Case: 有楽製菓株式会社「義理チョコショップ」

話題になった、または今後話題になるであろう日本国内の広告・クリエイティブの事例の裏側を、案件を担当した方へのインタビューを通して明らかにしていく連載「BEHIND THE BUZZ」。

今回は、有楽製菓株式会社の『義理チョコショップ』を取り上げます。同社の主力商品であるチョコレート菓子『ブラックサンダー』で、バレンタインの名脇役“義理チョコ”を応援しようと始まった本施策。2014年より毎年、『東京おかしランド』に期間限定ショップをオープンし、義理チョコ文化を応援しています。本ショップを始めた背景やねらい・思いを、有楽製菓株式会社 マーケティング部 マーケティング課 主任 山﨑美沙さんに伺いました。

Interview & Text : 香川 妙美

バレンタインの波に乗れない『ブラックサンダー』と、陰りのある義理チョコを組み合わせたら

―『義理チョコショップ』がスタートした背景を教えてください。

当社の主力商品である『ブラックサンダー』は、コンビニエンスストアなどでおなじみのチョコレート菓子です。これまでの当社は、イベントや広告活動というものをほとんど行ってきておらず、オリンピック選手の好物として紹介されたり、輸出先の台湾で人気に火が付き、生産が追い付かないことが話題になったりと、非常にラッキーな形でメディアに取り上げていただいていました。ただ、これからはこういった現象に頼るのではなく、戦略を持ってプロモーションを図っていく必要があるという考えから、2011年にマーケティング部門が新設されました。

チョコレートの売り上げが伸びるバレンタインは、製菓会社各社が特に力を入れる時期ですが、『ブラックサンダー』は、1個30円という安価さもあり、かねてからバレンタイン商戦の波にイマイチ乗り切れていないという課題がありました。この現状を打破できないかと、プロモーション施策の検討を行うなか、義理チョコ文化に着目いたしました。

一昔前、バレンタインといえば、本命チョコ、義理チョコが定番でしたが、昨今はこれらに加え、“友チョコ” “自分チョコ”というジャンルが生まれ、チョコレートの高級志向が進んで久しい印象があります。一方の義理チョコは、「用意するのが面倒」「誰に渡すか気をつかう」という渡す側である女性の声とともに、貰う側である男性からも「気をつかわせて悪い」「お返しに悩む」といった声が挙がっています。とはいえ、義理チョコは日頃の感謝を伝えるツールとして広く認識されており、良い文化になっているとも感じていたので、ブラックサンダーにこの役目を担わせないかと考えたことが、『義理チョコショップ』への足掛かりとなっていきました。

初年のキャンペーンの成功が、翌年からの『義理チョコショップ』につながった

―スタートからこれまでの経緯をお聞かせください。

初年となる2013年は、ショップの出店はなく広告のみの展開でした。
市井に、「義理チョコが煙たがられている」「敬遠されつつある」というイメージがじわりと浸透していましたが、そんな負のイメージもあえて逆手に取ることが『ブラックサンダー』の性格に合っていることから、“一目で義理と分かるチョコ”というコピーを用い、新宿駅のコンコースに広告を出すと同時に、専用の自販機でサンプリングを行いました。これらの取り組みが好評を博し、ネットを中心に話題になったので、次年はそこから一歩踏み込んだコミュニケーションに発展させたいと検討するなか、直接購入できる場があると消費者の方も喜ぶのでは、という声が挙がりました。

そこで、翌年は、東京駅一番街にある『東京おかしランド』で期間限定出店を行ったところ、台湾から観光に来ていた方が30万円分もの商品を購入されたことをはじめ、連日午前中には品切れをする現象が続きました。ただ、これは1日の売り上げ予測を弱気に見ていた面もありましたので、翌2015年は商品を潤沢に用意し、終日販売できる体制を整えました。結果、前年比120%超の売り上げとなり、数字からもショップ展開の手ごたえを感じましたので、今年の出店につながっていきました。

―商品の特徴、購入者の属性などを教えてください。

バレンタインならではのラインナップを揃えようということで、限定商品を数種類ご用意しました。なかでも、チョコレート専門店『ミュゼ・ドゥ・ショコラ テオブロマ』の土屋公二シェフに監修いただいた、『生ブラックサンダー』は人気が高く、昨年は開店の2,3時間前からお客様が並ぶほどでした。今年は整理券の配付を行いましたが、販売スタートと同時に完売していきました。

また昨年までは、イチゴ味のブラックサンダーを限定品としてご用意していましたが、出店3年目の今年は、新しい展開が必要だろうということで、初恋の味としてよく連想されるレモン味の商品に替えました。加えて、義理でも少し本命に近い商品として『ブラックサンダーショコラケーキ』という生菓子もご用意し、よりバラエティに富んだ商品をご提供しました。

ご購入者は、男女半々の印象です。女性は義理チョコとしてお求めになる方が多いように見受けましたが、もともと男性のファンも多い商品ということもあり、限定商品に関心を示す男性も目立ちました。

また、あくまでも義理チョコという打ち出しではあるのですが、東京駅という立地柄、お土産としての要素も意識しています。買いやすい金額設定もそうですが、それぞれのフレーバー、パッケージの仕様は、お持ち帰りになったご家庭や職場で話題にしていただくことをイメージしながらつくっていますので、渡すほうも貰うほうも楽しいコミュニケーションになっているとうれしいです。

また、今年は春節とかぶりましたので、台湾の方をはじめ、多くの海外観光客の方にもお立ち寄りいただきました。

―出店にあたって、印象に残ったエピソードはありましたか。

今回は、『ブラックサンダーショコラケーキ』の準備が大変でした。当社に生菓子のノウハウがないこともあり、味の見当をつけるところからパッケージのデザインまで手探りの状態からスタートしています。製造ラインももちろん持っていませんので、外部の会社に依頼し、試作の段階から協力していただきました。

このケーキの特長は、『ブラックサンダー』がそのまま中に入っていて、持ち味のザクザクとした食感をお楽しみいただけることなのですが、通常のケーキに『ブラックサンダー』を入れるとケーキの水分を含んでしまい、この食感が出ないんですね。今回は、この部分をいかにクリアするかがポイントでしたが、工夫を重ね、結果として当社ならではの商品をご提供することができました。ちなみに通常のケーキには、『ブラックサンダー』のような堅い食感の食材を入れることはまずないので、そういった部分もお楽しみいただけたのでは、と感じています。

―SNSをはじめ、ユーザーからの反響はいかがでしたか。

プレスリリース配信当初は、「期間中に買いに行きます」といった声を多く見かけました。期中は、お買い上げの商品を写真付きで紹介される方がたくさんいらっしゃいましたね。でも一番は、「他の地域でも販売してほしい」という声だったように思います。ウェブ販売なども行っていないので、今後はその声にも応えていきたいです。

義理チョコ文化を支え、バレンタインの活性化、チョコレート市場の拡大につなげたい

―本施策を始めて4年目ですが、義理チョコ市場への影響や動向をどのように捉えていますか。

他社さんも再び義理チョコに力を入れ始めているように感じています。特にコンビニエンスストアやスーパーマーケット等は、売り場の広さや品揃えを見ても顕著だったように思います。

さらに本命チョコは、手づくりや、百貨店でのご購入が主流になりつつあるので、うまくすみわけができていると感じており、購入者へのアプローチにも違いが見て取れました。”自分チョコ“”友チョコ“など、新たな購入動機も生まれていますので、当社も義理チョコ文化を支えることで、引き続きバレンタインの活性化、ひいてはチョコレート市場の拡大に寄与できればと思っています。

―今年のバレンタインの成果はいかがでしたでしょうか。また、今後の展開も教えてください。

今年は3年目ということもあり、社内に催事のノウハウが定着し、比較的落ち着いた流れで出店を終えることができました。1年目は台湾・中華圏からいらしたお客様の爆買い、2年目は限定品を求め何時間も前からお並びになるお客様の姿が、それぞれ印象として強かったのですが、そういった意味では安定した運営ができたと感じています。今後、4年5年と継続していくにあたっては、お客様に目新しさを感じてもらえる商品の投入や場づくりが肝要になってくると思っていますので、そういった施策に力を入れていきたいと感じています。

これらの活動の一番のねらいは、義理チョコというキーワードを通じて『ブラックサンダー』をより多くの方に知っていただくことなので、認知度の拡大に向け、さらなる取り組みを行っていきたいです。

加えて、直近の展開としては、3月14日まで義理チョコのお返し専門店をテーマに『義理のお返しショップ』を、東京おかしランドで再び展開しています。こちらは初めての取り組みなので、緊張しながらのオープンになりましたが、おかげさまで好評をいただいております。バレンタイン同様、限定商品も多数ご用意していますので、男性をはじめ、多くの方にご来店いただけるとうれしいです。

有楽製菓株式会社 マーケティング部 マーケティング課 主任 山﨑美沙さん