Case: サンリオ「ちゃんりおメーカー」

話題になった、または今後話題になるであろう日本国内の広告・クリエイティブの事例の裏側を、案件を担当した方へのインタビューを通して明らかにしていく連載「BEHIND THE BUZZ」。今回はサンリオによる「ちゃんりおメーカー」を取り上げます。

「ちゃんりお」は「サンリオ好きなみんなのためのピューロランドオリジナルキャラクター」。WEBサイト上でアバターのような「ちゃんりお」を作成し、シェアして楽しめるだけではなく、ピューロランドに行って楽しめる仕掛けも用意されています(バーチャルパレードへの参加、買い物や食事に使える「ちゃんりおカード」作成、館内にある「秘密のあいことば」でオリジナルパーツをゲット等)。好評により期間が延長され、「ちゃんりお」を作成する際のパーツには、ハロウィンバージョンのものも追加されました。

この「ちゃんりおメーカー」開発の舞台裏について株式会社 サンリオエンターテイメント 宣伝部 宣伝課 課長代理 真鍋和弘さん、株式会社 博報堂 アクティベーション企画局 プロモーションプラニング三部 部長 大久保重伸さんに伺いました。

Interview : 石原 愛美(Aimi Ishihara)/Text : 市來 孝人 (Takato Ichiki)

「サンリオらしさ」を研究して、一つ一つの顔のパーツを作った

—まずは、このちゃんりおメーカーが生まれた背景についてお聞かせ下さい。

真鍋:まず、サンリオピューロランドが開業して25年になります。ピューロランドは「大人向け」として開業したのですが、ふたを開けてみるとお子様・ファミリー層がとても多く、顧客層のグラフが20代で一番下がるという不思議な形をしていたのです。そこに転機が訪れたのが、2年前に「サンリオタウン」という新しいエリアを作ったことです。それにあわせて広告戦略も、営業戦略も、ここ2年間試行錯誤しながら、これまでの「新しいアトラクションが出来ました」だけではない、あらゆる層に届く訴求の仕方をしてきました。

昨年までもある程度手応えを感じていたのですが、今年改めて、メディアの環境もさらに変わっていく中、これから5-10年先を見据えた戦略を取っていこうと。

—その環境を踏まえ、ちゃんりおメーカーという施策になった理由は何ですか?

大久保:社内にはサンリオが好きな女性スタッフもたくさんいて、いろいろ話をしていくと「ピューロランドって、行くとかわいい・嬉しい気分になれる。けれどなかなか行く機会がない」という反応がありました。また、テーマパークはなかなか一人で行かなかったりするので、誘いたくなる・口コミが生まれる仕掛けを作った方がいいなと考えました。今回のターゲット(20代)の行動上にその仕掛けを置くというのが狙いです。

ピューロランドに実際に行く前に、まずはちゃんりおメーカーを通して自分がサンリオのキャラクターになれることで、サンリオのかわいさを体験してもらえるのではと考えました。さらに、そこでつくったちゃんりおがピューロランドでも実際に楽しめることで二次元のキャラクターと三次元の自分が融合してしまう。そんな異次元・夢の世界を作り出して楽しんでもらえたら、自分自身もかわいい気持ちになれるのではないかと。さらに、ソーシャルのアイコンにもしやすいという拡散性も考慮しています。

—この提案があって、社内でのリアクションはいかがでしたか?

真鍋:今までの施策と全く違うので、今だから言えますが簡単にはいかなかったです(笑)。告知が載っていないのにこれで人が来るのか、といったリアクションもありました。若い世代はアメーバピグなどでこういうアバターには慣れていますが、上層部にはアバターとは何かというところから説明したりもしました。
ちなみに最初のプランでは、サンリオのキャラクターをもっと大胆に組み入れたアバター案もあったんです。

大久保:さすがに、既存のキャラクターのパーツを部分的に使うということは難しいということでした。ただ、いかにも「サンリオらしい」自分のアバターが出来ることで自分ごと化するので、弊社のサンリオ好きなデザイナーにサンリオのそれぞれのキャラクターの「サンリオらしさ」をつぶさに調べて、研究して、一つ一つの顔のパーツを作ってもらいました。全部でパーツは1,900ほどあるのですが、これらをサンリオさんに一つ一つ確認を取っていって、サンリオさんとしても「これだったら問題ない」、ユーザーにとっても「サンリオらしい」、その感覚からずれないように作っていきました。

—ちゃんりおを写真から作るか、自分で最初からパーツを組み合わせて作るか、この2パターンを用意された理由は何ですか?

大久保:写真を使っての占いツールなどがちょっと前にも流行りましたしね。また写真を使うということは手間もいらないので気軽に出来るんですね。さらには写真が変化するということは、魔法のような、ひとつのエンターテイメントにもなります。一方で、自分でこだわって作りたいという方もいらっしゃいますから、この2つの入り口を用意しました。

—「ちゃんりお」というネーミングもとても印象に残りますが…

大久保:「サンリオ」と、他の人を誘って一緒に遊びに行くきっかけにしたいという意図もあったので、「〜ちゃん、行こうよ」と友達を誘う時のような親しさを表現、つまり人を呼ぶときの「ちゃん」を掛け合わせました。

「サンリオさんは面白いことやってますよね」と言われ始めるように

—限定パーツを手に入れたり、パレードに参加出来たり、ピューロランドへ実際に来園したときの楽しみ方も沢山ありますね。

大久保:実はここを一番、気をつけて作り込んでいきました。あくまでも目的は来園者を伸ばすことですから、ちゃんりおメーカーは友達を誘って行きたくなるきっかけ、そのちゃんりおがピューロランドに行くと動き出す、そしてグッズにもなる…それらリアルの場での施策も一気通貫したものになるように、(ちゃんりおメーカー単体ではなく)初期から全て計画してご提案させて頂きました。

—YouTubeにはムービーも複数種類(10種類)アップされていました。

大久保:今回は、マス広告はほとんどなくWEBまわりの施策を色々広げていく方向でした。最近は動画コンテンツも多いので、また見たくなる・シェアしたくなるような色々なパターンを全部で10パターン作り、「ちゃんりおメーカーを使って楽しくなる」という点をいろんな角度から訴求していこうと考えました。

—ユーザーの反応はいかがですか?

真鍋:WEBでの施策はすぐには数字に出ないのですが、7月10日から始めてすぐにどんどん数字も上がってきました。メディアにも取り上げて頂きましたし、夏の来場者の数値にも反映されてきました。デジタル全盛の時代、「デジタルで作った」だけではない、それが体験できるということに楽しいと思って頂けたのは面白いですね。8月に来場者アンケートを取った時に、20代の反応も上がりました。同業者とも話をしているのですが、若い人が来ると活気が出て、結果的に上の世代も下の世代も来るようになるんです。

サンリオは今まで良い子のイメージだったのですが、最近は色んなところから「サンリオさんは面白いことやってますよね」と言われ始めています。ここ1-2年で、広告に限らずキャラクターなども含めて、サンリオも変わりつつあると、若い人も注目してもらえるブランドになりはじめてきています。

—今後のご予定は?

真鍋: 1,700万人以上の方がちゃんりおを作ってくれているという、せっかくここまで育ったものはさらに喜んで頂けるものにしないと…という声も社内で大きいので、引き続き継続しています。カードやクリアファイルなどのグッズ化も需要が高いので、それ(カードやクリアファイル)以外のものも作ろうとは思っています。他社さんからの引き合いも多いので、外部とのコラボレーションも出来ないかと検討しています。

株式会社 サンリオエンターテイメント
宣伝部 宣伝課
課長代理
真鍋 和弘さん(左)
株式会社 博報堂
アクティベーション企画局
プロモーションプラニング三部
部長
大久保 重伸さん(右)