6月3日(土)ラジオ局・J-WAVEと筑波大学の共催で行われた「J-WAVE INNOVATION WORLD FESTA 2017 Supported by CHINTAI」(通称:イノフェス)。「テクノロジーと音楽の祭典」をテーマに、様々なアーティスト・クリエイター・企業が揃い、ライブパフォーマンスやトークセッション、展示などを行った。

当サイトではテクノロジーやクリエイティブを生業とするビジネスパーソンにとって、新たなビジネスのヒントになるセッションを一部レポートする。[AdGangの運営会社であるPR TIMESはJ-WAVEのイノベーター発掘プログラム「INNOVATION WORLD」との連動を先日発表している]

今回は「2020へ向けて!世界へ発信する日本のエンターテインメントとテクノロジー」の模様をお届けする。このセッションは「デジタルネイチャー」を提唱し、筑波大での研究や数々のメディアアートを手がける筑波大助教・メディアアーティスト 落合陽一氏、この日もライブパフォーマンスを披露したきゃりーぱみゅぱみゅなど数々のアーティストを世界へ送り出すアソビシステム代表 中川悠介氏、電波少年”T部長”でおなじみ、今年はVRを活用したドラマ「ゴースト刑事」も発表した日本テレビ 日テレラボ シニアクリエイター 土屋敏男氏、モデレーターとしてジャーナリスト田原総一朗氏が登壇。

“下降ボーナス”のある今がチャンス

モデレーター田原氏から、セッションの冒頭で投げかけれた質問は「2020年には、どんなことをしていたいか」という点。

落合氏は「2020年まであと3年、今出来ることしかもう出来ない」という前提の上、新たに一から開発するよりは”人が動いたこと”ベースで何が出来るか、何を組み込んでいけるかということに力を入れていくべきと語った。一例として挙げたのは落合氏が今年4月〜5月にヤフーのオフィス内で開催した「ジャパニーズテクニウム展」。東京の中ではオフィスの中など展示出来る場所がたくさんあるが、アーティストがそのような場所で展示する文化がない、という点が課題意識としてあったそうだ。

またAIについて落合氏はこう語る。「日本のAIは5周遅れぐらい。第一にお金の桁が5桁ぐらい違うというのがありまして。ただ、彼ら(研究が進んでいる国)にとっても朝起きてから出社して、コンビニに寄って、オフィスについて、夜レストランに寄って帰るという体験を、全てAIで作りきったわけではないので。その分僕らの国は一声かけたらまとまるのが楽なので、全部の会社が連携しデータを相互的にやりとりして日常生活を支えるAIも作れると思います。」また落合氏は「今がチャンス。人口が減っている国が率先してやらないと。”下降ボーナス”と呼んでいるのですが、今は”人がいなくなるからそこに機会をはめたらいいでしょ”というロジックが成立するんですよ。このタイミングであらゆるインフラをAIベースにしないといけない」とも語った。

「2020年は意識するポイントではあるけれど、ゴールではない」と捉えているという中川氏。個々では国外で評価されるアーティストもいるものの「エンタメ業界がまとまって世界に出るという点はまだ弱いのかなと。単体だけではなく、みんなでまとまって市場をつくっていく必要があるのかなと思っています」と語った。業界内のみならず違うジャンルの方との交流も大事にし、どんどん「くっつけて世界に持っていきたい」という思いがあるという。また(キーワードとして)言えば何か始まる、というような漠然としたものではなく、2020年にどうなっていたいか、そしてコツコツした現場での取り組みこそが大事だと語っている。

2020年に向けて”アンチ忖度”"テクノロジーという言葉の捉え方”

電波少年のヒッチハイク企画が、ソニーのHi8ビデオカメラというコンパクトなカメラの出現により実現したという点に触れた土屋氏。「新しいテクノロジーが生まれると、新しい演出が出来る。VRやAIが出始めているのをまだテレビが使いきれていないので、そこから新しいエンタメを生み出したい」と語った。また他に取り組みたいこととしてはシニア層とテクノロジーをつなぐことや、1964年の東京をテクノロジーによって再構築することを挙げた。

土屋氏は電波少年での数々の企画はいわば忖度せずにやってきたからこそ、今は「これをやっちゃダメなんじゃないか」と思いなかなか新しいものは生まれない、いわば”アンチ忖度”の時代という旗印を掲げてやらないと、と語る。中川氏はそんな現代の課題としては、仕掛ける側の思いがなかなか伝わらないことが多いと感じているそうで「きゃりー(ぱみゅぱみゅ)というアーティストがいて、周りの人がいて、売りたい、届けたいという思いがあるからうまくいく」という想いの部分の重要性を伝えていた。現在話題のテレビ朝日のドラマ『やすらぎの郷』の倉本聰氏の想いを例に、熱い気持ちがあるからこそ伝わる、そして(広がる)ツールはあるからこそ熱量あるものが伸びていくと賛同。落合氏は「批判だけして改善策を出さない癖が日本にはある」という点を指摘。また、これからは”戦艦大和”を作るのではなく”ゼロ戦”のように細かいイノベーションをやっていくフェーズであるべき、とも述べた。

イベントの終盤、印象的だったのは落合氏による「イノベーション」という捉え方についての発言だった。「イノベーションというのは技術革新ではないんですよ。技術革新ももちろんやるんですけど、新しい貨幣を発行することも、新しい市場をつくることもイノベーション。日本にとってイノベーションって、0 to 1と言っちゃうんですけど、1 to 100がイノベーションなんですよ。例えばスマホはあらゆるところに技術革新をもたらしてはないけれど、あらゆる人を繋げて新しいビジネスをたくさん作ったわけです。」つまり「当たり前のことを当たり前に突き進めることがイノベーション」と捉えるということだ。この後も時間さえあればセッションは盛り上がり間違いなしだったが、ここでタイムアップ。様々なジャンルの垣根を超えエキスパートが集う「イノフェス」らしい、熱気のあるセッションとなった。

写真提供:J-WAVE