Case:World Great Donation Program

世界各地で実施された想像力豊かな募金活動の事例をまとめて紹介します。
人々を啓蒙・啓発し、行動を喚起させるアイディア溢れる事例の数々です。
ではどうぞ!

1.寄付した効果が“その場で見られる”ドネーション・プログラム


[国名:ドイツ/団体名:African Angel]

皆さんは街頭で募金活動が行われているのを目にした時、自分の寄付したお金で具体的にどんな効果があるのかを“その場で即座に目にすることができる”としたら、寄付をするモチベーションが高まりませんか?
これから紹介するAfrican Angel(アフリカの恵まれない子供たちを支援する団体)の事例は、「寄付の効果をその場で本人に見せる」ことをコンセプトにして設計されています。

同団体は“国際子どもの日” に街頭で寄付金を募るための一風変わったポスターを制作。このポスターにはアフリカで貧しい生活を余儀なくされ、無気力な様子で佇む子供の姿が描かれています。このポスターのユニークな仕掛けは、市民が硬貨でポスターの表面をこすると、徐々に表面の用紙が削れていき、削った用紙の下からは綺麗な教室の中で素敵な制服に身を包んだ笑顔の子供の姿が現れます。
「あなたが今手に持ってポスターをこすっている硬貨を寄付してもらえると、”この子”の未来はこんな素敵なものになるんですよ!」とコミュニケートしています。さらに、携帯電話のディスプレイに写った同様のイメージを指でスクラッチすることで、前述した『寄付することによる効果』があらわれるようになっていました。

この試みの結果、効率的に寄付金を集めることに成功しただけでなく、同団体のホームページへの訪問者数は70%も増加したそうです。興味津々でポスターをこすっている市民の様子がとても印象的です。

2.ポケットの中の小銭を寄付させる秀逸なドネーションプログラム


[国名:ブラジル/団体名:赤十字]

広告専門学校マイアミアドスクールの学生が考案した赤十字への寄付を募る施策。
普通、街中で募金を求められた際に、小銭があるかどうかポケットの中をわざわざチェックしようとする人はまれだと思います。一方で飛行機に搭乗する際のセキュリティゲートでは、どんな人でも必ず小銭がポケットにあるかどうかを確かめることが求められます(金属探知器を通る際に皆さん確認しますよね)。
今回紹介する募金活動はそんな一般人の行動習慣に着目した施策で、飛行機のセキュリティゲートにある金属物を置くトレイに、アメリカ赤十字への寄付を促すデザインを採用しました。トレイには“Your change is welcome here. Donate it.と記されています。

トレイは赤色と白色の部分で2分割されており、メッセージが書かれた赤色の部分に小銭をおいてもらい、そのまま寄附してもらうことを促しています。
人に行動を起こさせるには、タイミングが非常に大きな役割を果たします。寄付に対するモチベーションの低い人、寄付をしようとする気持ちをあまり持っていない人にさえも、すんなり寄附させてしまう仕掛け作りが見事だと感じるケースです。

3.街頭の募金活動に“ゲーミフィケーション・メソッド”を導入


[国名:ペルー/団体名:A Roof For My Country:]

ペルーで活動する貧困撲滅団体A Roof For My Countryのユニークな募金活動。
同団体は街頭でスタッフがチラシを配ったり、募金箱を持って寄付を募るようなあまり効果の見込めない一般的な募金活動の代わりに、独自に制作した「市民の心の構成要素を読みとる測定器」を街中に設置することで、募金活動に対する市民のモチベーションを喚起して、効率的な寄付金集めに成功しました。

通りがかりの市民が「心を診断してくれる」というふれこみを見て、この測定器にコインを投入すると付属のディスプレイに診断者の性別や年齢を選択する画面が表示され、問いを回答した後に測定器の台の上に立ち、両端に出ているグリップを握ることで診断が開始されます。
診断結果はレシートのように診断器から吐き出され、診断を受けた人が『心を割いているコト』がパーセンテージとともに表示されます。例えば、「Facebookでいいね!をすること(6%)」や「彼氏を愛すること(9%)」など。あくまでも推測の項目と割合ですが、多くの人が何となくニヤリとしてしまうような項目が羅列されています。(実はこの時点で投入したコインが返却口から戻ってきています。)

そして診断結果の下部に記載されている“FREE SPACE”(=100%から前述の『心を割いているコトの合計パーセンテージ』を引いた数値)には“40%”など、一定以上の割合が記載されていて、最下部には結論として、「いろいろなコトを考えているあなたの心にも、“家がなくて困っている人のことを想い手助けする領域”がまだ十分に余っていますね。」、「彼らを支援して社会の役に立ちたい場合は、(先程戻ってきた)コインをもう一度測定器に投入して下さい。」と表記されていました。

この診断結果を見た大勢の人が喜んで戻ってきたコインを再投入ました。
市民を楽しませながら、社会貢献を促す仕掛けが見事ですね。「コインをわざわざ返却して再度投入させるようなまどろっこしいことはせずに、始めに投入されたコインをそのまま募金にすればいい」と思われる方もいるかもしれませんが、私は市民に「社会貢献の意識を喚起して、自らの意思で募金を促す」というスキームが美しいと感じました。

4.ホームレス支援団体 “QRコードを用いた寄付金集め”


[国名:イギリス/団体名:Simon on the Streets]

イギリスで活動する路上生活者の支援団体Simon on the Streetsによる寄付を募るためのプロモーション。
同団体は人通りの多い街中の様々な地点に、ホームレスの存在を連想させる、薄汚れた毛布やビニール袋、ペットボトルなどのアイテムとともにQRコードを明記したダンボールを設置しました。これらのアイテムが置かれた様子はあたかも“ホームレスが野宿しているように見える”ようになっています

この仕掛けを街ゆく市民が見て、ダンボールに描かれたQRコードを携帯電話でスキャンすることで、寄付仲介サイト「JustGiving」の同団体専用ページにアクセスされ、そのまま『ホームレス支援』の活動に寄付ができるという仕様になっていました。市民がこのインスタレーションを街中で目にして、ホームレスに対して「少しでも援助したい、何とかしてあげたい」という問題意識をもったその瞬間に、携帯から寄付ができるというスキームが特長です。

人の気持ちが高ぶっている瞬間、問題意識をもった瞬間を上手く作り出し、捉えること。そして、まさにその時、その場所で、生活者に簡単に行動まで促す手法を提示することの2点が、移り気な市民に望む行動を取らせるための一つの解なのではないかと考えさせてくれるケースです。

ちなみに同団体がこのような募金活動を考案した背景として、クリスマスの時期にホームレスに直接お金を施そうとする市民がイギリスでは大勢いるそうですが、同時にホームレスに直接お金を手渡すことによりドラッグやお酒関連のトラブルの可能性を助長するという危惧を持つ人も少なからず存在したため、そういった不安感を払拭して。より効果的に寄付金を募る方法の一つになればと考えて実施に至ったようです。

5.国境なき記者団 オリジナルの切手と消印スタンプで寄付を募る


[国名:オーストリア/団体名:国境なき記者団]

“報道の自由”をうたって世界中で活動している国境なき記者団による、ダイレクトメールを活用した募金活動。
毎年世界では、無実の罪により投獄・拘束されるジャーナリストが数多く存在していますが、このような問題に対する市民の理解を啓発するとともに、拘束されているジャーナリストを解放に導くための活動のための寄付を募るプロモーションを世界人権デーに合わせて企画。

同団体はまずジャーナリストが描かれた切手を新しく発行し、一般市民に送付する寄付を募るためのダイレクトメールに使用。この手紙は郵便局にて、“牢屋の鉄格子にみえるデザイン”の消印スタンプが切手に押されるようになっていました
これによりダイレクトメールを受け取った市民には、切手の部分で「ジャーナリストがあたかも牢屋に投獄されている」というように見えるという仕掛けです。

この施策の結果、ドイツ、オーストリア、スイスの多数のメディアに取り上げられ、市民から多くの寄付が集まったそうです。

6.ブラジルの慈善団体、市民の善行を促す「はんぶんこ食品」


[国名:イスラエル/団体名:OCD Foundation]

低所得者層を支援する慈善活動団体Casa do Zezinhoの募金プロジェクト『Half for Happiness』。
このプロジェクトの背景には、同団体が支援する低所得者層は慢性的な栄養不足に苦しんでいるという状況が存在します。そのような状況下において考案された今回の施策は、スーパーマーケットの協力を得て、スーパーマーケットにて販売する生鮮食品を“通常の半分の量”にパッケージして販売するというものでした。

「半分の量」にして空いたパッケージのスペースには、「How about sharing with those in need?」(この食品の半分部分を本当に必要としている人[栄養不足に陥っている低所得者層]にお裾分けしませんか)という一文を刻みました。

これらの『はんぶんこ食品』は通常のサイズの食品と同じ料金となっており、お客さんがこちらを購入すると、その内の半分の代金がCasa doZezinhoに寄付されて、栄養不足の低所得者層を支援する活動に回されるという仕掛けです。
プロモーションの結果、期間中1日あたり100個ほどの『はんぶんこ食品』が販売されるとともに、大勢の市民に問題意識を植え付けることに成功しました。

日ごろ積極的にこのような慈善活動を検討したり、参加している人だけではなく、あまりそういったことに問題意識を持っていない人に対しても、「スーパーマーケットで食品を探す」という“日常のふとした瞬間”に善行を促すというアイディアが素晴らしいです。
「どうせ1個まるまる購入しても食べきれない(or腐らせちゃう)」などと考える買物客に、「だったらイイコトにもなる『はんぶんこ食品』を買おうかしら」と思わせる仕組みが秀逸です。「市民の善行を期待する」には、プロデュース側がいい意味で『ついで感』を演出することが重要だと感じます。

7.“回転寿司のお皿”で震災日本への寄付を募る


[国名:オーストラリア/団体名:Japan Earthquake Appeal]

こちらは2011年のCannes Lionsでアウトドア部門の銀賞を獲得したプロモーションです。
2011年3月に起こった東日本大震災に際して、オーストラリア国民から日本赤十字社への寄付金を募ることが狙いの施策。ただし、ありきたりな手法で寄付を促すのではなく、市民が楽しく気軽に寄付ができるアイディアを考案することにより、寄付する層の裾野を広げることが求められました。

寄付の対象となる『日本』を直接連想できる場所やモノの代表として日本発祥の回転寿し店を活用することを企画。コンセプトは、回転寿し店のお皿に“ドネート・プレート(寄付用のお皿)”を混ぜるというもの。
お客さんにはお皿が回転するレールの上からお寿司だけでなく、この“ドネート・プレート”を手にとってもらい、レジにて食事した分の料金とまとめて、自分が手に取った“ドネート・プレート”分の料金を支払うことで、日本復興に向けた寄付ができるという仕掛け。通常の回転ずしと同じようにお皿のカラーによってそれぞれ寄付金額が定められていました。
この試みの結果、わずかな期間で$15,000以上の寄付金が集まったそうです。このアイディアは非常に評価が高かったこともあり、オーストラリア赤十字社の承認を得た上で、国外でも展開できるよにしているそうです。

日常生活の中で気軽に寄付を促すアイディア、大なり小なり抱えている善意を行動(寄付)にうつさせるトリガー、として秀逸な施策だと思いました。
関心のそれほど高くない人に、関心を持ってもらってから行動を促すというアプローチではなく、関心のそれほど高くない人にも、気軽に、気楽にアクションに移れるような『きっかけ・契機』を与えるアプローチですね。

8.地雷の惨状を“ケチャップ”で訴える


[国名:ニュージーランド/団体名:Campaign Against Landmines]

ニュージーランドを中心に活動する反地雷団体Campaign Against Landminesによる地雷被害者への寄付金を募るノベルティグッズ。
パッケージに“子供の脚”が描かれたケチャップパックで、切り取り線から開封することで、地雷の惨状を直観的に想起させる演出が施されています。そしてパッケージの裏面には「今もなお89もの国々で歩行中に地雷の被害にあっている人々がいます。寄付をお願いします」というメッセージが記載されていました。

9.ユニセフ、「そのスペルミス、寄付しませんか?」


[国名:USA/団体名:Unicef]

ユニセフとGoogle Chromeが連携した“教育機会に恵まれない子供たちのための識字率向上キャンペーン”『Donate A Word』。
このキャンペーンは、Google検索やGoogle Chromeのユーザーがテキスト入力時にスペルミス(ミスタイプ)をした際、その文字を右クリックすると、「正しいワード候補(スペル)」と並んで、“Donate a Word”(この文字を寄付しません?)というメッセージが表示されるという仕掛けを施しました。

そしてこちらの文字をユーザーがクリックすると『Donate A Word』のキャンペーンサイトに遷移し、そのサイト上でDonateボタンをクリックすると、1文字あたり10セント(例えば、「widow」というスペルミスの文字だとアルファべット5文字なので50セント)が寄付され、そのスペルが正しい方の文字(window)が、サイトに大きく描かれた「Education」の文字の一部になっていくという仕組み。

この“Donate a Word”キャンペーンは、スペルミスをしてもブラウザや各種ソフトに指摘してもらえる、まさにそんなタイミングに、“「教育機会」に恵まれない世界9300万人の子供たち”について考えてみませんか?、というコンセプトのもと設計されています。
参加している人の姿(及び、スペルミスしたワード)がキャンペーンサイト上でリアルタイムで見られるという仕掛けも施されていました。

10.数々の広告賞を総なめにしたアルツハイマー病支援団体による秀逸な啓発広告


[国名:カナダ/団体名:Société Alzheimer Canada]

カナダで活動するアルツハイマー病患者の支援団体による、市民への啓発と寄付金を集めるために仕掛けたWeb広告。
ご存知の通りアルツハイマー病患者は、病気の進行とともに記憶が怪しくなり、少しずつ記憶自体が消えていくものですが、病気発症の初期段階においては、特に「短期記憶(“さっき食べたものが忘れる”などの少し前に体験した記憶)」が思い出せなくなる、という症状があらわれます。

当施策は、そんなアルツハイマー病患者特有の辛い“症状”をWeb上で疑似体験してもらうという企画。
カナダの大手ポータルサイトにバナー広告を出稿しますがこのサイトをユーザーが、色んな情報を得ようと下部にスクロールしていき、、、、、「やっぱりもう一度上のコンテンツを見よう」と思って、ユーザーが上部にスクロールしていくと、何と右サイドにあったバナー広告以外全てのコンテンツがまっさらになっているという仕掛けが施されています。

まさに『ほんの少し前に見た(体験した)情報が突然消えてしまう』という、アルツハイマー病患者の初期症状をWebサイトをスクロールするだけで、疑似体験できてしまうという企画。
この仕掛けの結果、広告のクリック率は通常のバナー広告に比べて400%も増加しました。こちらの施策は、数々の広告コンテストでも表彰されたそうです。

ポータルサイトを閲覧する人の何割かが、訪問時にとりあえず“上から下までどんな情報があるかをスクロールしてみる”という行動をとることを前提にして考案された施策のようですね。体験した人にはメッセージがズバっと伝わる、とても秀逸なインタラクティブ広告でした。