージを変えていきたい」と感じていることが伝わってきました。

役員に「こんな企画をやりたい!」と提案したときにも、私たちの思いに賛同してもらえました。役員からも「実際の商品を訴求することにもつながる。プロモーションに役立つだろう」ということで「ツナ缶」に対してお墨付きを得られましたので、その後の推進や社内調整がやりやすくなりました。

エイプリルフール企画が成功したことで、「ここまで思い切ったことをやってもいいのか」と感じた社員は多いはずです。この成功が「新風を吹き込む」きっかけになることを期待しています。

『セイコーウオッチの「ツナ缶」、2017年エイプリルフールでNo.1露出を果たした企画に込めたこだわり』
セイコーウオッチの事例の詳細は、こちらからどうぞ!(AdGangを運営するPR TIMESの事例ページに遷移します)