Case: 日本生命「MAKE HAPPYNING」

話題になった、または今後話題になるであろう日本国内の広告・クリエイティブの事例の裏側を、案件を担当した方へのインタビューを通して明らかにしていく連載「BEHIND THE BUZZ」。

今回は日本生命保険相互会社による、大切な人の人生の「節目」に”幸せ­なハプニング”を届けたいというすべての人を応援するキャンペーン「MAKE HAPPYNING(メイクハピニング)」を取り上げます。
2014年は4つのハピニングを実行し、2015年も応募が開始されました。応募された方の中から選ばれた方とともに制作チームが綿密に計画を練り、実行に移し、動画として公開されます。

応募された一般の方の想いに寄り添って作られるこの「MAKE HAPPYNING」、実施の狙いや撮影の舞台裏を、チームの皆様・プランナー 名古屋考平さん(株式会社電通)、クリエイティブディレクター 佐々木芳幸さん(株式会社monopo)、コンテンツプロデューサー 永田大輔さん(株式会社DISTANT DRUMS)、プロダクションプロデューサー 戸田和也さん(株式会社東北新社)、プロダクションマネージャー 下條岳さん(株式会社東北新社)、監督 萩原健太郎さん(THE DIRECTORS GUILD)に伺いました。

Interview & Text : 市來 孝人 (Takato Ichiki)

日本生命にとってチャレンジング、新しいものだという評価

—まず最初に、この企画が立ち上がった経緯をお聞かせ下さい。

佐々木:最初は、日本生命さんから「若年層向けのプロモーションを考えてほしい」というお話を頂いたことからです。保険は自分のためのものではなくて、人のためのもの。大切の人の為に入るものだということをどう伝えていくかと考えた時に、大切な人の事を思ってサプライズにして届けるという方向性が保険に近いのではないかと。

—佐々木さんと名古屋さんはご一緒にプランニングされる上で、元々何か繋がりがあったたんですか?

佐々木:実は、大学時代から二人でよく友達のサプライズを企画していたんです。当時はユニット名もつけて、サプライズのプロになろうと色々仕掛けていて。今回はまさに学生時代からやっていたサプライズの経験を活かせましたね。

—最初の提案時、クライアントさんの反応はいかがでしたか?

名古屋:日本生命さんでも今回、ターゲット層に近い若い担当の方が決めようという動きがあったのですが、一番若い担当の方が「これが面白そう」とおっしゃって頂きました。

佐々木:SNSで話題にしていくという手法の面も、日本生命さんにとってはチャレンジング、新しいものだという評価を頂きました。またストーリーとしても、単なる広告ではなく、一般に募集して一緒にサプライズを作っていくことが「ニッセイぽいよね」と。

戸田:普段は広告の映像制作の機会が主なので、大体作りこんで準備をして、クライアントさんと共有して撮ることが多いのですが、今回はサプライズなのでバレないようにしなければいけないですし、何が起こるかも分からないので、僕らにとっても挑戦ですし、楽しかったですね。

一人のため、その人がどうしたら喜ぶか考えて作った結果、多くの人に喜んで見て頂いた

—現時点では4つの動画が公開されていますが、選定はどのような基準だったのでしょうか?

戸田:我々チームみんなでインタビューして選定していきましたが、どの応募者の方々も大切な人へのハピニングを実現したいという想いは変わらず、非常に苦労しました。最終的には、「意外性」や「目新しさ」など話題になりそうなテーマを泣く泣く選ばせていただきました。

萩原:具体的な制作の話ですと、(バランスは)年齢層や、「誰から誰」の構図がかぶらないようにという点に配慮しました。

—チームみんなでインタビューとのことですが、候補者の方にはどういう質問をされたのでしょうか?

萩原:その人がどういう方であるかはもちろん、ハピニングを仕掛けたい相手へどういう思いがあるかというところですね。そこに葛藤があったり、人生ドラマがあったりするんですよね。

戸田:#1のお父さん、川口さんは本当”逸材“でしたね。

萩原:お父さんの娘さんへの思いを聞いて、逆にお父さんにハピニングをしてあげた方が思い出になるんじゃないかという作戦にしたんです。

—撮影の中で印象に残ったシーンは。

下條:#1が山梨での撮影だったんですが、都内を出発してドライブという設定で、大体2〜3時間かかるだろうと見込んで我々もセッティングをしていたのですが、お父さんが緊張のせいか気持ち早めに運転してしまったようで、予想より早く着いてしまったりということがありました(笑)。ドライブの様子を撮影する為にGoProを改造して、カメラをドライブレコーダー風のものにしたりして。 
#2のデートをほぼ尾行する形の撮影も、気付かれないようにするのが大変でした。

萩原:尾行しているので、正面のカットが必然的になくなるんですよ(笑)。

永田:レストランのウエイター役も実はスタッフで「東京タワーに行きそうだ」とインカムで情報を裏でやり取りしていたのですが、突然彼女の気が変わってお台場になった、ならばと我々クルーも急いで行き先を変更したりとか。

下條:前日の彼氏との仕込みの打合せを、(彼女には)受験勉強中という体で打合せに来てくれていたので、その間彼女からの着信を彼氏が取らなかったんですね。打合せ後に彼氏が「ちょっと勉強中で…」と掛け直したら、彼女は「なんで電話に出ないの」、明日のデートも「もういい」、という感じになってしまい…そのデートがハピニング(撮影)の予定だったので、「明日行けなくなるかもしれないです…」と彼氏から連絡が来たり、ギリギリまでやり取りしていました(笑)。

—それだけ、ハピニングを仕掛ける方とも密にやり取りされていたということは、後から感想などのご連絡もあったりするんじゃないですか?

下條:そうですね、#1のお父さんからは娘さんの結婚式の写真を送って頂いたり、#4のサッカー大会の方も、子どもが撮影の後表情がたくましくなったという報告を頂いたり、色々ご連絡を頂いています。

—編集作業ではいかがでしたか?

萩原:現場で泣いてたよね。

永田:現場でも、編集でも泣き…編集エディターの方からも「仮編しながら泣いたのは初めてです」と。

戸田:登場してくださった方々の人生にとって忘れられない体験になれば良いなぁと思っていたら、僕らにとっても忘れられない体験になりました。

萩原:普段CMの監督をやっている中で「多くの人に分かりやすく作る」ことがあるんですが、今回は一人のため、その人がどうしたら喜ぶか考えて作った結果、多くの人に喜んで見て頂いたという点が興味深かったですね。

今年は締切を設けず、継続的に募集

—ユーザーさんやメディアの反応は。

永田:見て頂いた方からはかなり良い反応を頂きます。メディアなどでも今までのサプライズものとは違ってとても応募者に寄り添っているという声を多く頂きました。また、この企画の特徴として、公開からしばらく経ってからテレビ番組や企業研修に「この映像を使わせて下さい」という依頼が多く来ています。日々仕事や家事や学校などで忙しい方が見る度に「幸せになる」ずっと残っていく企画として出来るだけ長く展開していきたいと考えています。

—クライアントさんの反応はいかがですか。

佐々木:職員の方が支社で使いたいとか、インナー的にも評価を頂いていると伺っています。日本生命としてメッセージを発信していく上で「寄り添っていく」スタンスを評価頂いています。

永田:撮影のプロセスでも、応募者の横に「寄り添う」というのはスタッフ全員かなり意識していましたね。

—「MAKE HAPPYNING」2年目を迎えて、何か変化はありますか?

戸田:応募者の本気度があがりました。動画をすでに見て頂いてから応募してくださる方が多いので、具体的になりました。

佐々木:今まさに選定中です。今年は、2014年度のMAKE HAPPYNINGからさらに進化して、いろいろな立場で大切な人へのハピニングを起こしたいと考えていらっしゃる方が登場する予定です。

永田:今年は締切を設けていないので、これから公開される動画を見て応募して頂ける方もいらっしゃると思います。その点、2014年の経験をフル活用してより多くの応募者の方々とやりとりをしていきたいと考えています。

佐々木:ゆくゆくは「ハピニング」という言葉が一人歩きするくらい、このキャンペーンが浸透すれば嬉しいです。

プランナー 名古屋 考平さん(株式会社電通/下段左)
クリエイティブディレクター 佐々木 芳幸さん(株式会社monopo/下段右)
コンテンツプロデューサー 永田 大輔さん(株式会社DISTANT DRUMS/上段左から1人目)
プロダクションプロデューサー 戸田 和也さん(株式会社東北新社/上段左から3人目)
プロダクションマネージャー 下條 岳さん(株式会社東北新社/上段左から2人目)
監督 萩原 健太郎さん(THE DIRECTORS GUILD/下段中)