Case: Pop-up Store

ここ数年、新商品やサービスのプロモーションで期間限定のショップ、通称「ポップアップストア」をオープンする企業・ブランドが世界的に増えています。

今回はそんな「ポップアップストア」の事例の中でも、ストアを訪れた人にブランドの世界観を体感してもらったり、サンプリングをするだけでなく、わかりやすい“絵素材”と“仕掛け”をフックとして、メディアでのPR(パブリシティ)や、SNSを通じた話題化を狙ったケースをまとめてご紹介します。

1.“親切な行い”が貨幣になるチョコレートショップ

[国名:デンマーク/企業名:Anthon Berg]

110年以上の歴史を誇るデンマークの老舗チョコレートブランドAnthon Bergが手掛けた、『大切な人への親切な行い』を約束することでチョコを購入できるというポップアップストア。

店内に陳列されている全ての商品の値札には、価格の代わりに30種類以上の様々な「親切な行い」が記載されています。例えば、「ガールフレンドの運転に1週間ケチをつけない」、「愛する人のベッドサイドに朝食を持っていく」、「友達の家の掃除を手伝う」などなど。

レジではiPadを使って、商品の値札に書かれている「親切な行い」を実行する相手をFacebookで自由に選んでもらい、その行いを“必ず実施する”というメッセージを相手に送ることにより、“支払い”は完了となります。

お店の外には長蛇の列ができ、老若男女問わず大勢のお客さんがチョコレートを無料でゲットして大喜び。そして、お客さんそれぞれが大切な人への『親切な行い』を滞りなく実行し、Anthon BergのFacebookページに写真付で約束を守った模様を多数投稿していったそうです。

2.“ツイートで買い物ができる”アパレルストア

(Image by Marc Jacobs)

[国名:USA/ブランド名:Marc Jacobs]

ニューヨーク生まれの人気ファッションブランド・マークジェイコブスが「ニューヨークファッションウィーク」に合わせて、ファッショナブルなソーホー地区にオープンしたポップアップストア。

「Daisy Mark Jacobs Tweet Shop」と名付けられたこのショップは、ラウンジのように居心地のよい空間が広がり、無料WiFiが提供されるといいます。そして最も特徴的なのは、ショップで扱う“通貨”。

このショップでは通常の通貨は扱わず、“ハッシュタグ#MJDaisyChainを用いたツイート”及び、“Instagramでの投稿”がショップのオフィシャル通貨となり、商品購入に利用可能。また、Instagramに投稿される写真の中から最優秀作品が選ばれ、見事優勝者に輝くとマークジェイコブスのハンドバッグがプレゼントされる企画もあったといいます。

3.ボルダリング体験をさせられるドッキリストア

[国名:韓国/ブランド名:The North Face]

若者から人気のアパレルブランド・The North Faceが、韓国でオープンしたポップアップストア。店員がお客さんを店内に残し、外側からドアを閉めて、何やらスイッチを入れると…ゴーーーという機械音とともに店内の床がスライドし、足場がどんどんなくなっていくというドッキリ企画。

驚いたお客さんが慌てて壁際に寄ると、そこにはボルダリング用の手足を掛ける突起があります。夢中でしがみつくと、今度は天井からThe North Faceの新作ダウンジャケットが下りてきます。反対側の壁にはスクリーンが設置されていて、「ジャンプしてダウンジャケットを手に入れてください!」との指示が。制限時間は30秒。

空中で見事ジャケットをゲットできた人は、そのままお持ち帰りできるというルールでした。突然の出来事にお客さんは相当驚いたかと思いますが、日常生活の中でこんなにハラハラドキドキすることってあまりないですよね。「外に出て、もっと冒険しようよ!」と呼びかける、アウトドアブランドならではのユニークなポップアップストアでした。

プロモーションの模様を収めた上の動画は、1,100万回以上再生されて大きな話題となりました。

4.Instagramに写真投稿して新商品をゲットできる“Instashop”

(Image by Kellogg’s)

[国名:USA/企業名:Kellogg’s]

大手食品メーカー・ケロッグが、「スペシャルKシリアル」の新バージョンを宣伝するために開店した期間限定ストア、“Instashop”。この店舗ではお客さんが陳列されている新商品の写真を撮影して、“#nyaspecialk”(nyaは‘新しい’という意味)というハッシュタグを付けてInstagramに投稿すると、もれなく新商品がその場でプレゼントされるという企画です。

“Instagramへの新商品の写真投稿”(=ソーシャルメディアでの宣伝活動)の見返りとして、商品をプレゼントするという世界初の試みだったようです。お客さんに通常とは一味違ったスタイルで、“楽しんで新商品のサンプリングを受けてもらおう”という意図と、“パブリシティ効果”を見込んでのプロモーションでした。

5.「バイオハザード6」のグロすぎるPRスタント

(Image by Capcom)

[国名:UK/企業名:Capcom]

カプコンによる、大人気ホラーゲームの最新シリーズ「バイオハザード6」のアンビエント施策。ロンドン東部の有名な市場にあるお肉屋さんを改造して、牛や豚ではなく、人間の胴体や手足、指、頭部の肉を陳列して販売する“人肉”専門店を2日間限定で開店するという企画。

この肉屋さんでは、(当然のことながら)本物の人肉を扱っているわけではなく、「豚肉」を加工することで、バラバラの人体の一部に見えるようにしており、それを実際に販売したといいます。

ホラーゲームならではのポップアップストアで、テレビを中心に幅広くカバレッジを獲得できたそうです。ホラーゲームやホラー映画を嬉々として楽しむ人たち(=ターゲット)にとっては、ワクワクするのかもしれません。

6.Instagramの写真で支払できるレストラン

(Image by BirdsEyeUK on Instagram)

[国名:UK/企業名:Bird’s Eye]

英冷凍食品ブランド「Birds Eye」が、ロンドン、マンチェスター、リーズで、新しい商品ラインナップのPRの一環でオープンしたポップアップレストラン、その名も“The Picture House”。

このレストランでは代金を支払う代わりに、新商品(冷凍食品)でできた料理をスマホで写真撮影して、指定のハッシュタグを付けてInstagramに投稿することで支払いができるというコンセプト。同社によると、「52%もの人が定期的に食事を写真撮影する」というインサイトを元に考案された企画だといい、市民の冷凍食品に抱く誤解(「便利だけどあまり美味しくない」、「見栄えが良くない」等だと思われます)を払拭したいという狙いがあったそうです。

Instagram、SNSで市民の話題にのぼることだけでなく、パブリシティ獲得によるリーチ拡大を意図した試みでした。

7.一流レストランの仕掛け人はなんと“ディスカウントスーパー” その真意とは…

Lidl / Dill from Colony on Vimeo.

[国名:スウェーデン/企業名:Lidl]

スウェーデンのディスカウントスーパー・Lidlが、店舗で販売する食品の「品質の高さ」を訴求するために、同社の名をあえて伏せて期間限定のレストランをオープンしました。3週間限定でオープンした「DILL」という名のレストラン。おしゃれな佇まいのレストランを仕切るのは英国から招き入れた一流シェフ。

上質な料理が“格安”で提供されるとあって、瞬く間にストックホルム市民を虜にし、SNSなどでも数多く話題にのぼり、オープンから3週間、予約が途切れることがなかったといいます。

絶品料理が破格値で提供されていたことも驚きですが、何より市民を驚かせたのは、このレストランが実はディスカウントスーパーのLidlが経営していて、“すべての食材はLidlで調達した”という事実。中身の素晴らしさに気づくには、時には外見を変えてみる必要があるというLidl。

同社が取り扱うディスカウント食材の提供場所を、スーパーではなく上質なレストランに変えることで、『真の品質(品質の良さ)に気づいてもらおう!』という試みでした。アイディアとともに、その実行力に脱帽させられる取組みです。

8.お金の代わりに“消費カロリー”で支払いをするストア

Colun Pop up Store from JJBarcelo S.A on Vimeo.

[国名:チリ/企業名:Colun Light]

低カロリーヨーグルトやラクトースフリー牛乳などを製造するチリの乳製品メーカー「Colun Light」が、大勢の人々がジョギングやサイクリングなどを楽しむ大通り沿いにオープンしたポップアップストア。

ガラス張りの明るい店内には自社製品は一切置いておらず、あるのはなぜかお洒落なトレーニングウェア。お客さんが気に入った商品をレジに持っていくと、表示されたのは合計金額ではなく、なんと“カロリー数”。この店ではお金の代わりに店内に設置したランニングマシーンでトレーニングをして、走ったカロリー数で支払いをするという仕組みなのです。

運動をする時は、まずは見た目から…という人はきっと多いはず。お洒落なウェアを着ればモチベーションアップに繋がります。同時に『Colun Lightはいつも皆さんの健康とともにありますよ』ということを人々に印象付け、健康増進に一役買うユニークな施策でした。

9.「母の日」にシャネルが開店したフラワーショップ

(Image by CHANEL)

[国名:UK/ブランド名:CHANEL]

「母の日」に合わせて、ラグジュアリーブランドのシャネルがロンドン中心部のコヴェント・ガーデンで仕掛けたプロモーション。

イギリスでは香水とお花が「母の日」の定番のギフトということで、“どうせだったら両方ともプレゼントしてもらおう!”と、3日間限定で花と香水を取り扱うストアをオープンしました。バラやジャスミン、アヤメなどの花を取り扱っていて、それぞれの花の香りはシャネルの代表的な香水(ナンバー5やナンバー19など)の象徴的な香りに使用されていることを表現しています。

花と一緒に展示されているシャネルの香水を購入すると、無料で綺麗にデコレートされた花束をプレゼントしてくれたそうです。香水の販売促進が見込める「母の日」に、“香水”とは別の切り口である、“花”という角度からも見込み客との接点を図り、購買促進とパブリシティ獲得を図ろうとするアプローチ。シャネルのようなラグジュアリーブランドが、フラワーショップを路面にOPENするという点にも新しさを感じます。

10.『ワールドカップ未亡人』のためのスポーツバー

(Image by Benefit Cosmetics)

[国名:UK/ブランド名:Benefit Cosmetics UK]

世界中を熱狂の渦に巻き込んだFIFAワールドカップ・ブラジル大会。W杯の応援に夢中になり、家族そっちのけで試合に熱中してしまう男性たちの妻を『ワールドカップ未亡人』と呼ぶそうですが、米化粧品メーカー「Benefit Cosmetics」は、そんな“夫を失くした”女性たちのために、W杯期間限定のバーをロンドンにオープンしました。

女性客のみが入れるこのバーは、『女子がとことん楽しめるスポーツバー』をコンセプトとし、内装はピンクを基調にしたポップで可愛らしいデザインとなっています。店内に設置されたスクリーンでサッカー観戦ができるほか、Benefitの製品の使い心地を試してみたり、ワインやカクテルのテイスティングがあったりと、女性が楽しむための工夫やイベントが数多く用意されています。

男性陣がスポーツバーで盛り上がるなら、妻たちも「女子力を高めながら楽しくサッカー観戦しましょう」というわけですね。オープニングナイトでは、著名テレビ司会者がパーティーのホストを務め、お披露目会を開催。以降、約1カ月間に渡り日々様々なイベントが行われたといいます。

11.接着剤メーカーがオープンした『全商品無料』のショップ

[国名:インド/ブランド名:Fevicol]

インドの大手接着剤ブランド・Fevicolによる、“最も信頼に足る接着剤”だと市民に訴求することを狙ったプロモーション。ムンバイ市内のショッピングモールにて、陳列されているすべての商品が“無料”のショップ、その名も「THE FREE STORE」をオープンします。

合言葉は、「It’s free, If you can take it.」というもの。「タダなら、持って帰ろう!」とばかりに、お客さんが目星をつけた商品を手に取ろうとしますが…すべての商品が陳列棚に固定されていて、持って帰ることはおろか、手に取ることすらできないという仕掛け。二人がかりでも商品は微動だにしません。

商品を手に取ることを諦めたお客さんには、“同社の接着剤で固定されていた事実”を種明かしをするという流れでした。なお、陳列された87アイテムは1点も取られることはなかったといいます。

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