Case: ANA X株式会社『ANA Phone』

話題になった、または今後話題になるであろう日本国内の広告・クリエイティブの事例の裏側を、案件を担当した方へのインタビューを通して明らかにしていく連載「BEHIND THE BUZZ」。

今回は、ANA X株式会社が、2016年12月2日にスタートした携帯電話サービス『ANA Phone(エーエヌエーフォン)』を取り上げます。ANA Phoneは、料金プランやフライトの回数に応じ、2年間で最大34,400マイルが貯まる、スマートフォン。端末自体にも、旅に出かけたくなるホーム画面やウィジェットが標準搭載されており、飛行機好きにはたまらない仕様が魅力です。

航空会社であるANAが、携帯電話サービスを手がけるその意図にはどんな思いが込められているのでしょう。サービス提供のいきさつや、ANA Phoneを通して描くANAの展望を、ANAの会員プログラム「ANAマイレージクラブ」を運営するANA X株式会社 顧客戦略部 企画チーム アシスタントマネージャー 樋口義洋さん、同 企画チーム エグゼクティブ 川原千明さんに伺いました。

Interview & Text : 香川 妙美

スマホはお客様との究極の接点

—まずは、ANA Phoneの提供にいたったいきさつをお聞かせください。

樋口:ANAグループは、お客様の生涯にわたって関係性を築いていくことを目指しています。航空券をご購入いただく都度のコミュニケーションに限らず、日常の接点を増やしていくことでお客様との関係をより確かなものにするためにスマートフォンでのサービスに力を入れています。例えば、アプリケーションや月額課金サービスなど徐々にタッチポイントを広げています。そのような中、ソフトバンクさんとのご縁があり、今回のANA Phoneの構想が浮かんできました。ANA Phoneの開発にあたっては、仕様やデザインを含め、ソフトバンクさんに全面的に携わっていただき、両者ともに思い入れの強いプロダクトになったと感じています。

川原:スマホはもはや、わたしたちの生活において切っても切れない存在になりつつあります。お客様との関係性を構築するうえでも非常に強力なツールであり、スマホ自体をANAオリジナルカスタマイズにすることで、当社とお客様とのあいだに究極の接点をつくれたらと考えたのです。
ANA Phoneをお使いいただきながらマイルが貯められ、次のフライトにつながるというサイクルにより、旅が身近になるライフスタイルをご提案したいと思っています。

—ANA Phoneの特長やこだわりを聞かせてください。

樋口:基本設計は、『マイルが貯まるスマートフォン』ですが、端末自体にANAの世界観を盛り込むことで、付加価値を出したいと考えました。たとえばオリジナルのホーム画面は、機内の窓から外を見るというコンセプトのもとデザインしています。この構図は、お客様が「これから旅に出る」という気持ちを高められる印象的なショットですので特にこだわり、背景も時間の経過に合わせて、青空が夕暮れに、夕暮れが夜空に、というようにライブ感を出しました。このホーム画面を見るたびに旅へのモチベーションを高めていただけるとうれしいです。

川原:このほか、フライトの予約ができる「ANA」アプリに加え、「ANAマイレージクラブ」アプリがプリインストールされています。こちらでは、積算マイルの確認等ができるほか、マイルが貯まるショッピングやグルメ予約の導線が用意されております。フライトだけではなく、日常的にマイルを貯めるきっかけとしてお使いいただくことを想定しています。

—マイルが貯まる仕組みを教えてください。

樋口:スマホの契約プランに応じてもらえる「月々マイル」と、フライト時に獲得できる通常マイルに加えて付与される「搭乗ボーナスマイル」をご用意しています。ANA Phoneのご利用にあたり、どのくらいのボリュームでマイルをお渡しするのかは、貯まり方も含めてどういう方式が良いのかを何度も検討を重ねました。

今回最大で貯めていただけるマイル数は、人気の路線である沖縄にペアでご利用いただくことができ、さらにお持ちのマイルを少し追加したらハワイに行くこともできるなど、お客様が特典航空券をご利用いただくことをイメージし、お客様の期待に応えられるように設定しました。

自社メディアを活用し、ANAマイレージクラブ会員にリーチ

—ローンチにあたって、どのような広告展開や広報活動をされたのでしょうか。

樋口:宣伝を担当している部署とも協力し、自社メディアでの告知を積極的に実施しました。例えばTwitterなど自社SNSへの投稿や、ANAの機内誌「翼の王国」、プレミアムメンバー向けの会員誌「ana-logue(エーエヌエーローグ)」といった紙媒体、ANAマイレージクラブ会員向けのメールマガジン、自社のウェブサイト「ANAウェブサイト」など、様々なチャネルを使うことで、効果の最大化を図りました。

広報活動については、共同でプレスリリースを配信したので、両社のリレーションを活用しながら多くのメディアに取り上げていただきました。

—販売状況はいかがでしょうか。

樋口:サービス開始にあたり、ANAマイレージクラブ会員の皆様からは、「ぜひ欲しい」「マイルがもっと貯まるようになる」などの声をもってお迎えいただき、出足も好調です。販売台数も当初の計画を上回る実績が出ています。

川原:ANA Phoneは当初、ポイントに対して関心の高いお客様を想定していたのですが、ふたを開けてみればANAファンのお客様の反応が大きく、端末にもその傾向が出ています。

今回のANA Phoneは、『Xperia XZ』で提供しているのですが、こちらの機種は4カラーで展開されています。一般的には4カラーがだいたい均等に購入されているそうですが、ANA Phoneは、ANAのコーポレートカラーと同じフォレストブルーの購入比率が非常に高く、こういった面からもファンの方にご購入いただけていることがうかがえ、手ごたえを感じています。

—今後についてお聞かせください。

川原:一定以上のマイルが貯まると航空券に換えられる仕組みは、他のポイントシステムと比べても十分なアドバンテージがあると思っています。日常で貯められるポイントはどんどん増えているものの、シーンによって使い分けている方がまだまだ多くいらっしゃいますので、スマートフォンをはじめ、全てがANAのマイルにつながる世界をつくることが最終的な目標です。

当社は1997年にマイレージプログラムを導入し、長きにわたりお客様との絆を大切に育ててきました。また、空港や機内というリアルな接点を強みとして生かしながら、お客様と向き合うマーケティングに関しては、一朝一夕では培うことのできないノウハウと自信を持っています。これからはエアラインの域に留まらず、様々なパートナー企業と共に新しい価値創造を提供していきたいです。

樋口: ANA Phoneは、お客様に近づきたい一心でスタートしましたが、お客様に意外性を持って受け止めていただけたことにより、「次は何と組むのだろう」という期待感を醸成できたと思っていますし、私たちにとっても、次は何をすればお客様の満足度を高められるのかを探す機会につながっています。今後も他社さんとの協業を通してお客様に驚きを提供するとともに、よりマイルを貯めたいと思っていただけるよう、次の一手に向けて励んでいきたいと思っています。

写真右:ANA X株式会社 顧客戦略部 企画チーム アシスタントマネージャー 樋口義洋さん(右)
写真左:ANA X株式会社 顧客戦略部 企画チーム エグゼクティブ 川原千明さん(左)