Case: サントリー「金麦〈琥珀のくつろぎ〉-くつろぎ族」

話題になった、または今後話題になるであろう日本国内の広告・クリエイティブの事例の裏側を、案件を担当した方へのインタビューを通して明らかにしていく連載「BEHIND THE BUZZ」。今回はサントリー「金麦〈琥珀のくつろぎ〉」発売に合わせ実施されたWEBキャンペーン「くつろぎ族」を取り上げます。

特設サイトから、外部の8つのサイトでの記事広告へ誘導。硬軟織り交ぜたコンテンツで「くつろぎ」を訴求するとともに、漫画「フェイスブックポリス」がSNS上で大人気となった「かっぴー」さんによる、家飲みを題材とした書き下ろし漫画も収録。計9つのコンテンツを同時多発的にWEB上で展開することにより、商品の話題化を実現しました。

このキャンペーン実施の舞台裏をサントリービール株式会社 宣伝部 徳久無限さん・同 ブランド戦略部 三浦良介さん、サントリービジネスエキスパート株式会社 宣伝部 中村勇介さん、面白法人カヤック 企画部・人事部 兼康希望さん・同 企画部・人事部 伊藤大輔(かっぴー)さんに伺いました。

Interview : 市來 孝人 / Text : 坂巻 渚

色んな方向に散らばったコンテンツから一つの世界観を作り上げていく企画

—まず、今回のキャンペーンが立ち上がったきっかけを教えて頂けますか。

三浦:「金麦〈琥珀のくつろぎ〉」は、昨年好評だった商品で、今年も発売することになりました。発売2年目なので、今年もしっかりニュース性を持って商品を出していきたいという点がきっかけです。

徳久: 2年目の商品は1年目と比べ商品の話題性が低く「2年目のジンクス」として売れ行きも悪くなりがちなのですが、そんな2年目でも売れ行きを伸ばすべく、何かしら宣伝を入れようという話になりました。ただ、季節限定の商品なので出荷の時期も限られます。ならばWebで瞬発的に話題化ができたらと。

中村:バナー出稿でリーチをとっていくという案もあったのですが、もうちょっと爆発力を狙っていきたいな、という想いで実施しました。

—当初のキャンペーンの構想はどういうものだったのでしょうか?

兼康: 2つ案をご提案させていただきました。1つは、ビジネスマン向けのパワーポイントのクイズ・検定をするというもの。もう1つは、色んなメディアさんとコラボし、同時期に一斉告知することによって、Web上をお祭り状態にするというものでした。

—2つの案をご覧になられた時の印象はいかがでしたか?

三浦:「どっちも面白い!」と率直に思いました。ただパワーポイントの方は、スマホでは見られないという障壁が大きいかなと。

中村:やっぱり最近は「スマホで楽しめること」は欠かせない気がしています。最後はそこが決め手になりましたね。

徳久:また、もう一つのメディアコラボ案の方が、バズりそうな予感がしましたね。プレゼンを聞いている時から、笑いが起きるくらいの企画だったので(笑)



提案に使用された企画書の一部

—媒体選定が肝だったと思うのですが、選定はどういった基準でされたのですか?

兼康:弊社内で「面白い」と人気だったWebメディアをまず選定しました。コンテンツ勝負の企画だったので、Web上で人気のコンテンツを作れる方たちにお願いしたかったので。

—今回8メディア+1漫画を採用されていますが、候補はいくつくらいあったのですか?

兼康:最初は15〜20くらい候補がありましたね。

—その中で8つに絞っていった基準はどういったものだったのでしょうか?

兼康:Webでシェアされやすいかどうかという点を最重要視して選びました。

中村:やはり、まずは爆発力があるかどうかですね。あとは、色んな人にバランスよく届くようにという点も意識しました。

—ビジネス寄りの企画から、伊藤さんの漫画のように柔らかい企画まで様々ですが、それぞれのメディアとはどのように企画を練っていったのですか?

兼康:各メディアさんには、「くつろぎ族」という大枠と、「赤い金麦」が頭に残るという前提の元、「くつろぎ」をテーマとした企画をお願いしました。ある程度イメージはお伝えしたのですが、基本的にはメディアさんに企画をお任せしました。

—ぶっ飛んだ企画のメディアさんもありますし(笑)、サントリーさんの社内でお話を通すのは大変ではなかったですか?

徳久:そこが1番大変でした(笑)ただ、今回は特定のメディアとのタイアップではなく、「くつろぎ族」という大枠について、色んな方向に散らばったコンテンツから一つの世界観を作り上げていく企画だという話をしましたね。「色んな所で、くつろぎ族というバズを起こしましょう」というのが、今回カヤックさんと一緒に話をしていたので、その作戦が通ったという感じですね。

—商品の持つ世界感を大切にしつつ、チューニングしながら選定されたのが今回の8つのメディアということですね。

三浦:季節限定品だからこそ認知を取りに、面白い所に一歩踏み込んでみたいと思いました。そのうえでチューニングはしつつ、出来る所まで踏み込んでみたのが今回の企画という感じです。

—期間限定品でこのような冒険をされたことは、これまでもありましたか?

中村:バズ施策に対するチャレンジはこれまでもありましたが、今回はかなり思い切ってやったと思います。

—特に「金麦」は上質なイメージがあったので意外な印象でした。

中村:世界観と面白さのギリギリのせめぎ合いの中で、ただやっぱり広がってほしいという思いで、結構そこは議論しましたね。上質さの線を超え過ぎず、でも面白いというバランスを考えながら。カヤックさんに色々と案をいただきつつ、これはOK、これはNGと、何度もやり取りを重ねて着地しました。各メディアさんともお会いして直接お話しながらできたのでよかったですね。メディアごとに特性があるので、その特性を活かそうという話はしていたので、それぞれに味が出て良かったかなと思います。

三浦:カヤックさんの対応も驚くほど早かったです(笑)。

—兼康さんとしては各メディアさんとのやり取りが一番気を遣われた部分ですか?

兼康:そうですね、窓口が8つあるので、各メディアさんとのやりとりも最後の方は混乱しそうで(笑)。

徳久:最後の確認作業は地獄でしたね(笑)。

—そんな中、かっぴーさんこと伊藤さんの漫画が加わったというのは、これもかなりの冒険だったと思うのですが、その時の経緯を教えて頂けますか?

兼康:ちょうど、女性向けのコンテンツがもう一声あればいいなと思っていたんですが、その時ちょうど、伊藤がシルバーウィークにプライベートで公開した漫画「フェイスブックポリス」がヒットしていて。このキャンペーンのリリースもちょうど2週間前のタイミングだったので、「このコンテンツだ!」と思いました。

徳久:「急遽1つ加えました!」と、伊藤さんの漫画案を出されたんです。たまたま私はその漫画を見たことがあったので、「これコンテンツにできるんだ」と思いました。しかもその時、既に漫画を書いて下さっていて。とても早くて驚きました。

—家飲みあるあるがテーマの漫画ですよね。

伊藤:15分くらいブレストして、20から30個くらい「あるある」の候補が出てきました。

兼康:ブレストしたその日の夜には、原稿が出来上がっていました。

伊藤:ただ「フェイスブックポリス」などはラフを描かないんですが、今回はラフもちゃんと描きましたね(笑)。

—今回は女子会が舞台ですが、元ネタはやはり女性のお友達などにヒアリングしたりしたのですか?

伊藤:普通に、自分が家飲みをやった時に思っていたことです。「なんでお前だけお土産持ってくるんだよ、みんなに言っとけよー」とか常に思ってて。そういったあるあるが面白いなって。女子会を舞台にしましたが、男の人でも共感してもらえる内容だと思います。

—サントリーさん内で最初に読まれた時の印象はいかがでしたか?

徳久:まず、僕らが読んだ時点で「面白い!」「これはすごい!」と思いましたね(笑)。(打合せ時に)兼康さんがPCでスクロールしながら冷静に読むんですが、みんなクスクスと笑いを抑えきれない感じでした。

—漫画の中にしっかり商品が入り込んでいましたが、意識して考えられたのですか?

伊藤:これまでずっと広告業界で仕事をしてきたのですが、こういったコンテンツでの紹介の場合、結構商品の登場の仕方が唐突だったり、不自然なケースが多かったりするので、そうではなく、「宅飲みっていいな」「女子会っていいな」っていう話の流れにあった形で商品を入れるように、そこは気を遣いましたね。ちゃんと流れとして面白いし、無理矢理じゃないように。

「2年目のジンクス」を打開

—キャンペーンの反響としてはいかがでしたか?

三浦:売れ行きという点では、昨年並みに売れていて「2年目のジンクス」を打開できたということは大きかったです。

—店頭での動きとの連動はどのように意識されたのでしょうか?

三浦:商品の発売が10月20日だったのですが、発売直前の10月5日にこのサイトをローンチし、そこでバズを生み、商品発売後にお客さんにお店に足を運んでもらうという設計でした。

中村:サイトは店頭で思い出してもらうところを意識しましたね。商品が持つ赤のイメージがしっかりと残るように。

—ユーザーからの反響で印象に残ったものはありますか?

兼康:キャンペーン手法を分析して「こんな手法があったのか」と仕組み自体に注目してブログを書いてくれた人がいたのは印象に残っていますね。

中村:ちょうど9つのコンテンツがあったので「打線を組んでみた」なんていうツイートとか。

徳久:あとは、「もう流行りのかっぴーさんを採用してる!サントリーめちゃめちゃ早いな!」というツイートもありました。

—特に、ネット界からの反響が多い印象です。

中村:入り口はそこなのかなと思っています。そこから波及していって、必ずしもネットヘビーユーザーではない方にもしっかり届いていったっていう所がよかったと。もともと幅広いメディアと組むことで、色んなとこで「くつろぎ族」を見かける状態を作りたかったので、それが体現されたと感じています。

—Webでバズらせる場合いろいろな手法がある中、今回はタイアップ記事だけでバズらせるということが斬新だった印象があるのですが、今回の手法を実施されての手応えはいかがでしたか?

中村:旬なものをいかに早く取り入れるかが重要だと感じました。それは動画も記事も同じですが、今回でいうと、まさに流行り始めていたかっぴーさん(伊藤さん)に漫画を描いてもらえたことや、漫画の内容もSNSならではの「タグ付け」ネタを入れたりだとか。今回ご提案いただいたメディアのラインナップもとにかく旬なところばかりで、今回のタイミングでは、まさにその旬なものがWebの記事という形だったということだと思っています。

兼康:個人的には、このタイミングでかっぴーを使うことが出来たのも大きかったですね(笑)

徳久:ラフ案の作成から修正までもとても早かったですし、Twitterのバナーのビジュアルまで描いて頂いて。

—漫画の執筆含め、全体的にスピード感という意味でも、「Web的」だったというところでしょうか?

中村:そうですね、Webは他メディアでのコミュニケーションとは早さがちょっと違うのかなと感じました。カヤックさんとお仕事することでその早さは鍛えられていますね。

—大手メーカーであり、一大ブランドを持つ御社がWebでこういった攻めた企画をしたことで、新たなファンができたのではないでしょうか?

中村:今回、マスコミュニケーションだけではなかなか振り向いてもらえないお客さんたちに振り向いてもらうきっかけは作れたかなと感じています。ネットヘビーユーザーの方を着火点に、お客様の言の葉に乗って話題が広がっていくという画が描けたことが良かったです。

サントリービール株式会社 宣伝部 徳久無限さん(後列・右から2人目)
サントリービール株式会社 ブランド戦略部 三浦良介さん(前列)
サントリービジネスエキスパート株式会社 宣伝部 中村勇介さん(後列・右から1人目)
面白法人カヤック 企画部・人事部 兼康希望さん(後列・右から4人目)
面白法人カヤック企画部・人事部 伊藤大輔さん(後列・右から3人目)