Case: The lucky Iron Fish Project

2015年カンヌライオンズ プロダクトデザイン部門のグランプリを受賞した作品をご紹介します。

カンボジアでは鉄分の不足により、人口の約半数が貧血症であるといわれています。貧血は多くの健康被害をもたらしますが、とりわけ妊産婦への影響は深刻で、早産、流産、死産の原因にも挙げられています。

鉄分を摂取するには『鉄の塊を鍋に入れて調理する』ことが効果的だとされています。そこに目を付けた、Chris Charles氏とそのチームが、貧血に悩む多くのカンボジア人を救いだしたのが、“鉄の塊”施策です。

Chris Charles氏が最初に制作した“鉄の塊”はこちら。文字通り何の変哲もない“鉄の塊”です。

プロジェクト当初、こちらをカンボジア人に配布し、調理の際に鍋に入れることで鉄分を補うことができる旨を説明し、貧血問題の解決の第一歩となるべく普及を試みましたが、失敗に終わりました。

食材と一緒に調理するには抵抗があったのか、本来の目的では支持を得ることができず、ただの丈夫な物体として使われてしまったそう。

それでは、「どうしたら、どのような形に仕上げたら鍋に投入してもらえるか?」

Chris Charles氏は、“魚”がカンボジア人の希望と幸運のシンボルであることを知り、一からデザインをし直したのです。そして出来上がった改良版のデザインがこちら。

カンボジア人が大切にする魚の形をした“鉄の塊”はカンボジア人に受け入れられ、狙い通り多くの家庭で鍋に入れて調理してもらうことができました。

“鉄の魚”の効果は絶大。“鉄の魚”を10分間鍋に入れて調理するだけで、一日必要な鉄分の約75%を摂取することができるといい、わずか8か月で貧血の発症件数が半減し、54,800人を救うことに成功しました。

また、“鉄の魚”を入れるケースは地元の人が制作するなど、同プロジェクトが100以上の雇用を創出した他、“鉄の魚”はリサイクル材料を原料としていることから持続可能なソリューションであること等もメディアの関心を集め、グローバルで26億ものメディアインプレッションを獲得しました。

故スティーブ・ジョブズ氏は、「デザインとは単にどのように見えるか、どのように感じるかということではない。どう機能するかだ。」と述べていますが、まさにそれを体現するプロダクトデザインです。一見するとほんの小さな違いが、多くの人々を救った費用対効果が高いソリューションでした。

動画はコチラ

(via The lucky Iron Fish)