Case: NANBOYA

話題になった、または今後話題になるであろう日本国内の広告・クリエイティブの事例の裏側を、案件を担当した方へのインタビューを通して明らかにしていく連載「BEHIND THE BUZZ」。
今回はブランド品の買取を行うリユースショップ「NANBOYA」の交通広告を取り上げます。2014年のクリスマスシーズンに「元カレが、サンタクロース。」、今年のバレンタインシーズンに「バレンタインデー寄ッ付。」「義理義理チョップ。」と、有名なヒット曲をもじったコピーの広告が、東京メトロ銀座線・丸ノ内線に登場しネット上で話題となりました。このコピーが生まれた背景について、コピーを担当した面白法人カヤック コピー部と人事部 長谷川哲士さんに伺いました。

Interview & Text : 市來 孝人 (Takato Ichiki)

クリスマスやバレンタインにちなんだ名曲のタイトルをもじって「三部作」に

—まず昨年のクリスマスシーズンに「元カレが、サンタクロース。」というコピーが有りましたが、最初からこのように曲名をもじった方向でのコピーを考えられていたのでしょうか。

提案したコピーは三つくらいあって、そのうちの一つがこのコピーで、先方の社長さんが気に入ってくれたという経緯です。他の二つは曲名をもじったというわけではなく、お引越シーズンで「部屋をきれいにしたら、ボーナスが生まれた」というものと、「大好きなシャネルは、私にとって通過点です」という、売るブランド品にちなんだストーリーのものでした。

—今年は「バレンタインデー寄ッ付。」「義理義理チョップ。」と、曲名をもじったコピーが二つ登場しましたね。このいわば続編と言えるものは元々予定されていたのですか?

元々は「元カレが、サンタクロース。」この一つのみの予定だったのですが、反響が良かったので今年のバレンタインシーズンでの実施が決まりました。今回はコピーを三案出したうちの二案ですね。

—残りのもう一案はどのようなものだったのですか?

もう一案は音楽とは関係なく「全カレを精算しよう」というものでした。「元カレ(40歳弁護士)がくれたヴィトンのバッグ」「元カレ(34歳公務員)がくれたエルメスのバッグ」というように、たくさんの元カレと商品が写ったビジュアルで。

—残り二つが音楽ネタになったのは、やはり昨年の「元カレが、サンタクロース。」があって。

そうですね。やっぱり歌ネタも入れようか、これで「三部作」になるなとも考えながら。歌がコピーの元ネタになっているとその曲を聴いただけで、広告を思い出すという効果もあるのではないかと思いました。「恋人がサンタクロース」も「バレンタイン・キッス」もだいたい毎年その季節になるとかかっている曲ですので。

「ギリギリchop」は季節を象徴する歌としてはあまりかかっていませんが、「義理」というワードがあれば自然とバレンタインを想起するので。「義理で歌かー」と思っていたらよぎった曲なんですね。しかもたまたまビジュアルが手なので「チョップ」しているようにも見えますし。プレゼンの時はPCで音楽を流しながら、これらのコピーを読み上げました。社長さんが大阪の方だったりするのもあるかもしれませんが、ダジャレ色の強い「義理義理チョップ。」を一番気に入られていました。

—これらのシリーズの、ビジュアル面については。

実は元々はコピーも、ビジュアルありきで生まれたものだったんですよ。アートディレクターの柿木原政広さんがまずはビジュアルの原案のラフスケッチを持ってこられて打合せをしている時に「元カレはサンタクロース。なんてどうですか?」と僕が言ったらその場でみんな笑ってくれて、そのままそのラフにコピーを書き込んでみたというのが生まれたきっかけです。

ポスターに仕込まれた様々な小ネタ

—バレンタインの二作は、色々小ネタが仕込まれているそうですが…

「バレンタインデー寄ッ付。」は買い取ってもらった商品の内訳を足す部分があるのですが、これを縦書きで読むと「バレンタイン・キッス」を歌った国生さゆりさんにちなんで、「コクシヨウ」になるんです。

「義理義理チョップ。」は「ギリギリchop」のB’zにちなんで「ビーズのブレスレット」をビジュアルに加えたり、そのブレスレットの買い取り額をB’zの稲葉浩志さんにちなんで「1,783(いなばさん)円」に設定してみたり、指輪の買い取り額をB’zのまた別の曲「恋心」にちなんで「51,556(こいごころ)円」に設定したり、実は他にも色々仕込んでいます(笑)。

—これらの広告のターゲットとしては、どういった層を想定していますか。

若い女性ですね。コピーの面では、曲をリアルタイムで知らない若い方でもコピーとしてだけでもパンチがあるようにとは意識しました。また三部作にすることで、最初の「元カレ〜」も歌のもじりだったんだと後から気づく方も多いようです。

—広告を実施した成果としてはいかがでしょうか。

広告を見て来店したという方ももちろんいますが、NANBOYAさんも今までのリユースショップのイメージとは違う「面白いものを作りたい」という思いが強くて、数字としてのKPIも、来客数ではなくSNSのシェア数を設定しました。「高価買取というワードはどこも使っているから、ウチは使いたくないんですよね」「新しいイメージの広告にチャレンジすることに価値がある」と。

—今回は地下鉄での交通広告でしたが、交通広告に対するこだわりなどはありますか。

ネットと比べると不特定多数の人に見られるので、それを見て気になってつぶやいてくれて、なぜかSNSやネット上で流行るということも多いですし、多くの方に見てもらえるというのはやはり嬉しいですよね。電車内でひっそりと出たグラフィック広告が、テレビCMやウン億円の予算を使ったキャンペーンよりも話題になるのは、コピーやデザインの力を信じたくなります。

【Interviewee】

面白法人カヤック
コピー部と人事部
長谷川哲士さん