Case: 大塚製薬 ポカリスエット「ポカリガチダンス選手権」

話題になった、または今後話題になるであろう日本国内の広告・クリエイティブの事例の裏側を、案件を担当した方へのインタビューを通して明らかにしていく連載「BEHIND THE BUZZ」。

今回は、ポカリスエットのTVCM用のダンス動画をMixChannel上で一般公募したキャンペーン「ポカリガチダンス選手権」について取り上げます。企画の経緯から、ダンスのクオリティへのこだわり、MixChannel上でキャンペーンを盛り上げるための施策、そして予想を越えるユーザーからの反響まで、大塚製薬株式会社宣伝部 課長の上野隆信さんと株式会社電通 クリエーティブ・ディレクターの眞鍋亮平さん、そして株式会社電通デジタル アカウント・プランナーの山手渉さんにお話を伺いました。

Interview & Text : 坂巻 渚

ユーザーの声から生まれたダンス投稿コンテスト『ポカリガチダンス選手権』

<応募作品で作られたTVCM「ポカリガチダンス ありがとう」篇>

—まず、今回のキャンペーン実施の経緯をお教えいただけますか。

上野:もともとポカリスエットの既存顧客は30代、40代がメインだったので、もっと次世代のユーザーを開拓していきたいと思ったのが始まりです。昨年から若い世代へのアプローチを始め、今年は10代向けの施策として、八木莉可子さん主演のTVCM「エール」篇、「サンクス」篇の2本を春からスタートしました。このCMが嬉しいことに予想を越える大反響をいただくことができましたし、一般の方や、学校の先生からも、「ダンスの振り付けを教えてほしい。」「運動会でぜひこのダンスを踊りたい。」など沢山のお声をいただき、今回のダンスコンテストという企画に辿り着きました。

眞鍋:またユーザーとのコミュニケーションを大切にするために、コンテスト終了後には、参加者の方に“ありがとう”の気持ちも込め、マス広告のクリエーティブチームと僕たちデジタル広告チームが連携して応募作品を使用したTVCMを作ろうということにもなりました。

—一般の方のダンス動画をTVCMに起用するとなると、応募作品の質を上げることにもこだわられたのではないですか?

眞鍋:はい、ダンスのクオリティにはかなりこだわりました。MixChannelでは、“誰でも踊れる”という文脈で、これまでにいくつか簡単な振り付けのダンスコンテストが行われていたのですが、「ポカリガチダンス選手権」では、敢えてこれまでのコンテストとは真逆の戦略を取り、“難易度の高いダンス”を課題にしようということになりました。キャンペーンのコピーでもある「自分は、きっと想像以上だ。」、「潜在能力をひき出せ。」というメッセージがまさにピッタリの内容で、コンテスト名も「“ガチ”ダンス選手権」と敢えてダンスの難しさを強調するネーミングにしました。

ただ、正直、ダンスの難易度が高い上に、応募期間もたった1週間と非常にハードルの高いコンテストだったので、応募が集まるか不安な気持ちもありました。しかし、この難易度の高さが、結果的にはユーザーの挑戦心を掻き立て、コンテストを大きく盛り上げてくれたと感じています。

上野:提案を聞いた時は、こんなに難しいダンスをみんな踊ることができるのかドキドキしました(笑)ただ、CM主演の八木さんも、実は始めは全くダンスを踊れなかったんです。オーディションでもソーラン節を踊っていたくらいです(笑)ただ収録までの1ヶ月間半、本気で練習した結果、本番では見事なダンスを披露してくれたので、そのこともあり今回のコンテストも何とかなるのではないかとは感じました。八木さん自身が最初に「潜在能力をひき出せ。」のスローガンを体現し、この企画に勢いをつけてくれたような気もします。

眞鍋:数を集めるために、ダンスの難易度を下げた方がいいという意見も出ましたが、そこは譲れないという気持ちがありました。上野さんにも最初から「数ではなくて質を優先」ということにご納得いただいていたので、今回の挑戦ができたと思っています。

<CMカット画像(八木莉可子さん)>

<「ポカリガチダンス選手権」告知バナー>

再生回数は68.5万回!インフルエンサーの「お手本動画」が伝えた「動画のこだわりポイント」

—参加のハードルが高いとなると、コンテストを盛り上げるためにはどのような工夫をされたのですか?

山手:1つはMixChannel内のダンスが得意なインフルエンサーの方々に、今回のダンスの「お手本動画」を作ってもらい、応募開始に先駆けてMixChannel上にアップしてもらいました。

眞鍋:今回お願いしたインフルエンサーの方の一組は「STYLE」という女性3人組のダンスグループで、実際にコンテストに応募する要領でダンスを踊り、撮影してもらいました。「楽しくかつ本気で踊る」こと、そして「面白いシチュエーションで撮影する」こと、この2点について依頼しました。撮影場所が教室やダンススタジオに偏ってしまうと、CM化した時も面白みに欠けてしまうので、参加者の個性を活かした色々なバリエーションの動画がほしかったんです。お手本動画のおかげで、シチュエーションや衣装など、参加者のこだわりの詰まった作品を沢山集めることができました。

<STYLEさんのお手本動画カット>

山手:あとすごかったのは、STYLEさんをはじめとするインフルエンサーの拡散力です。お手本動画はMixChannel内だけでも、再生回数68.5万回と脅威的なスピードで閲覧されました。また動画には200件を超えるコメントも寄せられ、「ダンスやってみます!撮影場所はどこですか?」「やってみたけど、なかなか難しい…」など、コンテストに興味のある人たちがうまく情報交換できるようになっていたのもよかったです。

あとはコンテストを盛り上げる工夫として、MixChannelに掲載したバナーに、「MixChannelの皆さま」という文言を入れるなど、できるだけユーザーさんの心に響くクリエイティブ作りを意識しました。

眞鍋:コピーライターやアートディレクターもMixChannelユーザーが使いそうな言葉を多く取り入れるなど、言葉の使い方や世界観にかなりこだわっていました。みんなの居場所に居させてもらっているプロジェクトなので、出来るだけその世界に溶け込むようなクリエイティブを意識していました。

—投稿されたダンス動画に対して、SNS上での反響はいかがでしたか?

上野:まず、投稿者ご自身が、ダンス動画を投稿した後に、Twitterで友人にシェアしたり、YouTubeにアップするなど、できるだけ多くの人に動画を見てもらうように努力していたのが印象的でした。

山手:MixChannelのカテゴリ上位にしっかりと再生回数の多い作品が並んでいたこともあって、それが投稿者にシェアを促すいい影響を及ぼしてくれていた気もします。

またダンサーとしてコンテストに参加はしないものの、動画を見て楽しんでいる方々のコメントやシェアもかなり盛り上がっていました。コメントの8割くらいは10代なのですが、意外と20代、30代の投稿も多かったですね。「青春って素敵!」「眩しすぎる!」など、昔を懐かしむような内容が目立ちました(笑)あと、投稿者のお母様方のパワーはすごかったです。「娘が頑張っているので、応援してください!」とご自身のSNSで動画を拡散している方が結構いらっしゃいました。
質を追い求めた結果、数字も大幅達成!たった1週間で集まった作品は600件以上

—最終的に応募作品はどれくらい集まったのですか?

山手:最終的には600件を越える作品が集まりました。最低でも100件以上という目標を立てていたので、1番最初にこの数字を聞いた時は、正直かなりホッとしました(笑)

眞鍋:ミニマムでも100件はないと、そもそもCMが作りにくいんですよね。質を追い求めた結果、数字も大幅に想定を超えることができたのは本当に嬉しかったですね。また投稿動画の総再生回数も380万回以上という数字を記録することができました。

山手:ダンスのハードルが高かったにも関わらず、他のダンスコンテストと同じくらいの応募数を達成し、募集期間に関しては、わずか1週間でこの数字を達成できたのは本当に嬉しいですね。

また今回応募で特徴的だったのが投稿数の推移です。想定ではコンテストの開始から2〜3日で応募の8割程を占めると思っていたのですが、今回は最終日に向けて右肩上がりに応募が伸びていました。あとは、1ユーザー当たりの複数回投稿が目立ったのも今回の特徴でした。このことから、参加者の皆さんが短い期間内に練習を重ね、できるだけいい作品を投稿しようとしてくれていることが伝わりました。

—実際に投稿作品をご覧になって、予想と比べていかがでしたか?

眞鍋:想定を超えるクオリティとバリエーションが予想以上に集まったので、非常に満足のいく結果になりました。

山手:受賞作の選考は10名程のメンバーで行い、応募された600本以上の動画を全て見たのですが、アプローチが多種多様で、選考していても非常に楽しかったです。準優勝の作品についてはカメラワークがすごすぎて、「中学生が撮影しているなら天才だよ!」と、みんなで圧倒されていました(笑)

眞鍋:選考では、「ダンスのクオリティ」と「ユニークさ」を特に重視し、結果発表のページではそれぞれの作品に寸評も付けています。

<優勝したDoubleDさんのダンス動画カット>

<MixChannel上の結果発表画面>

—TVCMで使用する作品の応募者はきっとCMの放送日が待ち切れないですよね。

山手:実は今回のCMについては、どの作品が使われているか事前に公表していないんです。受賞作品10作品はCMに使用しているのですが、それ以外の作品もできる限りCMに入れたので、当日放送を見てビックリされた方も多いと思います。

上野:既に9月19日の「MUSIC STATION」で60秒CMを流し、YouTube上にもアップしていますが、CMに起用された皆さんの嬉しそうな反応がSNSでも多々見受けられました。また10月2日の『DASHでイッテQ!行列のできるしゃべくり日テレ系人気番組NO.1決定戦 2016秋』、9日、16日、23日の『ザ!鉄腕!DASH!!(日曜日 19:00〜19:58)』と4回に渡り、毎回異なる切り口でまとめられた30秒CMをで放送しています。そこでもまたSNS上での反応が非常に楽しみです。

—今回のコンテストには、ユーザーさん自らがSNSでシェアしたくなるようなポイントが沢山含まれているんですね。

山手:そうですね。オフラインとオンラインを上手く交互に使えたことが、今回のプロモーションの大きな特色になった気がしています。TVCMというマスから始まり、CMに対する声を受けてオンラインでは「ポカリガチダンス選手権」を実施し、それをまたTVCMとして放送するなど、ユーザーさんとのコミュニケーションに手応えを感じています。

—今後の展開について一言いただけますか?

上野:これまではTVCMや交通広告など単発で終わっていた所が、今年はユーザーの方々を巻き込んだ立体的なプロモーションを実施することができました。まだ始まったばかりなので、今回得たノウハウをしっかり活かし、引き続きユーザーの方々とのコミュニケーションを大切にしながら、いつも傍らにはポカリスエットがある、そんな存在にポカリスエットがなることを目指して頑張っていきたいと思います。

大塚製薬株式会社宣伝部 課長 上野隆信さん(中央)
株式会社電通 クリエーティブ・ディレクター 眞鍋亮平さん(左)
株式会社電通デジタル アカウント・プランナー 山手渉さん(右)