Case: 寺田倉庫「minikuLOVE」

話題になった(=「バズった」)日本国内の広告・クリエイティブの事例の裏側を、案件を担当した方へのインタビューを通して明らかにしていく連載「BEHIND THE BUZZ」。

今回は、寺田倉庫が手がけるストレージサービス「minikura」(専用のボックスに詰め宅配便で送ると、取り出しや管理がWEB上で手軽に出来る)のキャンペーンとして実施している「元カレ」「元カノ」との思い出の品を預ける「minikuLOVE」を取り上げます。

当キャンペーンを担当する株式会社 クリエイティブオリコム ディレクタールーム クリエイティブディレクター 坂中慎之介さんにお話を伺います。

Interview & Text : 市來 孝人

機能面を前面に出すより、共感されるメッセージを。選んだのが「元カレ・元カノ」

—まずは、実施に至った経緯を教えて下さい。

昨年寺田倉庫さんのグラフィックを担当させて頂いて、昨年末に担当の方から「面白いことをしたい」「知名度を上げたい」というオリエンがありました。年末にさせて頂いたプレゼンの中で数企画持っていったうちの一案です。

minikuraはダンボール1箱分の荷物を月額200円から預けることのできる画期的な商品なのですが、なかなか「預ける」事自体を「面白い」と感じてもらうのは難しいという課題がありました。そこで「面白い」商品自体を開発すれば話題になるんじゃないかと。実際に預ける人が少なくてもいいので、まずは話題になるような企画をminikuraのシステムを使って作りましょう、という提案でした。

寺田倉庫さんのminikuraチーム内にはプログラマーさんをはじめWEBクリエイターさんがいらっしゃって、WEB面では結構内製されているんですね。その方々が作っているminikura APIを使って色んな企業とコラボレーションし新商品を開発したいという点は、寺田倉庫さんにとっての大きなテーマでした。このAPIを認知してもらって、コラボレーション先を広げていく足掛かりとしての狙いもあります。

最初にAPIの機能を前面に出してしまうと、いわゆるB to B的なアプローチの「企業募集」のようになってしまうので、「世間的に話題になる」企画でありながら裏でAPIを広める・アライアンス先を見つけるという目標を隠し持っているというという認識を寺田倉庫さんとも握っていました。実は当初、元カレBOX・元カノBOXの他に「愛人BOX」もラインナップとして企画を進めていたのですが、これはさすがに不謹慎すぎるとの理由でペンディングになりました(笑)。

誰でも家には1つくらいは元カノ・元カレからもらったものが残っていたりしますよね。それを預かるためだけのサービスがあってもいいんじゃないか、と考えました。恋愛の盛り上がっている時に交換しあった熱量たっぷりのアイテムって、別れた後に振り返るとサムいドラマがいっぱい詰まってるじゃないですか。それって共感されると思ったんです。

—寺田倉庫さんからはどのような反応がありましたか。

社内では賛否両論あったようですが(笑)、商品開発自体はすぐに決まりました。プロモーションのクリエイティブに関しては、当初minikuLOVEの特殊な機能にフォーカスした表現だったのですが、「もうちょっと振り切った方がいいんじゃないか」とおっしゃっていただいて方向転換をしました。

昔の恋人からもらったアイテムを今の恋人に見つかってはいけない「恋愛残留物」と定義し、極秘ミッションとしてそれらを捜査する特殊部隊が「LOVE DANGERS」と設定するなど、メッセージの打ち出し方を変えていきました。

—寺田倉庫さんは元々、このような「面白い」企画に理解のある企業さんなのでしょうか。

寺田倉庫さんには美術品やワインなどを預かるホスピタリティの高いプレミアムストレージサービスと、minikuraを中心にもっと敷居を低くして預ける事に楽しみや面白さをプラスしたオンラインストレージサービスがあります。minikuraを担当される方はみなさん若くて、どんどん新しいことをチャレンジしていく社内ベンチャーのような雰囲気で、話題を作って新しいアライアンスを生み出していこうという考え方をされていますね。

Photo:実際に使用された提案資料

「くだらない事を徹底的にやる」。時間をかけて作り込み

—施策の作り込みはどのように進めていったのでしょうか。

かなり特殊なサービスなので実際に預ける人は少ないだろうと想定していて、寺田倉庫さんへのプレゼンの段階でも「ひょっとすると利用者は全国で1人かもしれない」位の話をしていました。ただこういうサービスって架空のサービスだと一気にシラけてしまうので、実際にその「全国に1人くらいかもしれない」ユーザーのために、かなり時間をかけてガッチリ作っています。

この「くだらない事を徹底的にやる」ことが大切だとスタッフとも共有していました。WEBの実制作はカヤックさんにお願いし、カヤックさんも企画を面白がって作ってくれました。サーバサイド・フロントの設計やサイト全体のアートディレクションやデザインに力を発揮していただいてます。

—ラブレターの内容を分析して適切な声で読んでもらう「肉声化システム」とはどのような仕組みですか。

ラブレターについては相手のキャラクターをイメージ出来る項目のプルダウンで選べるようになっていて、選んだ情報にあった声優さんをアサインしています。リクエストで「泣きながら」「オラオラ系」などと記載してもらったり、もらった時のシチュエーションの再現希望があればそれに合わせたりとか、案外アナログです。

—注がれた愛情を「価格」という物差しで測る「愛情価格化システム」、こちらは商品をそのまま出品出来るなどヤフオク!との提携だそうですね。

元々minikuraとヤフオク!が提携していて、minikuraに預けたものがそのままヤフオク!に出品出来るというシステムがあります。ブランドや商品名などを入れるとオークションでの相場がわかるようになっているというヤフーさんのAPIを活用しました。

—預けたものをWEB上で360°から楽しむことの出来る「360°視覚悦楽システム」は、どのように作られたのでしょう。

こちらもminikuraとヤフオク!の提携時に作られたシステムを活用しました。

—サイトには女性宅にがさ入れが入るという、印象的なムービーもアップされていますね。

ムービーはkiramekiさんに担当頂きました。演出はディレクターズギルドの長部洋平監督です。いろいろと制限があったのですが、その中でも「どうやったらもっと面白くなるか」を常に考えてくれてました。その積み重ねで、とてもいいムービーが完成しました。演出プランや出演者の裏設定など監督とのアイデアのキャッチボールがとても楽しかったです。

—キャラクター設定について詳しくお聞かせ下さい。

「LOVE DANGERS」は、真剣だけど研究していることは間抜け。スタイリッシュだけど要領が悪い。リーダーは暑苦しいくらいのナイスガイ、全く頼りにならない調子がいいだけの男性隊員、転職を考えていそうな飽きっぽい女性隊員の3名。誰もがプロフェッショナルとはほど遠いのですが、憎めない。そんなキャラクター設定です。 またがさ入れされる女性は、「罪悪感がなく天然な女の子」と設定しています。この女の子の設定次第で商品の見え方が大きく変わるので特に気をつけました。

実際に預ける人が少なくても、minikuraの機能への問い合わせは数々。狙い通り

—実際に預けている方はどの位いらっしゃいますか。

サービス開始から1ヶ月で、数名のようです。まぁ、これも狙い通りといえば狙い通りですが(笑)。

—寺田倉庫の社内での反応はいかがでしょう。

話題になったと評価いただいています。WEBでは転載含め200以上の記事になりましたし、テレビやラジオなどの取材依頼が40くらいあったようです。この1ヶ月にminikuLOVEの特集が組まれたテレビ番組がいくつか放映されました。これをキッカケに、もっとたくさんの人にminikuraを知ってもらえるといいですね。

—minikura APIを利用したい、という企業さんも実際に出てきていますか。

10社以上の企業様からのお問い合わせがあったようです。minikura APIはこれからも進化していくようなので、いろんな企業様との新しいサービス開発が実現すると面白いですよね。

【Interviewee】

株式会社 クリエイティブオリコム
ディレクタールーム クリエイティブディレクター
坂中 慎之介さん