Case: 日清食品×スクウェア・エニックス『CUP NOODLE XV』『カップヌードル FINAL FANTASY BOSS COLLECTION』

話題になった、または今後話題になるであろう日本国内の広告・クリエイティブの事例の裏側を、案件を担当した方へのインタビューを通して明らかにしていく連載「BEHIND THE BUZZ」。
今回は、日清食品とスクウェア・エニックスのコラボレーション企画「CUP NOODLE XV」、「カップヌードル FINAL FANTASY BOSS COLLECTION」を取り上げます。2016年11月29日、ゲームファン待望の最新作、『FINAL FANTASY XV』がスクウェア・エニックスより発売となり、約7年ぶりの新作をさらに多くのユーザーに広めたいというスクウェア・エニックスの思いから始まった今回のコラボ企画。常識では考えられないような“コラCM”はSNS上でも大きな話題となり、カップヌードルを使った二次創作も流行しました。

全く異なる世界観を持っているカップヌードルとファイナルファンタジーのコラボ企画がここまでの成功を収めた裏側には、2社間のどのようなやりとりがあったのでしょうか。企画が立ち上がった経緯から、「CUP NOODLE XV」CMの制作秘話、その後の新たな展開まで、株式会社電通 コミュニケーション・プランナー 加我俊介さんにお話を伺いました。

Interview & Text : まきだ まどか

FINAL FANTASY XV内にカップヌードルが登場!?

―日清食品とスクウェア・エニックスがコラボレーションに至った経緯について教えてください。

加我:2016年秋に発売された最新作『FINAL FANTASY XV』(以下、FFXV)内に日清食品のカップヌードルが登場したことが今回の企画の発端です。
「FF」と言えばその名の通りファンタジー要素に満ちた世界が魅力的なシリーズですが、今回のFFXVは、リアルな体験を追求して現実世界の要素を取り入れているため、ゲームや映像作品内にカップヌードルやアウディの自動車などが登場しているんです。カップヌードルの販売車が出てきたり、キャラクターがキャンプ等で食べる食事アイテムのひとつとしてカップヌードルが登場します。具材をカスタマイズできる仕様にもなっているんです。


―FFXV内に登場するアイテムとして、カップヌードルが選ばれた理由は何ですか。

加我:FFXV開発チームの皆さんが、もともとカップヌードルを好きだったそうです。加えて、FFはロールプレイングゲームの冒険ものなので、モバイル性が高いカップヌードルはゲーム内に登場させるのに相性がよかったんだと思います。
スクウェア・エニックスさんから日清食品さんへゲームの中でカップヌードルを登場させたいとオファーをしたそうです。そういった商品プレースメントを通して、日清食品さんとスクウェア・エニックスさんのつながりがすでにできていた中で、今回の企画が始まりました。

カップヌードルによるFFXV公式“クソコラ”CM


―加我さんは、今回の企画でどういった役割を担っていたんですか。

加我:私自身は、FFXV自体の発売プロモーションを担当させていただいていました。スクウェア・エニックスさんに既存ファン以外にもFFXVの情報を届けたいという想いがあり、企画したのが今回のコラボCMだったんです。
ゲーム内にカップヌードルが登場しているので、タイアップして話題にするのがおもしろいのではという話になり、日清食品さんに話を持っていったところ、すでに2社間で関係性ができていたので、スムーズに話が進みました。

FFXV公式コラCM『CUP NOODLE XV Special Edition』(30秒)


―どんな内容のCMになったのですか。

加我:いわゆる「クソコラ」CMです。ゲームファンの間では、“MOD”というゲームエンジンをいじって、映像を改造して遊ぶゲームカルチャーがあります。ゲーム内に登場するキャラクターなどを他のものに差し替える遊びです。
それを応用し、FFXVのCMを改造してカップヌードルのCMを作りました。巨大なカップヌードルが登場したり、主人公がカップヌードルの被り物をしていたり、エビ、たまごなどの具材が登場したり、FFXVのCMをコラージュして遊んでいます。


―CMの話題化のため、特に意識したポイントはありますか。

加我:両者の世界観のギャップがバズにつながったひとつのポイントだと思います。「何これ!?」と思わせるギャップを意図的に作り出すことを意識しました。あえて無理やり入れ込んでいる感じを大事にし、カップヌードルがいたずらをした、何か事件を起こしたという雰囲気作りを重要視しました。FFXVのCMを流したすぐ後にカップヌードルのCMを流すという打ち方も、インパクトを強めることにつながったと思います。


―本来、ゲーム会社であれば、映像を改造されて公開されることを容認しないイメージがあります。映像を改造して遊ぶMODカルチャーをスクウェア・エニックスは受け入れているんですね。

加我:このCMが実現できたのは、スクウェア・エニックスさんがゲームカルチャーを理解して受け入れており、かつ、FFXVを広めることを第一義に考えていたからです。
当初は、提案を受け入れてもらえるかも分からない状況でした。恐る恐る今回の企画をスクウェア・エニックスさんへ提案したところ、「おもしろいからうちが作る」とまでいってくれたんです。私たちのチーム内では、よく企画が通ったなと話していたくらいです。

FFXV開発チーム自ら“コラCM”を制作


―CMの制作はどのように進んだのですか。

加我:CM制作は、FFXVのゲーム開発チームが行いました。通常の作り方だと、スクウェア・エニックスさんから素材を提供いただき、我々の方でCMの編集作業をすることになりますが、今回は、FFXVのゲーム開発チームにCMを制作してもらいました。広告業界ではすごく珍しい制作体制だと思います。


―2社がお互いに協力し合っていて、両社にメリットのある純粋なコラボレーションという感じがしますね。

加我:スクウェア・エニックスさんのゲーム開発チームがCMを制作し、それを基に、日清食品さんがPRやプロモーションを仕掛ける。両社の理想的な関係性があったからこそ実現したコラボ企画だったと思います。


―どれくらいの反響があったのでしょうか。

加我:2016年の11月、カップヌードルの差し入れを持って行った様子とともに、両社のご近所付き合いから生まれたというコンテクストの下、カップヌードルのツイッターアカウントでCM制作発表のツイートをしてもらいました。瞬く間に5万リツイートされ、その後の年末のCM公開時のツイートでは、数時間で約12万リツイートを記録しました。日清食品さんのツイッターはバズることで有名ですが、これまでのリツイート記録を更新したそうです。

リアルタイム検索、YouTube急上昇ランキングも1位になり、LINEニュースやYahoo!ニュースにも掲載されました。動画の再生回数は、3~4日で260万回。TVCM自体は計7本回しか放映していませんが、SNS上で話題になり、再生回数がここまで伸びました。

二次創作によってユーザーが勝手に宣伝してくれる


―今回のキャンペーンを通して、SNSではユーザーからどんな反応がありましたか。

加我:カップヌードルの写真をツイッターにアップするのが流行りました。FFXVに出てくるカップヌードルをシェアする/再現するユーザーがたくさん出てきたんです。
うれしかったのが、CMが話題になったことで、みんながカップヌードルを食べたくなっているということでした。話題化が食欲喚起につながった珍しい事例です。


―CMをきっかけに、ユーザー自身がカップヌードルを宣伝してくれているんですね。

加我:通常は、おもしろい動画を見たとしても、「おもしろかった」と感想をいうだけで終わることが多いと思います。今回の事例は、その一歩先の二次創作につながっているので、盛り上がりを分かりやすく可視化できたのだと思います。企画の段階から、二次創作にまでつなげるという点は意識していました。
結果として、ゲームをやりながらカップヌードルを食べようという文脈を作ることができ、スクウェア・エニックスさんにも、日清食品さんにもメリットのあるキャンペーンになりました。

話題化だけで終わらせない!コラボ商品開発へ


―このCMが次の商品開発につながっていくんですね。

加我: CUP NOODLE XVのいい流れをそのまま引き継いで何かできないかと思案していたところ、コラボ商品開発をしようという話になりました。カップヌードルは、いろんなコンテンツと組んで商品開発をしており、FFとも商品開発をしたいということで、話が進展しました。
2017年で30周年を迎えるFFシリーズ自体とコラボし、「空腹は最強の敵だ」というコンセプトで「カップヌードル FINAL FANTASY BOSS COLLECTION」を企画しました。歴代のボスキャラ15体がパッケージに描かれた限定仕様のカップヌードル15食セットです。


―ボスキャラをパッケージにしたのはどういった意図があったのですか。

加我:主人公たちがきれいに並んでいるのでは、カップヌードルらしくありません。カップヌードルの文脈の中にFFを持ってくるなら、どんな見せ方がいいのかを考えました。「空腹は最強の敵だ」というコンセプトワードがコピーライターの井戸正和さんから出てきて、「最強の敵」であるボスキャラをパッケージにしようという方向で決まりました。

私たちがFFXVのお仕事を担当させていただいていることもあり、どんな素材ならご提供いただけるかをなんとなくイメージできていたのもよかったのだと思います。


―商品開発は、日清食品さんからスクウェア・エニックスさんへの提案だったんですね。

加我:コラボCMはスクウェア・エニックスさんから日清食品さんへの提案、コラボ商品は日清食品さんからスクウェア・エニックスさんへの提案という流れです。お互いにメリットのある企業コラボになりました。2社のつながりを活かし、商品開発によってタイアップがさらにスケールアップする流れを作ることができました。


―今回のようなコラボはありそうでなかなかないですよね。

クライアントが2社になるので、両社が同じ目線でゴールを決めることができなければ、うまく進行しません。日清食品さんとスクウェア・エニックスさんは、両社とも、常に生活者目線で話題になりそうか否かを判断基準にされていたので、それまでは実現が難しかったことも実現可能になり、大きな反響を呼ぶことができたのだと思います。

代理店である私たちが間に入り、クライアント同士をつなぐことができた成功事例となりました。ちなみに、「カップヌードル FINAL FANTASY BOSS COLLECTION」は絶賛発売中なので、ぜひこの機会にお買い求め下さい!

株式会社電通 コミュニケーション・プランナー 加我俊介さん