Case: Paradise Hill

ニュージーランドの人々の間では、“家庭内暴力”というものは、平均よりも貧しい家庭、社会経済的に低い階層の女性に“のみ”起こりうるものという認識がありました。ですが、調査によると実際は高所得層にもDVの被害は数多くあり、大勢の国民がDVの問題についてまったくの誤解をしているという課題がありました。

そこで、NPO団体の「It’s Not OK」と高級住宅情報誌「HOME Magazine」が、『DVはどんな裕福な家庭にでも起こりうるもの、今まさに起こっていること』という真実を伝えるために、「HOME Magazine」の誌面を使った斬新なプロモーションを実施しました。

今回実施したのは、雑誌の一コンテンツとして、郊外の高級地にある新築のデザイナーズ住宅を掲載するという企画。住宅の名称は「Paradise Hill」。キャッチコピーは「息をのむ景観と家族のプライバシーの両立」というものです。

同物件は他の物件と同様に、目次にも記載があり、一見すると通常の住宅・物件紹介のコンテンツと変わりがありません。

ところがページをめくり同物件の紹介ページを見ていくと、写真の中におかしな箇所があらわれてきます。

例えば、棚の上に手の指でつけたであろう“血の跡”らしきものがあったり…

リビングにある花瓶が割れていたり、ダイニングの椅子が倒れていたり…

そしてラスト8ページ目、テーブルが無残に壊れている写真とともに、趣旨が明らかになります。

右上の説明には以下のようなことが書かれてあります。

家庭内暴力はどのような家庭にも起こり得ます。昨年1年間だけで、国内の“すべての地域”における10万件以上のDVを対象にして、警察官が調査を行ったのです。あなたの所属するコミュニティーで、DV被害を受けている人に心当たりがあれば、無視しないでください。

この雑誌を使ったユニークな取り組みは、いくつものTV番組で“DVの真実”とともに取り上げられ、SNSでも大いに話題になりました。

結果わずか1週間でニュージーランド国民の4分の1に相当する110万人の話題にのぼることになったそうです。

たった一つの雑誌の記事が、大きなインパクトを与えることに成功した啓発プロモーションでした。