Case: Test drive

消費者が自動車やバイク・自転車を購入する際に行う『試乗』。今回はそんな一般的な試乗体験を、エンターテインメント性に富んだプロモーションへと昇華させた事例や、SNSやデジタルテクノロジーを駆使して“ハードルを下げて”気軽に参加させることに成功した事例などをまとめてご紹介します。

世界各地で様々なメーカーが手掛けた、一風変わった試乗プログラムをご覧ください。

1.全国民の3分の1にリーチ! トヨタがノルウェーで仕掛けた試乗キャンペーン

Try my hybrid case video from Saatchi Norway on Vimeo.

[国名:ノルウェー/企業名:トヨタ]

トヨタ自動車がノルウェーで実施した、ハイブリッド車・プリウスの新規顧客開拓のための試乗キャンペーン“Try my Hybrid”。トヨタはノルウェーの自動車業界において、売上、ロイヤリティ、顧客満足度は首位に立っていましたが、新規顧客獲得数において直近伸び悩んでいたことから発案された施策です。

“Try my Hybrid”キャンペーンは、プリウス愛用者の協力を仰ぎ、所有者の友人・知人などに自らのプリウスを試乗車として提供してもらうことで、プリウスの魅力をより気軽に体験してもらい、新規顧客の開拓につなげる目的で実施されました。

キャンペーンに参加登録するには、facebook上の同社ページにアクセスします。ここでプリウスを愛用しているユーザーには、試乗車の登録を呼びかけます。登録したプリウス所有者は、facebookでつながっている“友人”または“友人の友人”に、無償で自身のプリウスに試乗してもらうことに同意します。そしてプリウスの試乗を希望するユーザーは、facebookでプリウスを所有している“友人”または“友人の友人”を簡単に探すことができます。

あとは、身近な人のプリウスを思う存分試乗させてもらうだけ。顧客満足度の高いプリウスだけあって試乗車の登録数は莫大な数に上り、“友人の友人”までつなげることで、なんとノルウェーのほぼ全人口が「試乗用プリウス」にたどりつけたといいます。

本キャンペーンは大きなパブリシティー効果を生み、キャンペーンサイトの訪問者数は15万人を超え、キャンペーンのリーチは全人口の3分の1に及んだといいます。「プリウスの愛用者・プリウスのファン」が広告塔となって成し遂げた新規顧客開拓キャンペーンでした。

2.見込み客の“ピンチ”を“チャンス”に変えた、Smartのゲリラ試乗施策

[国名:ロシア/ブランド名:Smart]

小型車ブランド「Smart」がモスクワで実施した奇抜な試乗キャンペーン。その名も、“The Unexpected Test Drive(予期せぬ試乗)”。

ロシアでは自動車の普及とともに、小型車から大型車へとトレンドが変遷してきました。特に、現在急激な経済成長中の中流階級の人々は、“大きくて高い”大型車を好む傾向があります。その結果、道路を大型車がうめつくすような大渋滞や、駐車スペースの不足による違法駐車などを引き起こしています。

Smartが狙ったのは、大型車のオーナーを対象に「2台目を所有するニーズに気付かせ、その際に小型車であるSmartを選択肢に入れてもらおう」というもの。とはいえ、“小型車の中の小型車”であるSmartにとって、その“小ささ”から否定感を抱く人が大勢いる大型車のオーナーに、自ら試乗してもらうのは至難の業。

そんな中、商品の魅力を最大限に実感してもらう“絶好の機会”として目をつけたのが、市民が『違法駐車』により警察に車をレッカー移動されてしまった現場です。自分が駐車した場所に戻った大型車のオーナーが、停めたはずの車が無くなり困り果てているところに、Smartのキャンペーンスタッフが“救済手段”として試乗を申し出ます。

普段なら好んで選ぶことのない小型車も、困ったときの移動手段とあらば喜んで試乗してもらえるというわけです。3日間のキャンペーン期間中に40台のSmartを使用して、623人のレッカー移動された大型車のオーナーを“試乗”により助けたといいます。

体験した人たちからは“感謝の声”がソーシャルメディアに数多く投稿されて、ニュースサイトでもこの試みが数多く記事化されて15万ドル相当のパブリシティを獲得。そして、400人もの試乗者にSmartの魅力を認めてもらうことができ、マイナスイメージから“ポジティブイメージに転換”させることに成功しました。

3.“一生忘れられないデート体験ができる”スリル満点の試乗イベント

[国名:フランス/企業名:Renault]

ルノーの小型車種「クリオ」による一風変わった試乗イベント。“A Speed Dating Event”と名づけられたこの企画のイベント会場は華やかに装飾され、一見すると男女一対一の「お見合いパーティ」のよう。

参加者は各テーブルでデートを楽しもうとやってきますが、一人の参加男性のテーブルにやってきたのは男のスタッフ。彼が「僕のデートのお相手は?」と問うと、別の場所へと誘導してくれます。案内された先には、お相手の女性とクリオ。“猛スピードが何よりも大好き”というこの女性とのデートは、ルノー・クリオで楽しむドライブデートです。

ターゲットの男性が助手席に乗り込み簡単に挨拶を交わすと、すぐさま女性はクリオを運転しはじめます。この女性、実はプロのスタントマンで、走り出しから猛スピードを出し、道路には雪が残っているにも関わらず、急ブレーキをかけたりと意図的に危険な運転を仕掛け、男性の度肝を抜きます。

「ちょっとスピード出し過ぎなんじゃないの」という男性からの助言もお構いなし。危険な運転にも関わらず、女性は軽やかな口調で男性に話しかけ、楽しいデートの雰囲気を演出しました。

通常では体験できないスリル満点のドライブデートを思う存分堪能してもらうという企画。『クリオに乗ると、思いもよらないワクワクな体験があなたを待ってますよ』ということを示唆するコンセプトのようです。

4.スマホをハンドル代わりに運転!フォルクスワーゲン「up!」オンライン試乗体験

[国名:日本/ブランド名:up!]

フォルクスワーゲンのスモールカー「up!」のオンラインコンテンツ。スマホとPCを接続することで、スマホをハンドル代わりにPC画面上のup!を運転し、試乗体験を楽しむことができます。

さらにFacebookと連携すると、友達の写真や投稿した文字によって通行人やビルボードが生成された、自分だけのセカイ(試乗コース)でドライブをすることが可能。「up!」を運転する楽しさを、多くの方に体感してもらいたいという狙いでこのコンテンツが制作されたといいます。

またこうした最新テクノロジーを駆使したコンテンツによって、ブランドのイノベーティブなイメージを高めようとする狙いもありました。

5.料金0円で泊まれる“試乗型”ホテルがモスクワに登場

[国名:ロシア/企業名:SKODA]

チェコの自動車メーカー・SKODAがモスクワで仕掛けた斬新な試乗企画。モスクワでは夏季期間に若者向けのイベントが多数開催されるため、ロシア全土から若者が集まってきます。SKODAはモスクワ市内で宿泊施設を探している若者をターゲットにして、一風変わったホテルをモスクワでオープンしました。

宿泊施設を探そうとユーザーが大手ホテル予約サイト・tripping.comで「Moscow(モスクワのホテル)」と検索すると、スペシャル案件として『料金0円』のホテルが見つかります。こちらをユーザーがセレクトすると、“SKODA Hostel”として、一般的な宿泊施設ではなくSKODAの自動車が紹介されています。つまり、「SKODAの自動車をモスクワ滞在用のホテルとして、若者にタダで使用してもらおう」という企画です。

公園に駐車されているこの自動車型ホテルには、専用のタオルが用意されていて持って帰ることができます。さらに無料Wi-Fiが完備されており、ペットと一緒に寝ることも可能。友達とはしゃいでも大丈夫!もちろん、そのまま市内をドライブ(試乗)してもいいそうです。

こちらの無料“試乗型”ホテルは、好評につき予約がいっぱいになったとのこと。宿泊した若者からは「リッツ・カールトンよりもいいわ!」といった声や、「今度車を買うつもりだけど、SKODAにしようと思っている」といった声が聞こえてくるなど、大変好評だったといいます。

宿泊施設を探している若者にフォーカスしたユニークなPR。とっても斬新でセンスが際立つ、常識にとらわれない“試乗プログラム”でした。

6.電気自動車「BMW i3」の性能を、ゲーム感覚で体感できる“バーチャル試乗アプリ”

[国名:UK/企業名:BMW]

2013年秋、BMWにとって初めてとなる電気自動車「BMW i3」が発売されました。カーボンファイバーやアルミニウムを効果的に使った、軽量かつコンパクトなボディーを特徴とし、俊敏な走りと優れた動力性能を備えています。

消費者に向けて“今までに体験したことのないような性能や乗り心地”を表現するために、BMWがスマートフォン・タブレット向けにリリースしたのが「Become Electric」というアプリ。アプリは映画のようなストーリー仕立てになっています。見知らぬ男が『君の助けが必要だ!』と言って、突然あなたの運転する車に乗り込んでくる、というシーンから物語はスタート。

映像は360度撮影できる特殊なカメラを使用して制作されており、まるでハリウッド映画のよう。端末を上下左右に動かすと、視線を動かしているように周りの様子を見ることができます。自分が物語の主人公になって、破滅の危機に瀕する街と人々を救うというミッションを与えらるのですが、ストーリーの中でBMW i3を運転することで車の特徴を知ることができ、さらに“バーチャルな試乗”を体験することができる、という考え抜かれた内容となっています。

車のプロモーションとしては異色のストーリー仕立てのバーチャル試乗アプリ。非常にクオリティーの高い、エンターテインメント性に溢れた作品でした。

7.ルノー・クリオに乗ると“ワクワクが止まらない!?”

[国名:UK/企業名:Renault]

イギリスのルノーが新型Clioを訴求するために仕掛けたサプライズプロモーション。コンセプトは、Va Va Voom(おぉ!すげぇ!= 俗語で性的に魅力的な人を見たときなどの感嘆の声)。

ディーラーに試乗を行うために訪れた男性たち。彼らは新型クリオに乗車して、セールスマンの指示のままに街中へ試乗に繰り出しますが、T字路に差し掛かった所で、同車しているセールスマンから「(フロント位置にある)”Va Va Voom”ボタンを押してみて」と促されます。実際にそのボタンを押してみると、、突然目の前にいた2人の男女が熱烈な抱擁をし、そこにフランスの街角が出現します。

更にサプライズは続き、車の周りでフランスの街角で見られるような光景なのか、カフェや、フランスパンを配る男性や、はたまた映画の一場面のようなスタントが繰り広げられます。そしてクライマックスでは目の前にセクシーな女性たちが登場し、妖艶なダンスを繰り広げてくれます。

車の周りを囲んで挑発的なダンスを行い、試乗した男性はこの状況にもうニヤニヤが止まりません。ラストは、全てのスタントが突然消えて、目の前にはクリオの看板&同乗しているセールスマンのトークにより、サプライズ企画だったことが分かるという仕掛けでした。

「新型クリオに乗るとこんな楽しいことがあなたの身にもおきるかも!?」というコンセプト。残念ながら、“Va Va Voomボタン”はオプションでも搭載できないそうです。

8.ハーレーダビットソン “最上級の試乗体験をあなたに”

[国名:ブラジル/企業名:Harley Davidson]

世界中で人気のオートバイブランド・ハーレーダビットソンが、ディーラーに来店した見込み客に仕掛けたプロモーション。コンセプトは、オートバイを購入したことがない人にバイクの試乗体験を通じて、単なる乗り心地だけではなく、“ハーレーダビットソンのオーナーになることで得られる本当の価値・ハーレーダビットソンの世界観”を体感してもらうことでした。

サンパウロにあるディーラーにやって来た男性は、店員に勧められて意気揚々と公道へ試乗に出かけます。しばらくするとその男性の後方から、ハーレーダビットソンにまたがったバイク野郎が60人も現れて、彼の周りを取り囲んで一緒に走行し始めます。彼は自分が“オートバイチームの一員になったかのような”気持ちになり、笑顔で運転します。

60人のメンバーとともに試乗を満喫したラストには、目の前に“Welcome to the Harley-Davidson World.”の横断幕が掲げられるとともに、周囲のメンバーからも拍手喝さいを浴びてご満悦だったようです。

試乗を通じて、バイクの機能性や乗り心地を体験して理解してもらうだけではなく、オーナーになって得られる“情緒的な価値やブランドの世界観”をダイレクトに腹落ちさせるというアプローチ。この試乗を体験した人は当然のことながら、この模様をおさめた動画を視聴するだけでも、ハーレーダビットソンのブランドとしての“強さ”や“誠実さ”を一部実感できるかと思います。

9.Smart、“らくらくパーキング”を訴求するゲーム型試乗イベント

[国名:ドイツ/企業名:Smart]

マイクロコンパクトカー「スマートフォーツー」が、“パーキングのしやすさ”を実感してもらうために実施した、対戦型試乗イベント。その名も、“parKING”(parkとKingをかけた造語)。

公道を舞台とした「いすとりゲーム」の要領で行われる対戦型のパーキングゲームで、音楽が流れている間は走行し、音楽が止まるとパーキングスペースを探し駐車するという企画です。

8組の対戦者がそれぞれ「スマートフォーツー」に乗車し、駐車スペースを見つけることが困難な市街地を走行します。音楽が止まると、各組小さなスペースに次々と縦列駐車を成功させ、駐車車両を写真に撮りアップロードします。駐車(≒写真のアップロード)が最も遅かった組が脱落し、勝者が決まるまで続けます。

見事最後まで残ったパーキングのキングには新型「スマートフォーツー」のリース契約が授与されるという企画でした。このパーキングゲームは非常に好評で、ベルリンの他ヨーロッパ各都市で開催されたそうです。

街中のパーキングは頭を悩ませるものの一つ。“スマートフォーツーはそんなパーキングストレスから解放してくれる”と思わせてくれる愉快なプロモーションですね。

10.“あなたのドライビングスタイルにぴったりのコーヒーを淹れてくれる”試乗企画

[国名:オランダ/ブランド名:MINI]

小型車「MINI」がオランダで実施した、自動車の試乗をフックにしたアンビエントプロモーション『MINI Coffee Bar』。

試乗用のMINIに、ドライバーのドライビングスタイルを分析する特別なコンピュータチップが装備されており、試乗後にそのチップを専用のコーヒーマシーン(エスプレッソマシーン)にセットすると、自動的にその人の運転スタイルにぴったりのコーヒーを淹れてくれるという企画です。

例えば、のんびりゆったりと走行するドライバーの場合はエスプレッソを薄めたアメリカン、平均的なドライバーの場合は適度な濃さのルンゴ、F1ドライバー並みの激しくスポーティーなドライビングなら濃厚なリストレットという風に、試乗した人のドライビングスタイルに最適なコーヒーを「試乗後の一杯」として提供してくれます。

ターゲットとなるビジネスパーソンとコーヒーは切っても切れない関係にありますが、それと(自動車の購入には不可欠な)試乗とを連動させるという発想がユニークです。ありきたりの試乗会にエンターテインメント性を付加する斬新な企画だと思いました。試乗プログラムの満足度もあがるかもしれませんね。

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