Case: Skippable Wishes

フランスに拠点を置く世界的な広告会社パブリシス・グループ(Publicis Groupe)では、毎年年末になると同社のCEOであるMaurice Lévy氏が自ら出演する、新年へ向けた挨拶の動画を公開しています。

毎回工夫を凝らした内容で業界内で話題となっていますが、今年は真面目なものとユーモラスなバージョンの2パターンを制作。どちらも最初は全く同じようによくありがちな“お堅い挨拶”で始まりますが、後者の映像には開始から約30秒辺りから『Skip Maurice』というボタン(=YouTubeの広告スキップボタンをモチーフにしたもの)が表示されるようになっています。

これをクリックすると、Maurice氏がヨーグルトや衣料用洗剤、歯磨き粉、シャンプーなどの様々な商品のCMに出演しながら、“パブリシスの来年の抱負”について語っていくという仕掛けなのですが… 商品の魅力も伝えるためにCEO自らが洗い立てのびしょびしょのシャツを着たり、女性物のカツラを被ったり、キッチンの排水溝から頭部を出してスポンジでごしごし頭を洗われたりと、かなり体を張ったユーモラスな“新年への挨拶映像”が約3分間にわたり展開されます。

こちらの映像については、YouTubeの再生バーを操作して好きな箇所で再生をすることができず、最初から最後まですべてを視聴する必要がある仕様になっています。

CEOによると、来年の目標は『各部署の垣根を越え、チームワークを大切にして、よりよい作品を作り上げていくこと』だそう。

“あえてスキップを促す”、“スキップしてもらうことを前提”とした「新年への挨拶動画」を通じて、「広告スキップ」や「アドブロック」といった広告業界人に突き付けられている逆風に対峙するための、考え方や姿勢を暗に示しているのではないかと思います。

筆者には『業界には逆風になると思われるテクノロジーの進化(=それによる生活者の習慣の変化)すらも、クライアントがターゲットと良質なコミュニケーションを図るための新たな機会ととらえよう』、『強い“コンテンツ”こそが、メッセージを伝えるための何より大切な手段である』、『そのためなら、そしてそれがベストだと思うなら、たとえグローバル企業のCEOであっても、体を張るなど些細なことだ』といったメッセージを示唆しているように読み取れました。

※下記の動画は真面目な方のバージョンです。もう一つの『Skip Maurice』の動画はPublicis Groupe 2016 Wishesよりご覧下さい。